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福島原発の避難区域に行ってきた。東日本地震その2

 
 今日でちょうど震災から3年です。早いものですが、復興は未だ進んでいないように思います。
さて、前回からの続きになりますが、福島第二原発内にあるスクリーニング場にて、防染用の備品と特別警戒区域への通行証をもらっていよいよおばあちゃんの自宅へ向かいます。

 途中での警備用ゲート。現在では警備員や作業員ではなく警察が行っていました。

 さて、おばあちゃんの自宅ですが、震災の直後のままの状態であって、荷物を取りにきたのは、これで3回目だとのこと。
 前に来た時よりもバリケードが厳重になっていて、鍵もかかっています。おばあちゃんが一人で来ても開けられないであろう物々しさ。
 家の周囲は雑草が生い茂っていて、人がいない住宅街であることが一目瞭然です。
 家の中は震災のままでした。散乱した家具、ヒビ割れた壁などがそのままでした。
 リビングの新聞は「2011年3月11日」の当時のままで、コント55号の坂上二郎さんの死去のニュースが載っていました。そうでした。亡くなられたんですね。翌日の震災を思うと十分な追悼ができなかったように思います。
 台所には、食べ残したものがそのままでしたが、3年も経つと腐敗臭もしません。放射能や空き巣が入らないように厳重に戸締まりをしてあったのでしょうが、カビが少々生えている程度でした。
  散乱したガラスの食器棚や家具に気をつけながら、必要なものを運びいれました。

 あっという間に時間が過ぎていきます。お昼は避難区域を出たら食べましょうということで、おばあちゃんがより分けた家財道具をひたすら車に詰め込みます。
 首からぶら下げてくださいと渡されていた放射能測定器など、邪魔なのでポケットにしまいました。

 3時が近づくにつれ、家の前を通るパトロール車が増えてきたように思います。人がいるというだけでも安心するものです。

 パンパンに家財道具を詰め込んで出発です。おばあちゃんも感傷に浸る間もないわと嘆いていましたが。

 さて、帰りですが、警戒区域から出る時も必ず「毛萱・波倉 スクリーニング場」に戻ります。今度は入る時の倍以上の人数に一斉に取り囲まれました。

 放射能チェックは特に靴底を調べられます。ここに放射能が一番付着するからなのでしょうか。車に運び入れた荷物など念入りに測定されていました。

 使用した備品はすべて返却します。隣では着替える場所もあるのですが、おばあちゃんも私も全然使いませんでした。
 気がつきませんでしたが放射能測定器は外での作業がなかったにも関わらず「0.23」を示していました。

 帰りも東電の幹部らしき人物が頭を下げ続けています。おばあちゃんいわく「本物かどうか分からないよ。背広を着させて頭を下げ続けるバイトかもしれん」と言っていましたが、妙に納得です。東電への信頼感はゼロに等しいのでしょう。
 避難者の気持ちが少しでも和らげばそれでいいのでしょうが。

さて、今回色々と気がついたことを。

 

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●牛に注意の看板
 国道6号線を走っていると、「牛注意」の看板が目につきます。そう、牧場の牛が車両にぶつかる事故が多発しているそうなのです。野生化してしまっているのでしょうか。今回は一度も目にすることはありませんでしたが、夜中に出没するのかもしれません。

●鳥の気配がまったくない
 インターを降りてから違和感をずっと感じていたのですが、それは、動物の気配がまったくないことが原因かと気が付きました。
 そう、空や山に野鳥もカラスもいないのです。これが一番不気味というか、怖くもありました。野鳥はこの町に戻ってくるのでしょうか。

●雑草のたくましさ
 コンクリートを割って生えてくる雑草が身の丈ほどに成長しています。
 スーパーの駐車場のコンクリートから生えている雑草はたくましいのを感じるとともに、人が来ることがない、手入れが行き届かないためのものかと思うと恐いものを感じました。
 また、ホームセンターの外に置いてある園芸用の土からも芽が出ています。

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今はもっと朽ち果てた感じでした。GoogleMap(2013年8月撮影時)

