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零戦の後継機になれなかった飛行機、雷電。堀越二郎の挑戦その5

 
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「風立ちぬ」の主人公である堀越二郎氏の手がけた飛行機たちを調べましたので連続で投稿していきたいと思います。今回はその5。堀越二郎の挑戦はまだ続きます。

 今回は超有名な「零戦」と幻の戦闘機「烈風」の間に開発された雷電」(らいでん)という戦闘機を。

 スマートで優雅な日本機の中でも異色の存在であるシルエット、それが「雷電」です。ズングリムックリしたその機体は、大馬力のエンジンを搭載したことによる堀越二郎の苦心の策でした。

  この飛行機のコンセプトは今までの空母の上で使用する艦上戦闘機とは違うもので、局地戦闘機と言われるものになります。

raiden.jpg 後の零戦となる十二試艦上戦闘機の試作一号機を海軍に渡した直後の直後の昭和14年(1939年)9月に三菱単独指名で「十四試局地戦闘機」を提示してきます。

 これは中国空軍の爆撃機に少なからず手を焼いていた海軍が、「すぐに離陸して爆撃機を攻撃できる戦闘機を作ってくれっ!」という要求でした。爆撃機を相手にしますので、強力な火力、爆撃機に追いつく早い上昇力と速度の3つが最も重要でした。航続距離は重視しません。

 そこで堀越二郎らは考えます。小型で馬力のあるエンジンなど当時の日本にはありません(あったら即採用します)。 そこで爆撃機用の大馬力エンジンを戦闘機に搭載しちゃおうということになります。その時には、一式陸上攻撃機等の大型機用に開発された、日本最大馬力を発揮する「火星」がありました。1530馬力の大パワーです。

 問題はそんな大きいエンジンを戦闘機にどうやって積むかです。零戦のように一番前に積んだら頭でっかちになりますので、胴体の少し後ろに搭載、その前に強制冷却ファンを追加してその間にプロペラとエンジンをつなぐ延長軸を用意します。これで空気抵抗も抑えられると技術陣は期待します。

Cap 427.jpg なんか、かわいいいというか愛嬌があります。

  当時最新の航空力学に基づいた機体に大馬力エンジンを装備し、更に大火力を併せ持つ雷電ですから、海軍も大きな期待を寄せちゃいます。1943年頃には零戦に替わる海軍の主力戦闘機として大増産計画が立てられるほどの熱の入れようでした。この後継機計画では雷電の増産に併せて零戦は減産し、昭和19年(1944年)には三菱は零戦の生産を終了して雷電のみを生産する予定でした。

 しかし、大問題がここで発生。エンジンの最大出力の発揮時に激しい振動が発生してしまいます。様々な分析からこの振動の原因は減速機構の振動とプロペラ強度不足による振動の共振であることが明らかとなりましたが、設計を根本から見なおさなければならなくなります。

796px-J2M3_Raiden_Kasei_Engine_food.JPG 結局一年あまり開発に手間取り、昭和18年の9月にようやく生産が始まりますが、実用化が完全に遅れたことから後継機計画は白紙に戻されてしまいます。そしてこの雷電は、ほぼ同時期に実戦投入された紫電改と比較されるようになってしまいます。

 紫電改という戦闘機は元々、強風という水上戦闘機として開発されましたが、これを地上用戦闘機として再設計された機体です。これが意外と評判よく、零戦の有名な撃墜王坂井三郎氏をもってして「前線における零戦の事実上の後継機である」と認めています。海軍も零戦後継の次期主力制空戦闘機として配備することを急ぎ決定。1944年3月には三菱に雷電と烈風の生産中止、紫電改の生産を指示してきました。三菱技術陣にしてはとても残念な結果となりました。

 雷電は最終的には約620機あまりの生産数でしたが、この紫電・紫電改は合計で1400機以上の生産数となりました。戦局の悪化によって生産機数は伸びませんでしたが、計画では完全に零戦の後継機扱いであったことが伺えます。

 しかし戦後、アメリカ軍がこの雷電をテストしたところ、日本のパイロットの評判とはうってかわって好評でした。広い胴体もアメリカ人には調度良いサイズだったようで、日本では問題視された振動や着陸性能の悪さも、アメリカの基準ではさして問題とされなかったようです。うーん、ここらへんが民族性の違いなのでしょうか。あちらさんは大馬力のエンジンを載せてガンガン飛ばしますからね。

 それにしても、接収された日本機はアメリカ軍のテストの際には、軒並みカタログデータを上回る数値を出しています。これはアメリカ軍の持っている燃料が良い燃料であることが原因ですが、飛行機としては実戦で本来の性能を発揮できなかったことですから、なんとも悔しいですね。

  さて、次回はいよいよ堀越二郎、最後の戦闘機「烈風」の話を。

 

紫電改の基になった「強風」に関してはこちらの記事も御覧ください。
→下駄を脱いで優秀な戦闘機として生まれ変わった「強風」

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コメント 2

楽しく生きよう

日本の対戦時の戦闘機で一番好きな飛行機です。
零戦なんか目じゃないと言ったら怒られますか。
たられ場ですがこの飛行機に佳い燃料積んで飛ばしてやれたらなと思います。

by 楽しく生きよう (2013-08-11 08:55) 

onemore

楽しく生きようさま
ご訪問、ありがとうございます。雷電、インパクトのある機体ですよね。私も実は大好きなのです。
by onemore (2013-08-11 09:13) 

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