7月12日のTBS報道特集で「国産ステルス機開発」が報道されていました。
TVカメラが入るのが始めての場所や機体の映像も流れていて、見応えのある特集だったと思います。
内容をかいつまんでまとめてみましたのでご紹介。
TBS報道特集で独占取材「国産ステルス機開発」
2014年5月8日三菱重工小牧南飛行場。
機密扱いで進められてきた国家プロジェクトが、20年に及ぶ開発期間を経てベールを脱ぎました。
国産初のステルス機ですが、世界ではアメリカを始めとしてロシア、中国が相次いで開発、実用化を急いでいます。日本では未だ、第四世代機(F-15、F-16、Mig-29、Mig-31など)と呼ばれる戦闘機が主力で、時代はF-22、F-35を始めとした第5世代戦闘機へと入り始めました。日本も他国と同レベルの技術を維持するには国産による技術開発が必須とされています。
このステルス機は、アメリカが最初に開発、実用化に成功し、F-117、B-2などが実戦でも使われています。
戦後、日本の航空機の開発はアメリカに禁じられていました。10年後、ようやく民間旅客機のYS-11の開発が進めることができた日本でしたが、航空機分野の開発は世界に大きく引き離されてしまいます。
日本でステルス機の開発がスタートしたのは実は24年も前のこと。
きっかけは、アメリカとの軋轢であったと、このプロジェクトに関わった元防衛庁の幹部は証言しています。
1980年代に始まったFS-X国産戦闘機F2開発計画が決まった直後、対日貿易赤字を抱えていたアメリカが圧力をかけ戦闘機の輸入を迫ってきました。その圧力は強大なもので、結局、折れる形で、アメリカのF-16を改造した戦闘機を作るという日米共同開発となりました。
その際にアメリカは戦闘機の主要部分である操縦系統のソースコード=ソフト開発情報を提示してこなかったといいます。
新規開発であれば、ゼロから作る技術的な蓄積ができたし、日の丸戦闘機としてのアイデンティティも保てたのにと、元防衛省幹部は語ります。
ステルス機開発は一度絶たれた技術の蓄積を取り戻したいという、開発者たちのリベンジでもあったとこの番組ではナレーションをしています。
日本が目指す技術とは?〜ステルス性と高運動性の両立
では、今回の開発には、一体どんな新技術が盛り込まれているのでしょうか?
防衛省技術本部の三輪室長は語ります。
それは、ステルス性と高運動性、これを両立させた機体。これを大きな技術課題として取り組んでいるとのこと。ステルスとは、相手の発するレーダー波を偏屈させて相手に返さないことが重要です。
そういう意味では、正面かた見て平たい機体は優位です。
しかしその形状だと安定性が悪く、戦闘機のような高機動が厳しいという矛盾を抱えることになります。
この難易度の高い挑戦が2000年から始まりました。
そして3年のステルス研究の結果、測定のため、1/1の実物大の機体を作ります。
日本がステルス機の開発を目指すには理由があります。
それは2007年、沖縄で日米合同訓練があり、日本の自衛隊機とアメリカのステルス機との模擬戦が行われました。
その結果、自衛隊機は短時間でお手上げ状態となりました(おそらくF-15JとF-22)。参加したパイロットは「姿が見えないボクサーに連打を浴びているようなもの」と証言しています。
相手に気づかれないで近づくことができ仕留められる。それは「持っているだけで大きな抑止力になる」と防衛省はいいます。ステルス機の開発を目指す理由はそこにあるわけです。
さて、完成した1/1の機体ですが、防衛省はこの模型をフランス国防省に持ち込みステルス性の計測を実施してきました。測定にあたり、電波を吸収する塗装をせず、形状だけで挑みましたが、その結果は、他国の電波吸収の塗装をした機体に匹敵するステルス性を達成しました。
国産初の戦闘機F-1以降(とはいえ、F-1はT−2高等練習機からの戦闘機化)、長らく途絶えていた独自開発ですが、ステルス技術はアメリカからは絶対出てこない秘匿技術ですので、ゼロからの開発・製造することになります。
F-2からFX-Xに携わってきた三菱重工の浜田技師長は語ります。
「実際に作ってみないと分からないことが沢山出てきます。そういう意味でもゼロから開発することはとても重要なことです。」うーん、含蓄ある言葉です。多くの実力のある技術者を育成するという意味でも大変重要なことなのですね。
高運動飛行技術の開発
航空機の高運動性といえば、零式艦上戦闘機などでかつては日本の得意分野でもありました。今回の技術ではコンピュータによる解析技術も駆使した高機動、高運動性を開発してきました。
2006年には、1/5のステルス実証機ラジコン機で検証し、設計通りの飛行が可能であることを証明しました。
通常、飛行方向に対し、旋回しようと機首を上げたりすると、ある時点で失速してしまいますが、この急転回
を可能とさせるのが、エンジンの排気口に取り付けた「推力偏向パドル」と呼ばれるものです。
この噴射の向きを変えることで鳥のような飛行が可能とされています。番組では、実際のテストパイロットがフライトシュミレーターで検証をしていました。
今日、国籍不明機へのスクランブル発進は増加の一途をたどっています。この高運動が行える機構は、追尾・回避にも威力を発揮することができ、また、高機動運動は、緊急回避にも向いているため、専守防衛の日本にとっては不可欠の技術であるといえましょう。
このエンジンは、「XF5」と呼ばれ、1995年から石川島播磨重工業で開発が行われていました。まさに20年近い歳月が流れています。日本は第二次世界大戦時からエンジン開発では遅れをとっていました。F-2に搭載されているにもアメリカ製のエンジンです。
純国産エンジンは日本の技術者たちにとっても長年の悲願でした。
現在航空機で使われているジェットエンジンですが、取り入れた空気の60%が燃焼されずに吐き出されている。この残りの酸素を燃焼させる装置がアフターバーナーといわれているものです。
このアフターバーナーと推力偏向パドルを連動させることで高運動機動が可能となる訳です。この国産エンジン「XF5」ですが、開発着手から19年でついに完成。欧米を凌ぐ燃焼効率を達成しました。
そして、このエンジンを搭載したATD-Xは、2014年5月についに機体が完成します。
かつて猛烈な圧力をかけてきたアメリカは今回どう動くのか?
