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江戸時代に有名になった怪談、「累ヶ淵」の現場に行ってきた。

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有名な塁のお墓

 仕事で、茨城県の取手市に行く用事があり、国道294号線を使ったのですが、途中の常総市羽生町に、江戸時代の三大怪談の一つ、「累ヶ淵(かさねがふち)の塁(るい、かさね)」の墓があるということで寄ってきました。
 ちなみに江戸の三大怪談といえば「四谷怪談」「番町皿屋敷」と、この「累ヶ淵」ですが、四谷怪談は実在したお岩さんを当時の時事ネタを盛り込んで脚色したり、中国の話を元に創作した番町皿屋敷と違い、実際に起きた事件が元になっているそうです。うーん、恐い。

 この物語を題材にとり、四代目鶴屋南北作の『色彩間苅豆』をはじめとした累物(かさねもの)と呼ばれる一群の歌舞伎作品がうまれたほか、三遊亭円朝の怪談噺『真景累ヶ淵』なども有名になりました。
 その実在の舞台が通り道に
あるというのですから、行かない訳にはいきませんよね。

 さて、このどういう話かをざっと紹介しますと 

  慶長17年(1612)、下総国岡田郡羽生村に、百姓・与右衛門(よえもん)と、その後妻・お杉という夫婦がいたのですが、このお杉には、足が不自由で醜く生まれついた助(すけ)という男の子の連れ子がいました。しかし、夫はこの助を嫌うので、お杉は、夫婦の不仲を怖れて助を鬼怒川に突き落とし、殺害してしまいます。
 その後、この夫婦には塁(るい)という女の子が生まれるのですが、この塁は、殺した助に生き写しであったために村人たちは、これは助の祟りで、助がかさねて生まれてきたのだという意味もこめ、塁のことを「かさね」と呼ぶようになります。
 塁は心優しい娘に成長し、旅の途中での病の他国者を助けて婿を迎え入れますが、その容貌のせいで次第に疎まれるようになり、この旦那に近くの鬼怒川で殺害されてしまいます。
 殺害の理由は、この家の財産を乗っ取り、別の女と一緒になることでした。
 その後、この家には不幸が続き、そして塁の死霊が後妻の娘、菊に憑き、苦しめます。

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累 『絵本百物語』竹原春泉画


この噂を聞いた、近隣の飯沼にある弘経寺(ぐぎょうじ)に滞在していた祐天上人という僧侶が、その法力で累の解脱に成功しますが、再び菊に何者かがとり憑きます。
 祐天上人が問いただしたところ、助という子供の霊でした。
 古老の話から累と助の経緯が明らかになり、祐天上人は助にも十念を授け、戒名を与えて解脱させたというお話です。


 この事件は、1612年から1672年までの60年間に繰り広げられた話ですが、この事件から18年後の1690年に出版された
死霊解脱物語聞書という書籍で初めて世に紹介されます。

 そして、約130年後の江戸時代になってから、鶴屋南北の「色彩間苅豆」を始めとした歌舞伎、講談、浄瑠璃などで上演されるようになって広く世間に知られるようになりました。
 最近では2007年に中田秀夫監督の『怪談』というホラー映画にもなりました。

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 法蔵寺には累を弔った墓があり、常総市の指定文化財になっています。
 また、法蔵寺には祐天上人が解脱に用いたという数珠・累曼陀羅・木像なども実際に保存されているそうです。

 さて、前情報はこれくらいにして、現地に向かいましょう。

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 場所は、国道294号線と354号線の交差する水海道有料道路の傍です。
 最寄りの駅は鬼怒川を挟んだ向こう岸の「中妻駅」か「北水海道駅」になります。
 バスもあるにはあるのですが、徒歩ですと1km くらい歩くことになります。
 結構、場所的には不便。

 車での参拝者用の駐車場がありました。
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 こちらは山門ですね。浄土宗法蔵寺とあります。
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 車で入った所から本堂が見えます。
 右手奥に檀家の方々の墓石が見えますが、塁の墓は別にありました。
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 古い板塀で囲った場所が、塁とその一族のお墓です。

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 脇に説明札が立てられています。
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 これは、祐天上人が除霊する時に実際に使用したといわれる数珠です。

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「塁まんだら」ですね。よく見ると、お塁の一生と、その後の憑依、除霊の模様が描かれています。
 中を覗いてみます。


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 脇には、与右衛門の妻、塁と書かれた卒塔婆が。
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 中央が塁の墓、右が助、左が菊の墓とのこと。元々、別の場所にあったかもしれません。
 訪れる人も多かったことでしょう。
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 国立劇場での芝居の前の役者やスタッフたちが訪れたようです。四谷怪談のお岩稲荷もそうですが、役者さんはちゃんと挨拶と供養に行き、縁起を担ぐことも忘れません。

 後ろに見えるのは鬼怒川の土手でです。この場所の近くで助や塁が殺されたかと思うと、
身勝手な人間のエゴの怖さを感じます。

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 この冬の季節に枯れた樹木と川を眺めていると、その時代に戻ったようでした。
 この場所は当時もそう変わっていないのかもしれません。
 実在の事件ということで、他の怪談とは違うリアルティを感じました。
 助は夫の愛情が欲しい母親に殺され、塁は、夫に殺されるという悲しい話です。

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 芸能として語り継がれることで菩提につながるのかもしれません。
 
 帰りは、関東平野を感じさせるに充分な広大な畑の中の294号線を帰りました。
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塁のお墓がある法蔵寺はこちらです。



よろしければこちらもどうぞ
→日本の三大幽霊(黄昏怪奇譚ブログ)

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コメント 3

johncomeback

拙ブログへのコメントありがとうございます。
お岩さんの墓は有名ですが、塁の墓は存じませんでした。
圓生の「真景累ヶ淵」は凄みがありました。
by johncomeback (2015-02-01 20:09) 

ちょいのり

酷い話ですね・・・。しかもほんとにあったことだなんて・・・
そりゃ化けてでも出てきますよねこれは^^;

by ちょいのり (2015-02-02 20:17) 

ワンモア

★johncomebackさま
真景累ヶ淵、芸能としても面白いですよね。

★ちょいのりさま
この場所がいい雰囲気を醸し出しています^^;
by ワンモア (2015-02-04 11:33) 

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