考えることはどこも同じといいますか、国は違えど、同じような境遇に置かれると似たことを考えるものです。
夜間に高々度で進入してくる爆撃機をどのように攻撃するか。
同じ悩みを抱いていた日本とドイツがほぼ同時に考えついた、斜めに取り付けた機銃。今回は、夜間戦闘機を有効せしめた斜銃の話を。
ちなみにこの斜銃、日本陸軍では上向砲、海軍では斜め銃、ドイツではシュレーゲ・ムジーク(斜めの音楽=ジャズ)の意と呼ばれていました。
斜め銃の発想とその開発は、英米の四発大型爆撃機をどう撃墜するかというところからスタートしています。
高々度から進入してくる爆撃機に対し、ようやく敵機を射撃できる高度まであがるものの、当時の夜間戦闘機は、一度目標を逃すと再捕捉するのは困難でした。
そこで、1941年にドイツの夜間戦闘航空団のルドルフ・シェーネルト中尉という人が上向きに機関砲を取り付けることを思いつきます。
この機体は1942年後半に完成したものの、試験はうまくいかず、一旦アイデアは破棄されたのですが、更なる試験が行われた結果、実用化の目処をつけたのです。
この時、機関砲の取り付け角を60度から70度起こして取り付けるのが最適という結果を出しています。
実戦では、1943年から1944年にかけてのイギリス軍爆撃機の損失の80%はシュレーゲ・ムジークによるものと推測されており、相当の戦果を挙げていることがわかります。
さて、日本でも、同じような時期の1943年5月。ラバウルへ進出し戦闘を行っていた日本海軍の第251海軍航空隊では、連合軍の夜間爆撃に対処するため斜め銃を考案、使用しました。
発案者は小園安名海軍中佐。これは二式陸上偵察機(後の月光)の胴体に20mm機銃を斜め上へ向けて搭載したもので、襲来するB-17の撃墜に成功しました。
この戦果もあって、二式陸上偵察機は斜銃を搭載した夜間戦闘機「月光」として制式採用され、南方戦線において対B-17、B-24戦や本土防空戦で使用されることになります。
日本陸軍も海軍のこの戦果に影響を受け、上向き砲を取り入れます。すでに夜戦として活躍している屠龍に20mm機銃×2門を搭載、これを「キ45改丁」と称して実戦に投入。本土防空戦の対B-29用に使用しました。
この斜銃、斜め銃の効果が絶大なので、他の機種にも続々と装備をすることになります。
優秀な高速性能と上昇限度を誇る「一〇〇式司令部偵察機」や「彩雲」、単発戦闘機でも四式戦闘機「疾風」、そして零戦にまで斜銃を搭載して対抗します。
ドイツでもBf109Gに斜銃を搭載したタイプもありますので、夜間戦闘機として出撃する機体には斜銃はものすごい効果的な装備であったことがうかがい知ることができます。
しかし、アメリカ、イギリスも対策を立て始め、後下方への警戒と反撃を通達で徹底させます。さらに硫黄島が占領されたことで、護衛の夜間戦闘機を作戦展開できるようになり、その護衛によって日本夜間戦闘機は阻止されるようになっていくのでした。
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斜め銃ですか、なるほど。
戦争という究極の状況で、必死に考えたんでしょうねぇ。
by johncomeback (2015-01-27 05:55)
★johncomeback さま
戦争ってお互いの民族が生き残りを賭けて戦うものですから、技術開発が飛躍的に向上するという皮肉さも持っていますよね。うーん(-m-)”
by ワンモア (2015-01-29 00:31)