現在の実証機の段階で口をはさむつもりはないと伝えてきたといいます。しかし、実用化が本格的になる頃にはどうなるかは分かりません。
2035年以降はF2が退役する予定です。2018年度までには純国産でいくのか、国際共同開発になるのかを政府は判断しますが、いずれにせよ、F2の時とは違い、基礎研究や開発をここまで行えたことは日本側にかなり優位にはなります。
新規術を盛り込んだ新規開発。独り占めしたいのは日本側の本音でしょう。今後は実用化に向けての更なる研究開発となり、山場はこれからだそうです。
と、ここまでは、大変ためになる内容でしたが、最後にコメンテーターがやってくれました。
『僕はVTRを見てて非常に気になったことがあるんですね。それは開発者としてのリベンジとか、開発者としての日本の悲願とか、事情に情緒的な言葉が使われているんですけど、技術開発を推し進めるのはある意味で言うとパッションとか情熱だと言うのは理解できるそれが、技術そのものの正当性とか正当化に使われると言うのは非常に危険な要素があると。これは過去の歴史をふりかえって申し上げてるんですけどね。何にもまして国民的な議論が深められないままこういう重大な技術開発ていうのが国の予算国民の税金を使って既成事実として積み上げられていくことに問題がないのかと、あえて私は申し上げておきたいと思うのですが、この特集をご覧になった視聴者のみなさまも、国産ステルス機の開発話を単なるサクセスストーリーとか成功話という位置づけではなくて、そもそもなんで日本独自のステルス機が必要なのか、あるいは必要じゃないんだろうかという根本的な問題について自分の頭で考えるきっかけにしていただきたいと言うことを私は切に思います』
えー何を言っているんだこのコメンテーターは?という感じでしたが、日本独自のステルス機が必要だとはあなた方がさっき流したVTRでもとりあげていましたよ。専守防衛の日本では抑止力になるって。こちらから攻撃できない日本機は高起動で緊急回避できる性能が不可欠だって。
まるで日本が悪い事しているようにもっていこうとしています。日本の悲願とか、リベンジなどは、担当の技術者たちは言っていませんでしたが。TBSの編集で女性コメンテーターが言っていることでしょう。
情緒的な編集をしているのはTBSの方ではないでしょうか。国民的議論とは言いますが、そもそも、その土台になる情報を果たしてマスコミは流してくれているのでしょうか。
近年になって国籍不明機のスクランブル発進が急激に増えてきていること、中国の軍事的脅威の客観的な数値に基づいた情報など流しているのでしょうか?
中国の中距離弾道ミサイルが日本に照準を合わせて100基近く以上配備されていることは、2000年に米国政府関連機関の報告書に明記されていますが、日本のマスコミはちゃんと報道しているのでしょうか。
これら日本向けミサイルはほとんどが通常弾頭装備用ですが、一部には核弾頭装備の可能なミサイルもあるといいます。アメリカがこれらの基地をすべてロックオンしているから中国が手を出せないでいるということも報道してくれているのでしょうか。
報道の中立性というより、明らかに意図的な操作を感じます。内容がよかっただけに最後のコメントで気分を悪くしました。頑張って一年近くも取材して製作してくれた製作会社の努力をあっという間に台無しにしてしまうコメントでした。まあ、TBSクオリティといえばそれまですが。
と熱くなりましたが、ちょいと頭をクールダウンさせるために、ステルス機といえばコレという定番の1枚を貼っておきます。
模型情報はこちらです。
→【模型情報も】「心神」(ATD-X実験機)、いよいよ年内飛行へ!
こんな記事も読まれています。
→ステルス機のギザギザって?素朴な疑問があるので調べてみた。
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ついに姿を現しましたね。高運動性を目指すところなど、ゼロ戦の思想を継承しているようでなんか嬉しくなってしまいました。
by ys_oota (2014-07-15 00:47)
ついに秘密のベールを脱ぎましたね。
この世界にまともに戦える戦車を作れる国は片手で数えるほどしかありません。
ぜひともこのステルス機も成功させてほしいものです。
by 駅員3 (2014-07-15 07:27)
こんなクリーンな抑止力はほかにないですよね。
核ではなくひとつの航空機がですよ。
ボク的には『うわ・・・まじかよ・・・そんなん造られたらお手上げだよ!』と思わせてくれるのを待ち望んでます^^
お互い結果的に手を出せずに未来永劫平和ってのもいいと思ってます。
by ちょいのり (2014-07-16 02:34)
☆ ys_ootaさま
こんばんは~。専守防衛では緊急回避の高起動運動が生死の分かれ目になりますよね。
番組ではちゃんと説明もしていたのに、最後のコメントはなんだろうと思いました。
☆駅員3さま
純国産は未だ実現していないので頑張って欲しいと思います。
☆ちょいのりさま
最近のマスコミの報道を見ていると、ナチスの台頭を許したイギリス、フランスを思います。
戦争反対の世論で喜ぶ国ってどこなんでしょうね。
by ワンモア (2014-07-16 04:11)