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戦闘機から”水上”戦闘機へ生まれ変わった傑作機〜二式水戦

Cap 421.jpg 今度、発売されるエフトイズ「ウイングキットコレクションVol.15」の今回は、二式水戦の話を。


  
日本の特殊事情が水上機王国を作り上げた。
 水上機って今はあまり開発されていなくて、US-2などの飛行艇はほぼ絶滅している感じなのです。
 飛行機が開発された頃は、エンジンも非力で、フラップなども開発されていないので、離陸距離がとても長く必要でした。
 ですので、地面を平らかにする飛行場を作るより、湖などの湖面や穏やかな海面を離陸に使用した方が便利だったのです。

 世界最速の飛行機がみんな水上機だったのも、こういう事情があった訳なのですが、この水上機を絶滅させたのが、ブルドーザーと言われています。
 今まで人力で地面を掘り、整地していたのを機械でガーッと効率よくやってしまいますから、飛行場も以前に比べてあっという間に出来上がりました。

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1925年度シュナイダー・トロフィー優勝のカーチスR3C-2

 そうすると、飛行中は大きなお荷物以外の何者でもないフロートなど無いに越したことはありません。塩害の心配も必要ないですし、わざわざ水面から離発着する必要もなくなったということで、あっという間に水上機は廃れていってしまう訳です。

 水上機は、飛行場の整地が出来ない場所や飛行場を作ると採算が合わない航路など、限られた場所でしか生存の場を許されなくなってきたのです。

 そんななかで、日本だけはちょっと特殊事情がありました。広大な太平洋が戦場になることを想定していた軍部ですが、南方の島々を攻略、守備するのに飛行場をおいそれと作るわけにはいきません。またアメリカのように工兵隊も機械化部隊という訳でもありません。
 拡大していく戦線とその島々の配備には、水上機というのは必要不可欠な航空機だったのです。 

  
専用水上戦闘機の代りに開発された二式水戦
 
ということで、水上偵察機はもちろんのこと、戦闘機でも水上型を開発しようと軍部は模索します。日中戦争で九五式水上偵察機などの水上観測機が搭載機銃で敵機を撃墜するなど意外な活躍をしていたこともあり、1939年から日本海軍は本格的な水上戦闘機を開発します。
 15試水上戦闘機と銘打たれたこの機体は後の「強風」になっていく訳ですが、開発が難航したため、太平洋戦争には間に合わないことが明白になってきました。
 そこで、急遽、当時高性能だった零式艦上戦闘機11型をベースに水上戦闘機化することを臨時に計画します。
 これが1941年のこと。元々零戦は三菱製なのですが、零戦や一式陸攻の生産で手一杯なこともあり、中島飛行機製作所に改造を命じます。試作機ができたのは1941年12月8日。奇しくも太平洋戦争勃発と同じ日になりました。

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意外と手間がかかる水上機化
 
当初は、フロートをつけるぐらいの改造で済むだろうから、重整備のために戻ってきた機体を改造する予定でしたが、これが結構大変なことになりました。元々水上機として設計されていない零戦の機体は開口部が多く、侵入した海水が機体各所に入り込み、特にマグネシウム合金を腐食・劣化させてしまうことが判明します。
 そこで、腐食処理対策を施した最初から新造の機体として製造することが決定されます。
こうして1942年(皇紀2602年)。二式水上戦闘機として正式採用されることになります。
 

二式水戦.jpg
外見は零戦11型とほとんど変わりがありませんが
垂直尾翼などに違いが見られます。

 
 量産された機体は、戦線の拡大に伴い、太平洋各地に配備されて、船団の護衛や基地防空に活躍します。もちろん水上戦闘機ですので、普通の戦闘機には敵いませんが、それでもグラマンと格闘戦を行い撃墜した記録も残っています。
 戦局の悪化と敵戦闘機の性能向上に伴い1943年には生産を中止しましたが終戦まで活躍しました。
 生産機数は327機と少ないですが、ほとんどの国ではこのような機種は量産すらされておらず、水上戦闘機としては世界最多を誇ります。

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スピットファイアもBf109も水上戦闘機化されていた?!
 
他国では水上戦闘機の開発はどうだったのでしょうか?実はイギリスのスピットファイアもドイツのBf109もフロートを履かせて水上戦闘機化する計画はあったのです。
 ドイツではノルウェーなどの北海の海岸線など飛行場が得られないことからBf109Wとして試作しましたが実用化には至らず、スピットファイアも試作のみで開発を中止しています。

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1/72のプラモデルも発売されていますね。

 Bf109ベースですと、翼面下にラジエター装備ですので塩害に非常に弱いという面がありますし、翼面荷重が大きい機体なので元々無理があったようです。そもそも高速がウリの小型軽量のBf109がこんなに大きいフロートを履いたら長所も活かせないですよね。
 水上戦闘機の場合は、元々空気抵抗が非常に大きいので液冷エンジンのメリットもそうないかもしれません。スピットファイアも試作のみで開発が中止となりました。
 
 そう考えると必要に迫られていたとはいえ、実用化までこぎつけ、生産化されるなんて、日本は結構、頑張ったのではないでしょうか。なにか水上機に対する強いこだわりを感じますね。
 日本は改めて海洋国家であると再認識させられます。

 世界でも非常に珍しい最初から水上戦闘機として開発していた「強風」は、ようやく実用化される頃には戦局の状況が悪化し活躍の場はほとんどありませんでした。
 しかし、強風を陸上戦闘機化した紫電、紫電改が最後の活躍を見せたということは、水上戦闘機の技術が完成まで到達していたことを思わせます。
 
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世界でもユニークな水上戦闘機「強風」

 日本の水上機の技術は二式大艇を中心に戦後のUS-1,US-2へと受け継がれ、平和な空と海で活躍することになります。



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コメント 6

アニ

水上機母艦「秋津洲」に積まれていたやつでしょうか?^_^
by アニ (2015-09-29 00:44) 

Hide

アドバイス頂き、ありがとうございます!
どうもそんな感じがして来ましたが、やれる所まで
やってみます、この為にデッキも買いましたので、
2〜3本で止めてしまいますと・・・・ムムム><
by Hide (2015-09-29 09:53) 

desidesi

なるほど、ブルドーザーが・・・。
水上機の話。とても興味深いです〜♪ (๑◔‿◔๑)
子供のころ、水上機のプラモも作ったなぁ。
by desidesi (2015-09-29 10:02) 

johncomeback

拙ブログへのコメントありがとうございます。
足湯に全裸で入っていたら、公然ワイセツ罪?

今回も大変興味深く拝読させていただきました。
by johncomeback (2015-09-29 10:42) 

駅員3

実は隠れ水上機フェチであったりします。
フロートの優雅なラインがなんともいえませんね。
二式水戦、強風、晴嵐、九七式大艇、US-1、US-2、二式大艇みんな素晴らしいフォルムです!
by 駅員3 (2015-09-29 14:48) 

ワンモア

★アニさま
こんにちは~、秋津洲に搭載されていたのは、
もっと大きい二式大艇の方かと思います^^

★Hideさま
DVD化大変でしょうが頑張ってください^^;

★desidesiさま
水上機は男のロマンだと思います( ー`дー´)キリッ

★johncomebackさま
たしか、足湯を露天風呂と間違えて入ったのは、
ライダーさんの話で、誰もいない夜中のことだったと思います(笑)後で足湯だったと分かったらショックですよね(笑)

★駅員3さま
おぉ。同じ意見で嬉しいです。複葉でフロートなんて最高に萌えます^^
by ワンモア (2015-09-30 07:58) 

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