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落下タンクを最初に採用したのは日本。増槽あれこれ

F-2.jpg
F-2の翼下に牽引されてる大型落下タンク

 現代の戦闘機などで当たり前になっている落下式の燃料タンク、通称「増槽」。飛行機が内蔵している燃料だけでは足りないときに翼や胴体の下に取り付けるタンクで、中身が空になれば投棄して空気抵抗の削減にもなる便利なものです。

◆落下式タンクを世界で最初に採用したのは日本海軍

 実はこの落下タンクを最初に採用した国は、当時まだ航空機の後進国であった日本でした。広大な中国戦線での運用を考慮して、九五式艦戦から採用されたのです。


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 九五式艦戦。使い終われば、いざ不時着水という時はフロート(浮き)にもなるという便利な増槽。

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 堀越二郎氏会心の作、九六式艦戦。最初の頃の増槽は密着型でした。九五式艦戦とは違い「使い終わったら投棄する、戦闘時には投棄する」というスタイルになったのはこの九六式艦戦からといわれています。

九六式.jpg
『世界の傑作機 九六式艦戦』より


◆増槽の種類

●ドロップタンク(
落下型増槽,drop tank)
 追加燃料タンク、増設燃料タンク。落下タンクとも言われています。空気抵抗を削減するためにミサイルのような尖ったかたちをしています。ですので、素人さんはミサイルや爆弾と勘違いすることも。 

Untitled.jpg

一番多く使われた形式だけあって、色々な形や材質があります。

Cap_138_copy.jpg

 零戦52型で一時使われていたタイプで安定版を取り付けています。投下時に機体にぶつからないように工夫したものですね。


 資源が足りなくなると木製も登場します。なんせ、使い捨てになるのでもったいないです。アルミニウム製は当時は貴重な戦略物資ですから。
 ヨーロッパ大陸では、投棄された増槽を回収していました。
ドイツでは回収できるように落下タンクに注意書きもあります。
「爆弾にあらず!本品を拾ってもよりの警察、飛行場に届ければ10ライヒスマルク進呈」

Droptank.jpg
Bf109などに使われた300リットル増槽。意外と大きいものなのです。


 イギリス駐留のアメリカ第8航空軍では、敵に資源として回収されないように紙で作られたタンクもありました。燃料を入れると一定時間経つと使用不能になるのです。敵に資源を渡してなるものかということで、ケチっていますね。

Cap 139.jpg
108ガロン増槽。なんと紙製


 日本でも、ベニヤ製や竹組みに紙を貼ったものが使われましたが、これは敵に回収されないようにというより資源が足りなくなったからです・・・。
 増槽はWWⅡの飛行機の模型製作では必須のアイテムですな。

●ティップタンク(翼端増槽,Tip Tank)
 
戦後間もないジェット機では翼端増槽といって増槽を翼端につけることも流行りました(これは翼端渦を抑える効果も期待してのことでしたが、運動性が落ちるのと、空中給油機などの登場により、今では採用されていません。取り外しができない固定式と、駐機中に限り取り外しができる半固定式とあります。

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F-104は小型で、燃料スペースが胴体に十分確保できませんでした。


コンフォーマル・フューエル・タンク(密着型増槽,conformal fuel tank)
 最近ブームなのが燃料タンクを機体に密着したかたちにして空気抵抗を小さくするスタイルです。F-15などでも採用されていますが、もう胴体と一体化しています。
 空中投棄はできませんが、
駐機で作戦に応じて外したりできます。
 これのメリットは、兵器を搭載するハード・ポイントを使わないので、より多くの兵器を搭載できるという点にあります。また空気抵抗も小さいので燃費にも優れています。
 F-15Eではもう標準装備ですね。でも考えてみれば、胴体に燃料タンクを薄く貼り付けている感じなので、被弾したら火だるまになりそうな感じがして怖いかも^^;
 

Cap 920.jpg
日本のF-2Aも
コンフォーマル・フューエル・タンクが検討されたことがあります。

 

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イスラエル空軍のF-16


 似たような発想で、Bf110Dなどがありますが、こちらは完全に取り外し不可で「ダックスフンドの腹」と揶揄され、評判はよくなかったようです。

Bf110D.jpg


 
長距離タイプのBf110D。ダックスフンドというより子持ちししゃもを連想してしまいます。

 こんな感じで、運動性を求められる戦闘機などでは、少しでも軽くする必要性があったことから落下式の燃料タンクは多く用いられてきました。
 そうそう、考えてみれば、多段式ロケットなども同じ発想かもしれません。 空を飛ぶには、必要なくなったものをどんどん破棄してより軽く、より空気抵抗を小さくすることが大切なのです。

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コメント 6

tsumi

ドロップタンク!素人の私は知りませんでした。。そして確かにミサイルに間違えますね。これは笑

こういうのって、切り離して落としたやつが降ってきたら怖いな~なんて…さらに素人の考えですね笑
by tsumi (2016-08-25 01:28) 

ワンモア

★tsumiさま
 こんばんは、コメありがとうございます^^
ドロップタンク、間違いやすいですよね。戦時中とは違い、
日本では緊急時でも投下は禁じられており、最悪の場合でも海上まで移動して船舶がいないかを確認にて破棄するので大丈夫だと思います^^
by ワンモア (2016-08-25 02:53) 

tochi

色々考えているのですね
日本の技術は最高ですね
by tochi (2016-08-25 08:03) 

caveruna

は~、なんか航空祭行きたくなっちゃう。
でも人ごみ嫌い(笑)
by caveruna (2016-08-25 10:42) 

意馬心猿

F-16のコンフォーマルタンクはどうも不恰好で・・・(^^A

F-2のプランはF-2super-kaiでしたっけ?
能力向上の改修はやって欲しかったなぁ~。
by 意馬心猿 (2016-08-25 11:19) 

ワンモア

★ tochi さま
 日本はこういうの得意ですよね♪ あとは営業力(;^ω^)

★caverunaさま
 航空祭良いですよね。炎天下の人混みを避けるなら、空港のラウンジからの眺めも最高ですよ\(^o^)/

★意馬心猿さま
 F-2Aにコンフォーマルタンクはいいアイデアだと想ったんですけどねぇ。
by ワンモア (2016-08-25 13:48) 

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