◆路面電車とチンチン電車の日
本日、8月22日は「チンチン電車の日」です。1903年のこの日、東京電車鉄道の路面電車が営業を開始し、東京で初めて路面電車(チンチン電車)が走ったことを記念して制定されました。
正式名称は路面電車ですので、全国的な「路面電車の日」は、この日とは別に6月10日で制定しています。
良いですね、チンチン電車 ^^。 なぜチンチン電車と呼ぶのかですが、これには2つの説があるそうです。
一つが通行人への警告のために運転士が足で床下の鐘(フートゴング)を鳴らす音がチンチンという音だからという説。
もう一つは、車掌が運転士にあるいは運転士が車掌に合図を送るために鳴らしていた鐘(ベル)の音に由来しているのではないかという説です。
その鐘の音ですが、以下のように使い分けていました。
「チン」= 走行中電車が停留場に近づいたとき「降客があるため停車せよ」または「停車する」
「チンチン」=動いている時→「降客がないので通過しても良いか」または「良い」
停車中の時→「乗降がすんだので発車しても良いか」または「良い」
「チンチンチンチン」=「直ちに停車せよ」または「停車する(非常停車)」
これですと、しょっちゅうチンチン鳴っていることからチンチン電車と呼ばれるのも無理はないですね。
現在でも都電荒川線や阪堺電気軌道の全車両で発車時に聞くことができるそうです。
戦後はブザーやワンマン化により「チンチン」という音は聞かれなくなった車両が増えたそうですが、懐かしい音として年配の方は思い出されるのではないでしょうか。
初期の路面電車を復元した函館市企業局交通部「30形」
◆路面電車の衰退の原因
さて、この路面電車、経済が発達してきて車社会になってくると、路面電車に乗らない→乗客減→列車本数削減→乗客減→列車本数削減という悪循環に陥り、更には、路面電車が車と同じ場所を走るので渋滞の原因になるなどの理由で、1970年代に各地で廃止になったりしました。
要は自家用車に乗れるようになって便利になったから邪魔モノ扱いされたってこと?
政府の政策も路面電車に不利な状況をつくります。
・軌道敷内の通行を許可した
車が増えたことで渋滞がひどくなり、路面電車の道を車も通らせろという声を反映させることになった自治体が増えたのですが、これにより→路面電車の定刻通りの運営ができない→住民の不満→乗客離れという状況になります。
この時期に軌道敷内通行を許可しなかった(できなかった)街は、現在も路面電車が残っていますが、解禁した街はすべて路面電車がなくなっています。
・地下鉄を大都市交通の基幹として、路面電車などの交通はバスで代替させた。
この政策では、地下鉄の補助金は出ましたが、路面電車を改良する為の補助制度は全くありませんでした。
路線網が地下鉄だけでは全く代替できないような仙台・京都でも昭和50年代に全廃せざるを得なかった理由の一因はここにあるそうです。
・バスの発展
戦後は車が発展していきましたが、バスも発展していくことになり、輸送力や車両価格、燃費も経済的に有利となってゆきました。
一方、戦前から存在していた路面電車のほうは、ちょうど車両・施設が更新の時期に入り、改善しようとしても、すでに乗客が減少しつつあり、その費用を賄うのも困難でした。賃上げしようにも政府はなかなか認めてくれず、このようの流れの中、利用者にとっても、新しいバスの方が魅力的であり、いつの間にか路面電車は「時代遅れ」という認識になってゆきました。
◆これからの交通、ライトレール(LRT)
以上のような理由から路面電車は次々にその姿を消していきましたが、現在は、排気ガスの環境汚染対策や渋滞緩和などの問題により、路面電車も見直されてきています。
これは、次世代型路面電車(ライトレール=LRT)と呼ばれるようになり、鉄道や地下鉄よりも手軽で、バスよりも輸送力が高いという利点から戦後のヨーロッパ・アメリカ双方を中心に発展していきます。
ライトレールの利点ですが、
・輸送力が上がり渋滞緩和になる。
・環境汚染に優しい。
・高齢化社会にも対応できる。
・地下鉄や鉄道よりも建設コストが安い
よくバスが発達しているからいいじゃないかという声もあるのですが、LRTとは性質が別で、互いの強みを活かし、欠点を補い合いながら、都市内交通のネットワークを形成すると考えた方がよいですね。
面白いのは、路面電車を走らせるとバスの利用者までもが増加する事象が多く見られるそうです。フランスのストラスブールやアメリカのポートランドでは、LRT導入後、公共交通利用者が増え、特にバスの利用者数が急増したとのこと(『LRT-次世代型路面電車とまちづくり- 』(交通ブックス)より)。
LRTが出来ることにより、公共交通への意識が高まるという効果なのでしょうね。
皮肉なのは、路面電車が廃止になると、代りにバスに移行する乗客数は路面電車の約半分しかないことが知られています。残り半分はマイカーに移動し、それが渋滞に拍車をかけ、バスも渋滞に巻かれ、悪循環になるそうで。
バスとLRTの共存、良いですね^^
◆日本でのライトレール(LRT)の取り組みは?