●作業員・警備員・警察車両の多さ

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 行き交う車は半分が警察車両やパトロール車で、今までの人生で出会ったパトカーの数をこの日で超えたんじゃないかという位、目にしました。
 他県のパトカーも多いことから全国から応援に来ているのでしょうか。交差点や空き地にはずっと停車しているパトロール車も多いです。 


 避難区域を一歩抜けたコンビニは大盛況でした。ここで営業している人たちも凄いなと関心してしまいます。みんな作業員ばかりです。

避難している家には一軒一軒立ち入りができないように厳重に開閉式のバリケードが設置されています。


大きな地図で見る

 自分の町でよく見かけるコンビニや家電量販店やレストラン、ガソリンスタンドなどのお店。それらの店のガラスが割れて看板が落ち、ひび割れたコンクリートから生えてくる雑草などを見ているとなんともいえない気持ちになりました。

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自分の町のスーパーがこんなになってしまったら・・・
GoogleMap(2013年8月撮影時)


 人が住めなくなった町とはこんなにも恐いものなのかと思いました。原発は人災であれ天災であれ、一度発生すると取り返しのつかないリクスを負うことになります。
 すぐにゼロにすることは無理かもしれませんが、あまりにもリスクの高いエネルギーであるように思います。後世の子孫のためにも安心で安全なエネルギーを受け継いでもらいたいものです。

 震災の爪痕がまだそのままであるこの町も早く復興の日が訪れることを祈らざるおえません。 

 帰り道、おばあちゃんが教えてくれたのですが、近くにそれは見事な桜の名所があるそうです。「今年で四回目になるけど今年も満開になるといいな」と言っていました。

 おばあちゃんは福島に戻ることを諦めて、東京の息子さんの傍に住むことに決めました。
「自分たちは見てあげることはできなくなってしまったけど、せめて警備や作業員の人たちの目を楽しませてあげて欲しい」と。
 誰の目にも触れることはないかもしれない桜であっても、いつか戻ってくる人たちを待ち続けて咲いて欲しいと願わずにはいられません。

→【Google】福島県内のストリートビューを公開します

 駅周辺や国道6号線をたどると震災の影響や現在の状況がよく分かると思います。
 人や車が行き交い、賑やかな町に戻って欲しいです。

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コメント 4

なんだかなぁ〜!! 横 濱男

何て言って良いのか分かりません。。
心が痛みます。。

by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2014-03-11 19:35) 

ys_oota

きっと故郷に戻れる日が来ると信じてます。桜もその時まで咲き続けて待っていますよ!
by ys_oota (2014-03-12 01:16) 

ちょいのり

>背広を着させて頭を下げ続けるバイトかもしれん
やはりそれほどの不信感を皆さん抱いているということなんですね・・・
ボクは、廃墟を題材によく記事を書きますが、
ここは正直書けません。
日本に廃墟は数あれど、多くの方達の犠牲を向こうとしておいそれと書く自信は・・・無いです^^;
とはいえ、雑草や鳥、飼われていた家畜の野生化など知らなかったことをたくさんリアルに知らされたことにとても感謝しています。
おばあちゃんの最後の桜のエピソードは優しさと、そして切なさがこみ上げてきますよね。
by ちょいのり (2014-03-12 12:58) 

onemore

★なんだかなぁ〜!! 横 濱男 さま
こんばんわ、津波の被災地もそうでしたが、現地を見るのは考えさせられるものがあります。

★ys_ootaさま
こんばんは、おばあちゃんの話を聞いていると、
桜も自然も人間と共存しているんだなぁと思いました。
おばあちゃんを連れて来年も行きたいと思ってます。

★ちょいのり さま
私も廃墟が好きなのでちょいのりさまのブログを楽しみにしております。
廃墟はイメージがすごく膨らむのです。
古民家や古道具も好きなのですが、
中には「これは・・・(汗)」というのもあるので、
いずれ紹介したいと思います。

今回は個人的に貴重な体験をさせてもらいました。
あと、おばあちゃん、今回の同行ですっかり仲良くさせてもらいました(^^)。
by onemore (2014-03-12 18:06) 

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