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今年も来ました7月6日「零戦の日」

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今日は零戦の日なのです。今年は日曜日。特にイベントはなさそうです。

昨年の記事はこちら
→7月6日の今日は「零戦の日」。実機が見られる博物館情報も。

 昨年は、現在も零戦の実機が見ることができる博物館を紹介しました。飛行機できる零戦も日本に里帰りし、多くのファンを喜ばせてくれました。
 映画「風立ちぬ」、「永遠の0」で盛り上がった飛行機好きな管理人には楽しい一年でした。

 今回は零戦に関するウンチク話を。

◎沈頭鋲の工夫

 飛行機にとっての最大の敵ともいえる空気抵抗。突起物は速度低下、燃費に大きく影響します。
 零戦では世界に先駆けて
沈頭鋲を採用します。沈頭鋲とは、外側から頭を平らにした鋲を打ち込んで、内側から留める技術。これによって機体表面が滑らかになり、空気抵抗を軽減してくれるのです。手間がかかりますが、これが零戦の性能向上に大きく役立ちました。

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◎ねじり翼の工夫


 翼の先端で失速がおこると飛行機は不安定になります。この「翼端失速」は現代も技術開発をされている大きなテーマなのです。

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ボーイング737におけるウィングレット有無と翼端渦の比較

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ボーイング737-800の左翼ウィングレット



 米軍の戦闘機も特殊な整流板を装備したりしていましたが、零戦では、翼端失速を防ぐために、主翼の前縁を胴体から翼端にかけてねじり下げました。その角度わずか2.5度!この僅かな角度が、空気が翼から剥がれるのを阻止してくれます。加えるのではなく、現状の形状を工夫することで重量を抑えた苦労があるわけです。


超々ジュラルミンの開発

 1936(昭和11)年に住友金属が開発したアルミニウム合金で、1平方ミリメートルあたり60kgまでの張力に耐えることができる高強度金属です。現在でも改良され続け、航空機の機体に使用されているといいますから優れたものなのです。しかし、腐食に弱いというデメリットもあり、主翼の桁などの重要な箇所にしか使われておりませんが、零戦の軽量化・高強度には大いに貢献したのでした。
 アメリカが超々ジュラルミンに相当するものを実用化して、最初に使用した機体がB29とされてますから、この分野では、日本は世界よりも4~5年ほど進んでいたのですね。



◎”
アクタン・ゼロ”と呼ばれる零戦があった。

 第二次世界大戦中にアリューシャン列島のアクタン島に不時着した零戦21型のアメリカ軍における呼称なのですが、1942年7月にほとんど無傷のままアメリカ軍に回収され、大戦中アメリカ軍が鹵獲した初めての零戦となりました。”ゼロファイアー”として恐れられていた零戦は、徹底した分析を行い、零戦の長所も短所も調べつくし、零戦に対抗する戦術を研究することができました。
 アクタン・ゼロは「アメリカにとってもっとも価値ある鹵獲物」とされ、「おそらく太平洋戦争における最高の鹵獲物の一つ」と言われました。
 日本の元軍人・自衛官であり歴史家の奥宮正武といおう人は、アクタン・ゼロの鹵獲は「〔日本にとって〕ミッドウェー海戦の敗北に劣らないほど深刻」であり、「〔日本の〕最終的な降伏を早めることに多大な影響を及ぼした」とまで述べています。

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輸送されるアクタン・ゼロ。1942年7月。


アクタンの零戦をテストした C.T.Booth 少佐のレポートでは、

「零戦は、小ささ、軽さ、脆弱さが印象的でちょっと目にはありふれた機体であるが、 よく見ると細かいところまで目が行き届いた設計がなされており、無駄が無く非常に すっきりしている。
 主脚の幅は広く安定感があり、機体も長く安定性がいい。可動部はきわめてスムーズに動き、 すきまがないような設計がなされている。
機体の外板は非常に薄い。全体的にはありふれた工法であるが、主翼のおりたたみ機構はきわめてオリエンタルな謎解き箱のような巧妙な設計になっている。
  (中略)
 非常に短い滑走距離で離陸でき、着陸も容易であるがブレーキの効きは悪い。操縦桿の感覚もよく、低速でも失速しにくく、失速特性もゆるやかで回復も容易である。上昇力も良く、適当な速度ではロール速度が速い。これが有名な運動性の源泉だろう。 視界もすばらしいし、飛行安定性もよく、飛ぶことが楽しい飛行機である。
 しかしこれで戦争せよといわれたら二の足を踏みたくなる。 上昇力、運動性、後方視界の良さはセルフシーリングタンクや防弾版の欠如と引き替えである。戦争となったらその報いがくるだろう」と的確に分析しています。