LRTにおける定義によると、広島電鉄宮島線、京福電気鉄道、東急世田谷線、阪堺電気軌道 、筑豊電気鉄道、江ノ島電鉄などがそれに該当するそうです。
既存の路線を使わず、新たに新設しようとすると、宇都宮市のようにまだまだ大変のようです。
富山ライトレールなんてオシャレで近未来的ですね。
宇都宮市のLRT構想ですが、自民のやることはとにかく反対の民主党と、デメリットばかりを強調する共産党が中心になって建設反対を叫んでいます。
個人的には、LRT単体で考えるのではなく、住み良い街造りというトータルプランの一環のひとつとしてLRTの導入の是非を考えてもらいたいと思います。
LRT単体では赤字になる可能性が高くても、高齢化社会に向けて、住み良い都市型集約設計を考えているならLRTは必要だと思います。
採算の是非を問うなら、そもそも道路の増設だって、何百億もかけても、採算は考えていないですよね^^;
これからの事を考えると、今の交通状態では良くないことは確かなのですから、賛成側も宇都宮市の未来ビジョンの明確化と、もっと詳しい説明、そして反対側もしっかりとした責任のある代案を出したりして、もっと本格的な議論をして、全国の見本になって欲しいです。
数の論理で押し切る前に、色んな意見を出し合って協議すること自体が他の地方都市への参考になると思うのです。
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2015-08-22 22:07
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我が田舎の義父も昔チンチン電車が走っていましたね。
今は、どうなんだろう。。
ン十年帰ってないから。。。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2015-08-22 22:44)
拙ブログへのコメントありがとうございます。
大阪は北と南で全く雰囲気が違いますね。
北は東京と変わりませんが、ミナミはコテコテです。
by johncomeback (2015-08-22 23:03)
不遇の扱いでもあったのですね・・・
ボクとしては市民の足としても是非とも望みたいってとこです^^
うまくすれば観光業にも寄与できるんじゃないかなあ~とも思うし^^
反対ばっかりじゃ何も進まないと思うし^^
by ちょいのり (2015-08-23 01:31)
1995年~2001年 大阪に居ましたが
阪堺電気軌道 チンチン電車 利用していました
当時 まだ クーラー無しの車両があり 夏 この季節は
停留所に近づいてくる路面電車の窓が全開になっているのを
見て 停留所で待っている人 皆が 「エ~!?」 と声をあげて・・
考えるコトが 皆 同じなんだなあ と思いました (笑)
by タイド☆マン (2015-08-23 03:23)
クルマ社会の結果として、
ドライバー全体の高齢化による自動車事故が
増えているように感じる昨今、
だれでも手軽に利用できる公共交通機関の整備は必要ですね。
by desidesi (2015-08-24 11:28)
★なんだかなぁ〜!! 横 濱男さま
残っていると良いですね^^
私は子どもの時代が東京でしたので、懐かしいです。
★johncomebackさま
大阪ってコテコテってイメージが強すぎて、
全部があんな感じに見えてしまいます(笑)
★ちょいのりさま
そうなんです。反対、反対だけでは未来が見えない。
ワクワク感がないと地域の活性化につながらないと思うのです。日本全体にも言えることですが。
★タイド☆マンさま
クーラーなしの車両・・・自分の時も、
そういえばあったような、ないような・・・
どんどん便利になっていきますよね。
★desidesiさま
今回、色々調べたのですが、LRTを導入した地域は、公共機関への意識が高まり、バスなどの利用客も増えるというのが印象的でした。
宇都宮市民にも当てはまるか注目したいです。
by ワンモア (2015-08-25 13:31)