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七試艦戦の失敗から九試単戦へ。堀越二郎の挑戦その1


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映画風「七試艦戦」

 「風立ちぬ」の主人公である堀越二郎氏の手がけた飛行機たちを調べましたので連続で投稿していきたいと思います。

 なるべく飛行機マニアでない方にも分かりやすいように心がけます。というのも、先日「風立ちぬ」に家族でいった知人(ゼロ戦は聞いたことがあるなぁ程度)から「この堀越二郎って、事実ではどんな人?何を作って、なんで映画になったの?」と言われたばかりでしたので(笑)。

ライトフライヤー.jpg  1903年にライト兄弟が有人動力飛行に成功して14年。 たどたどしく飛んでいた飛行機たちは、第一次世界大戦という戦いの最中に急激にその性能を向上させ、兵器として強力なものへと変貌していきました。

 その時代の日本も、外国に頼るばかりでは富国強兵はおぼつかないことからも、今まで輸入やライセンス生産だけの国内航空機産業を、国産自立化に向けて発展させようという決断を下します。1932年(昭和7年)のことでした。

 この年、海軍は、海軍機メーカー4社(三菱、中島、川西、愛知)「航空技術自立計画」に沿った初の計画「7試計画」(昭和7年だから七試計画)を発表します。
 対象となった機種は、「艦上戦闘機」「艦上攻撃機」「双発艦上攻撃機」「三座水上偵察機」「大型陸上攻撃機」の5機種で、艦上戦闘機は三菱、中島の2社で競争試作をするよう命令します。

 海軍の要求は、時速370km/h以上、高度3000mまで4分以内という 当時の時代では要求の厳しい内容でした。

 ここのところ、海軍主力機の採用に連敗中で経営の苦しかった三菱は起死回生の一手を打ちます。設計主務補佐の経験すらない若き堀越二郎を、この七試艦戦の設計主務者に大抜擢します。堀越二郎、入社5年目、若干28歳でした。

 海軍の要求に応えるためには、現状の複葉機のスタイルではなく、確実にこれからの世界の流れになる「低翼単葉」、そして「全金属製」の航空機でいくことを堀越二郎は決意します。
 ライバルの中島飛行機が、布張りの高翼単葉機の九一式戦闘機の強化型で出してきたことからも堀越技師の意気込みがうかがえますね。

※九一式戦闘機〜日本陸軍最初の単葉戦闘機であり、陸軍初の日本オリジナルの設計による戦闘機。ただし、設計はフランスから招聘したアンドレ・マリー技師で日本人による設計ではなかった。

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【九一式戦闘機(左)と堀越二郎の三菱七試艦戦(右)
デザインの新旧の差は明らか

 設計は、全金属製のセミモノコック構造。狭い空母に着艦するための安定性を考えて面積の大きい楕円翼を企画します。本当は脚も引き込み脚にしたかったのですが、技術的な困難さがあって断念。

 さらには、翼の主桁が当時の工作技術では理想にはならず、薄いジュラルミンを何枚も重ねて鋲で留めることでしかできないため、翼厚比は最大20%と分厚い翼になってしまいました。予定のエンジンも液冷600hpが実用化困難なために最終的に大直径の空冷エンジンに変更されるなど困難の連続でした。

 それでも 設計着手からわずか11ヶ月という驚異的なスピードで、原型1号機は、昭和8年2月に完成します。

 しかし完成された機体は堀越技師の理想とは大きくかけ離れたものになってしまいました。
視界向上を図るために著しくネコ背になり、分厚い主翼に、空気抵抗の大きい固定脚など、堀越技師自らが「鈍重なアヒル」と自嘲するほどでした。

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Cap 390.jpg

  性能も最低限要求の335km/hに届かず、上昇性能も海軍の要求に届きませんでした。
 加え操縦性、安定性の悪さを指摘されてしまいます。数々の改良を施しながらも開発は進みますが、7月の急降下テストで垂直安定板の強度不足により撃落。秋に納入した2号機も海軍側のテストの最中に激落してしまうという最悪の結果に終わってしまいます。

Cap 396.jpg

 後ろから見ても翼の厚さと固定脚の太さが分かりますね。

 一方、ライバルの中島の七試艦戦も要求を満たすことができず、こうして航空技術自立計画の第一段階は不成功に終わります。

 映画では失意にあった堀越二郎を頭を冷やして来いということで休暇をとらせ、そこで菜穂子と出会います。

 この大いなるチャレンジによる失敗は、堀越二郎始め、三菱設計スタッフたちも大いに教訓を得ることができました。

 冷静に分析し、数々の反省点も出て来ました。まずは発動機選定の不適切。現在の工作機械などによる機体設計、工作技術の未熟による空気抵抗の増大。重量軽減策の不徹底など。新しいことにチャレンジしたことで、改善の可能性の芽も開けてきました。工作技術の向上や沈頭鋲(頭が出ない平たいリベット)  の開発も行います。

 そして活かされることになった技術は九試単戦へと受け継がれていくことになります。 →続く。

【模型と資料について】

 七試艦上戦闘機の模型は1/144スケールでA&Wモデルス さんから発売されています。映画の人気で現在は在庫切れのようです。「紙でコロコロ」さんの方でもレジンキットが出ていますが、こちらも長いこと在庫切れです。そもそも超マイナーな機体ですから・・・・。

七試艦上戦闘機

七試艦戦.jpg

→【A&Wモデルス 1/144 七試艦上戦闘機 レジンキット】AW144007を扱っているお店はこちら

 

九六式艦戦の前の機体である七試艦戦は三面図とともに2ページほど記事があります。

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コメント 2

mimimomo

おはようございます^^
0戦、わたくしも分からないですね~
というより飛行機は乗ったり見たりが好き^^
メカニックのことなどは皆目・・・とんと分かりません(__;
by mimimomo (2013-08-06 06:42) 

onemore

mimimomo さま
こんにちは、私も最初は、飛行機そのものよりも空を飛ぶことに憧れていました。でもメカ好きにもなってしまい結局、男の子でした(笑)
by onemore (2013-08-14 05:51) 

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