飛行機はこの翼端渦を発生させながら飛んでいる訳なのですが、これが抗力、抵抗力となって己自身の加速を邪魔することになるんですね。
厄介なのは、この乱気流は自分だけではなく、後続機にも影響を与えること。
前を飛んでいった旅客機が残していった翼端渦に小型機が巻き込まれると、最悪は墜落してしまうこともあるのです。
◆翼端渦の後方乱気流が起こした航空機死亡事故
これは、ジャンボ旅客機時代に入り、多くの旅客機が飛行場を利用する時代になるとやっかいな問題となってきて、実際に墜落事件が過去に起きました。
それは、2001年11月12日ジョン・F・ケネディ国際空港いて発生した、アメリカン航空587便事故でした。
この事故は、乗員乗客260名全員と近くの住民5人が死亡するという、米国内でも最悪級の事故になりました。原因は、直前に離陸した日航機の起こした乱気流に巻き込まれ、その際に方向舵を過剰に操作したための折損によるものでした。
→アメリカン航空587便墜落事故(Wikipedia)
現在では、後方乱気流の管制方式を定め、十分な運行間隔を確保したりして安全管理を徹底化させていますのでご安心を。
また、近年の新しい技術として大気中の微粒子をレーザー光で測定して気流の状態が分かる「後方乱気流検出装置」も設置し始めています。
これはドップラーライダシステムといって、日本では三菱電機が開発しています。仙台空港などにも設置されて活躍していますね。
◆翼端渦を少なくするための設計
さて、現在では、このように翼端渦が起こす面倒な問題を、ひとつずつ解決していっている訳ですが、翼がある限り、翼端渦は少なからず発生してしまうものです。
昔から行われていることは、翼の形状を工夫することで翼端渦を小さくすることでした。これは、設計者の悩み所でもありましたが、やりがいのある作業でもありました。
理論上、最も良いのは、先端にいくに従って揚力が少なくなっていくような翼で、大げさにいえばこんな形になります。
先端は、上下面の圧力差がゼロなので、翼端渦が発生はしません。
まあ、これだと、揚力が少ない部分が大量に発生してしまうし、抵抗も大きいので現実的ではありませんが、理論上はこんな感じです。
これを現実的に行おうとしたのが、F-15の翼型。要は翼端付近で急激に翌弦長を小さくしてしまうかたちです。これはクリップデルタ翼と言われています。
デルタ翼での無駄な部分(揚力の小さい箇所)をカットしたデザインなんですが、これも主流ではありません。これがベストデザインなら世界の翼はこれになっているはずですものね。
第二次大戦中の飛行機たちをみると、円形にするのがもっともポピュラーで、日本機の大部分と当時の主要戦闘機はこの形状ですね。
エンジンが非力な日本機の場合は、空気抵抗をいかに少なくするかが高性能機の必須の条件でした。スピットファイアの楕円翼も有効ですが生産性は落ちます。
これらと反対の設計コンセプトだったのがアメリカ機。多少の空気抵抗などは強力なエンジンでカバーさせてしまい、なによりも生産性を重視しました。直線翼が多いのはこのためですね。
戦後は、超音速機の開発が進み、空気抵抗の問題が更にでてきます。次回は、翼端渦と新型の翼の話の続きを。
以下のサイト様も参照にさせていただきました。
→AC-SPEC
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後方乱気流は漠然と知ってるような気になっていました
が、具体的には何も分かっていませんでした。記事を拝読
して少しは理解できたと思います(*´∇`*)
by johncomeback (2016-05-27 22:34)
翼の先端が上向きになっているのがありますね
アレって 翼端渦を遮る役目をしてるんじゃないでしょうか
(去年の秋に乗った)
B787の翼端は カーブを描くように上向きになっていました
アレも 同じような効果があるのでしょうか (?)
by タイド☆マン (2016-05-27 22:49)
★johncomeback さま
日常生活ではあまり馴染みがないのですが、知っておくと空港関係者さんたちの苦労も理解できるかなと(笑)^^;
★タイド☆マンさま
はい、ウイングレットは次回の記事に(笑)
by ワンモア (2016-05-28 20:30)