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堀越二郎、最後の戦闘機、烈風。堀越二郎の挑戦その6

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「風立ちぬ」の主人公である堀越二郎氏の手がけた飛行機たちを調べましたので連続で投稿していきたいと思います。今回はその6。最終回になります。最後に登場するのは、幻の戦闘機「烈風」(れっぷう)。

 零戦の正当な後継機として試作した艦上戦闘機でしたが、情勢の悪化により、艦上戦闘機から局地戦闘機へと任務を変えた戦闘機となりました。
 戦争は国家の存亡がかかるものなので総力戦になり、技術の向上も著しいものになります。当時は主力戦闘機のサイクルが2,3年で変わる激しいものでした。現在の戦闘機が20年、30年と使われていることを考えると凄いですね。

 堀越二郎もこの時には相次ぐ開発や改修でついに過労で倒れます。そのため雷電の開発なども一時は他の人に設計主任を任せることになります。

Mitsubishi_A7M2-1.jpg 戦争に突入して、戦局のターニングポイントとなるミッドウエー海戦の2ヶ月前、昭和17年(1942年)4月、海軍は早くも零戦の後継艦上戦闘機として「十七試艦上戦闘機」を三菱に内示します。
 烈風の性能要求は堀越技師や三菱のスタッフの予想したものをはるかに超えておりました。
最高速度は零戦21型を100km/h以上上回る639km/h。空戦性能を重視するため翼面荷重130k㎡。加え零戦21型以上の航続距離と重武装、防弾装備もつけろとの要求です。

 エンジンもこの頃には1,800馬力級や2,000馬力を超えるものも運用の目処も出てきていましたので(零戦の登場当時と比べると約2倍)、三菱製2200馬力級のハ43などを候補に考えます。
 しかし、海軍はエンジンの種類を増やして、生産効率を落としたくありませんので、出力の劣る中島製「誉」ハ45エンジンを強要してきます。
 このハ45エンジンは、紫電、紫電改、流星、彩雲、疾風などに使われており、実際に運用では、品質の低下で戦地での稼働率は低いものでした。

 しかし、発注側の意向には逆らえず、昭和19年4月に烈風の試作1号機「試製烈風」が完成しますが、全長11m、全幅14mという大きな機体かつ、全備重量が零戦より2,000kgも重い4,400kgとなりましたので当然このエンジンでは明らかに馬力不足です。結果、最高時速は550km/h程度、高度6000mまで10分近くもかかり、零戦52型にすら及ばないという散々な結果となります。
 
 戦況の悪化もあったため海軍は当時の期待を背負っていた「紫電改」の生産に切り替え、烈風の開発に見切りをつけます。

Cap 432.jpg しかし自分の設計に自信を持っていた堀越二郎は諦めません。独自で2,200馬力のハ43に換装した烈風を作り続け、ハ43で半年後にテスト飛行を行います。
 その結果、最高速度は628km/h。高度6000mまでの上昇時間6分7秒と、海軍側の要求をほぼ満たす機体となりました。
 結果を受けた海軍側は態度を一変、昭和20年6月に「烈風11型」として制式採用されますが、時すでに遅し。この2ヶ月後に日本は敗戦。烈風はわずか試作機8機のみ完成という、実戦から遠い状態で終戦を迎えました。

 七試艦戦から13年。堀越二郎の挑戦はここにて終わります。そして航空機の開発を禁じられた戦後の苦しい時代を歩むことになります。堀越二郎が、再び飛行機をデザインするのは、12年後のことでした。

 多くの若者が、堀越二郎の設計した飛行機に乗り、そして帰ってきませんでした。最後の戦闘機の烈風の主翼が逆ガル型のウイングというのも、九試単戦のデザインと重なるようで感慨深いです。映画のラストシーンが思い出されますね。

 実在の堀越二郎は、戦後、解体された三菱重工業である中日本重工業(のちの新三菱重工業)に勤務します。退社した後は、教育・研究機関で教鞭をふるいます。東大の宇宙航空研究所にて講師を務めたこともありました。

 最後にYS-11という平和な時代の航空機に携わったことは、本人にとってもよかったことでありましょう。

1982年1月11日死去。享年78歳でした。

「堀越二郎の挑戦」全6回。お付き合いくださいましてありがとうございました。

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 さて、一息ついて次回からは、お盆に合わせて管理人の好きな怪談話を載せたいと思います。実際にあった「空にまつわる怪談、奇譚」を。と、その前に明日12日は忘れることのできない航空機事故の日です。

 

堀越二郎の飛行機

・七試艦戦 2機製作
・九試単戦 
6機製作
・九六式艦戦(A5M) 
各型計1,094機
・零式艦上戦闘機(A6M) 
各型計10,430機(日本機最多)
・雷電(J2M) 
621機
・烈風(A7M) 
8機製作

 <関連記事>

→堀越二郎の最後の飛行機。YS-11

→九六式艦戦から九試単戦を製作する本が発売されます。

→九六式艦戦と九試単戦の模型を調べてみた。

 

【烈風の模型と資料】

ファインモールドから1/72スケールと1/48スケールで ディテールアップパーツとともに出ています。幻の戦闘機というだけあって人気ですよね。

 

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コメント 2

楽しく生きよう

烈風は量産されていたら零戦をしのぐ佳い飛行機として賞賛されていたでしょうね。
洗練された機体の流れるような線が好きです。
光人社の雷電、烈風、百式司偵を取り扱った本で知りファンになりました。

by 楽しく生きよう (2013-08-12 07:36) 

onemore

楽しく生きようさま
こんにちは、雑誌「丸」編集部の本ですよね!
大きな機体になりましたが、軽くついた逆ガルの翼が綺麗な飛行機ですね。
by onemore (2013-08-12 08:36) 

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