「飛ぶことが楽しい飛行機である」とは零戦の軽快な操縦性を物語っていますね。


◎零戦によく似たイギリス機が存在した。


零戦より2年も前に1937年12月に初飛行されているのでこの飛行機のパクリではないかと言われたこともあるのですが、それがこれ、イギリスのグロスター F.5/34です。
 試作2機で不採用になりますが、
競作において本機を破って採用されたのがスピットファイアとハリケーンです。

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横からみるとソックリかな
日本機風に色を塗ってみました。
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 似ているといえば似てるのか?管理人的は尾部が気になります。さらには零戦がこの飛行機のコピー機と言われる所以はデータにもあります。

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こんなにそっくり

 デザインとこのほぼ同じともいえる性能、そして零戦の開発期間の短さをもって、堀越二郎氏は、このF.5/34を模倣して零戦を開発したとする人たちがいます。そこまで執拗に零戦を貶めようとしなくてもと思うのですが・・・?
  ここでは出てこない機動性や操縦性などは考慮されていませんし、外形だけで性能が決定するほど航空機は単純なものではありません。また先ほどの記事のように随所に堀越技師たちの工夫が散りばめられているのを見ると単純な模倣品であるはずがありません。

 

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このプラモ欲しい・・・。


 グロスターF.5/34は、後に零戦によってコテンパンに蹴散らされるハリケーンやスピットファイアとの競争試作に敗れた戦闘機ですから、その見た目を真似してハリケーンやスピットファイア以上の性能を発揮させ得たのなら、逆に凄いこととは思いますが(笑)。


 管理人の結論としては、零戦の開発は、パクリと言う悪意を含んだような開発過程ではなく、諸外国に学んで独自の技術を生成し、欧米に追いついた頃の設計で、グロスターF.5/34はまったく関係が無いと思います。
 でも、仮にこのF.5/34が採用になっていたら、零戦と戦うことになっていたでしょうから、日英の将兵たちは誤認で混乱したであろうことは想像に難くないですね(笑)

 私は零戦のフォルムは飛行機の中ではかなりというか、奇跡的に洗練されたフォルムだと思います。似ていると言われるF.5/34は胴体は1m近く長いですが、なんかちょっとの差で「惜しい」と思えてしまうのです。
 こう、手を抜いているというのか、洗練されていないフォルムというか。

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 条件として、1000馬力のエンジンを搭載し、材料はこれだけで、最高の性能を競うコンペがあれば、優勝は零戦であるのは間違いないと言われています。零戦の性能効率は1000馬力級のエンジンからはこれ以上は絞り出せないという極限の設計であったと思います。それが零戦の魅力でもあるのかもしれません。

 映画「風立ちぬ」監督の宮﨑駿が「永遠の0」の百田尚樹を批判したり、零戦最強神話と言われる位、肩入れする人と、必要以上に零戦は大したことないという説とよくありますが、それも日本を象徴させる工業製品であるからなのでしょう。

 搭載した飛行機 本日は「零戦の日」ということで、日本の技術力や戦争について色々と考えてみるのもいいかもしれませんね。

 

 



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コメント 3

ys_oota

大変勉強になりました。「飛ぶことが楽しくなる飛行機」って、いいですね。戦闘機じゃなかったら大人気になってたかも。
by ys_oota (2014-07-07 01:05) 

たくや

リベットの打ち方一つで性能が段違いになりますね~
当時としては本当に画期的ですよ。
by たくや (2014-07-07 11:25) 

ワンモア

☆ys_ootaさま
私もこのテストパイロットのコメントが好きなのです。
現代版でリメイクしても売れるのでは(笑)

☆たくやさま
多少の空気抵抗など巨大なパワーで打ち消しちゃえ的なアメリカの考え方よりも、非力なエンジンで至るところに手をいれる涙ぐましい努力が日本人らしくて好きなのです。
by ワンモア (2014-07-10 20:15) 

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