
一見普通のレシプロ機に見えますが、ジェットエンジンも搭載しています。
終戦間もない頃に登場したジェット機は、戦後、急速に各国で実用化されていきます。
その原動力になったのは、ドイツの技術であることは言うまでもないことですが、当時のジェットエンジンは、まだ黎明期ということもあり、その信頼性や航続時間などにはかなり問題がありました。
特に艦載機として使用するには、甲板という限られた離陸距離、加速性能など、陸上基地の飛行場と較べて過酷な数値を要求されていたのです。
特にジェットエンジンは当時は燃費が悪く、広い洋上に展開する艦上戦闘機にとっては大きなリスクとなります。
そこで、出力の高いジェットエンジンと、燃費のよいレシプロエンジンを組み合わせようというアイデアから生まれたのが、このFRファイアーボールなのです。
いわば、ハイブリッド車のようなものでしょうか。「いいこと考えたな」と当時は思ったのでしょう、開発は1943年からスタートし、初飛行は1944年6月25日と、急ピッチなスケジュールでの開発でした。
スタイルは完全にレシプロ機ですが、このスタイルで尾輪ではなく前輪式なのがちょっと違和感を感じますね。
艦載機としての離発着にも成功しています。
FRはアメリカ海軍初のジェットエンジン搭載機として、改良型のFR-2と合わせて700機が発注されたものの、終戦となったので結局66機が生産されたに過ぎず、残りはキャンセルとなりました。
一方陸軍の方では、P-80(F-80)シューティングスターが1944年1月に初飛行に成功、アメリカ軍初の実用ジェット戦闘機として一足早く運用かされています。
こちらは、練習機型として開発されたT-33が有名ですね。
F-80やT-33などが長く運用されたことに対し、FRは、わずか2年ほどで退役となります。その理由は、ジェットエンジンの急速な進歩により、複合機としてのメリットがなくなったことに尽きます。レシプロエンジンをターボプロップエンジンにした改良型のXF2Rダークシャークも結局試作機止まりで終結しました。
同時期に開発された、F-80がその後も活躍したことや、練習機型のT-33が今も現役で頑張っていることを見ると、明暗が分かれた2機だと思います。

現存機がカルフォルニア州の博物館に展示されています。
【短命に終わった混合動力機】
ジェットの黎明期にはこのようなジェットとレシプロの混合動力機(複合動力機)が幾つか試作されました。
艦載機に多いのですが、これは、ジェットエンジンの燃費の悪さに加え、スロットルの調整が難しいため、着艦が困難という欠点を解決するためのアイデアなのです。
どれも個性的なデザインですね。発想はユニークだったのですが、どれも試作機止まりで実用化されることはありませんでした。
XF2Rダークシャーク(1946年11月初飛行)は、FRファイアーボールを基に、レシプロエンジンをターボプロップエンジンに換装した機体です。生産数は1機のみ。
コンベアXP-81はアメリカ陸軍航空軍で開発した長距離単座戦闘機(1945年1月初飛行)です。航続距離は4,000kmもありました。
XF15Cは、1945年2月に初飛行した艦上戦闘機です。2,100馬力のレシプロエンジンを搭載したかなりの大型機で性能もよかったのですが、ジェットエンジンエンジンの能力向上により、複合動力搭載のメリットがなくなったため、1947年に計画はキャンセルされました。生産数は1機のみです。
【模型情報】
ジェットとレシプロの混合という発想が面白いFRファイアーボール、活躍の機会がほとんどなかったこともあって模型化は極めて少ないです。食玩で出てくれないかなぁ〜
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2016-05-08 17:40
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>食玩で出てくれないかな
改造しましょう ツ ☆
by タイド☆マン (2016-05-09 21:04)
★タイド☆マンさま
いやぁ、ベースになる機体がないんですよね^^;
by ワンモア (2016-05-09 21:27)