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蘇る「カスピ海の怪物」! 地面効果翼機って何?

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眠り続けている”カスピ海の怪物"

 先日のニュースで、ソ連が1990年代に開発を続けてきた旧機体を整備し直して、新たな開発をするそうです。最近流行っているのかな?

→ロシア、次世代型「カスピ海の怪物」を開発へ (
RIANovosti 2016.09.27)
http://business.newsln.jp/news/201609270950430000.html

 この機体は地面効果翼機でソ連では「Ekranoplan(エクラノプラン)〜地面効果翼機の総称」と呼ばれています。
 ソ連崩壊やら経済的理由で放置されてきた、旧型機のA-90を再整備した上で、試験飛行機として活用しながら新型のエクラノプランの開発を進めるそうです。

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保存されているA-90


◆再整備される A-90 Orlyonokとは

A-90_Orlyonok_4 copy.jpg


 
エクラノプランですが、スタートは高速船の設計局が中心として行われました。航空機開発局ではないのです。ここ、ポイントかも。
 1961年の最初のエクラノプランであるSM-1の初飛行を皮切りに順調に開発は進み、
全長92mを超えた大型のKM機に至っては、最大速度400km/h、積載重量540トンに達しました。
 20m級のSMシリーズも進み、1972年にはA-90の原型機ともいえるSM-6が完成します。

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極端に短い主翼


 これらの機体は、カスピ海や黒海で運用されることを念頭に置いた軍事輸送機関として開発されています。
 しかし、
飛行というより浮上しているという方が正確ない呼び方かもしれませんね。
 ボディも航空機用アルミ合金ではなく、船舶用のアルミ合金を用いられているそうです。実際の製造も造船所で行われていたといいますから、飛行機としては微妙な立ち位置なのかもしれません。

A-90_Orlyonok_2 copy.jpg
相変わらずの独特なスタイル。好きですけど(^^)

ソ連で開発していたA-90などのエクラノプランの動画です。

◆地面効果翼機とは

 
 では、この地面効果翼機とは一体どういう原理で飛ぶのでしょうか。
 飛行の原理は、揚力なのですが、地面効果翼機とはその揚力に加え、地面効果の原理を用いているのが特徴です。   
 通常の場合ですと、飛行の原理はこんな感じ。
Cap 42.jpg
Cap 43.jpg

 翼端渦は必ず発生するのですが、これを小さく抑えるのが、現代の航空技術の課題になっています。

Cap 46.jpg1920px-B737-800_Split_Winglet_WP_20141110_001 copy.jpg


 これが、実は地上に近いと、この翼端渦の動きが地面に遮られ、翼の上面に周り込みにくくなるのです。
 主翼の翼幅の半分より高度が低いと地面効果が現れてくるのですが、地面から離れるほどに揚力の利得が少なくなるので高くは飛べないのが特徴。
 要は、いつまでも地面(水面)が必要な飛行機?なのです。うーん飛行機といえるのか。

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小形の地面効果翼機。船舶?飛行機?

 国際法的な位置付けもまた確定していない部分が多く、どちらかというとホバークラフトや水中翼船などの高速船に適用される可能性も。
 ですので、飛行するというより浮上しているという言い方の方が的を得ているかもしれませんね。
 この地面効果は飛行機以外にもヘリコプターや船舶、鉄道などにも発生します。また、自然界ではハクチョウや海鳥、トビウオなどもそうで、彼らは地面効果を生来的に会得しているのです。
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水面近くを地面効果を利用して飛んでいるハクチョウ。翼端渦を抑えるかのような翼のかたち。やっぱり自然界って凄いですね。

◆地面効果翼機のメリットとデメリット

 地面効果翼機のメリットですが、通常の航空機に比べて、なにより燃費が良い、積載量を大きくできるという点が大きいです。また、高く飛ばないので、トラブルがあった時の安全性も高いですね。
 デメリットは、その高度が低いので、旋回する時に海面や地表に接触する危険や姿勢制御の難しさがあるというところでしょうか。
 また、凸凹している場所や波が高い所は無理かも。離陸時の浮揚力が不足しがちなので、US-2のような高浮揚力発生装置とか、ホバークラフトのような原理が必要だということです。

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離陸の際に翼下にエンジンの噴流を持ってくる


今後の展開と可能性

 輸送機関として、航空になるのか、船舶になるのかは分かりませんが、燃費が良くて大量輸送が見込めるということを考えると、今後は発展の可能性はありますね。
 ただ、水面ぎりぎりなので、波の高い外洋は無理でしょう。カスピ海、黒海など波が低い場所限定になりそうですね。
 ですので、使い方次第では面白い展開ができるように思います。日本だとどうかなぁ。琵琶湖とか瀬戸内海?ヤマト運輸とかが採用したら面白いかもしれませんね(^^)
 その際に必要な免許が飛行機なのか船舶なのか分かりませんが。 

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 <関連記事>
→意外と怖い!翼端渦が巻き起こす後方乱気流〜翼端渦と翼型の話その1
→最近トレンドのウイングレットについて〜翼端渦と翼型の話その2

こんなマイナーな機体なのにプラモデルがありました(^^)!


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コメント 9

(。・_・。)2k

翼から 水が出てるのなんでですか?

by (。・_・。)2k (2016-09-29 17:46) 

ワンモア

★(。・_・。)2kさま
こんばんは〜。動画ですが、これ、機首についているジェットエンジンから吹き上げられる噴流が水面を叩いているせいで、翼から水が出ているように見えているようですね(;^ω^) 飛行機というより、船舶かも・・・。
by ワンモア (2016-09-29 18:41) 

kinkin

さすがRevellですね。でも、あそこの型の精度の悪さには泣きました。
by kinkin (2016-09-29 19:18) 

Hide

これはカッコいい飛行機ですね〜
いや船ですね〜いや飛行機ですね。
豪快な飛行で驚き、とても大きく見えます。
by Hide (2016-09-29 19:48) 

johncomeback

地面効果翼機ですか、これも初めて知りました。
ワンモアさんのブログは勉強になるなぁ、
そして面白い(興味深い)です(^^)
by johncomeback (2016-09-29 20:24) 

タイド☆マン

そうなんです
エナメルは ムラになりにくいので好きです ☆

タミヤ塗料は パクトラタミヤの時代から使っています
アクリルは乾きが速くて ムラも出やすいの好きではありません
( 腕のせい ? (笑) )
by タイド☆マン (2016-09-29 22:05) 

ワンモア

★kinkin さま
 こんばんは〜。レベルのキットは何十年も買っていないのですが、あれから技術は向上したのかしら(^^)

★Hideさま
 海面スレスレを飛行するので、よけいに大きく感じるかもしれませんね(;^ω^)

★johncomebackさま
 ありがとうございます。飛行機の魅力をお伝えしたいと思ってなるべく分かりやすくを念頭においていますが・・・なかなか(;^ω^)
 たまに手を抜いたり、脱線もしますが何卒ご容赦を。

★タイド☆マンさま
 せっかちな私は、アクリル派です(笑)
by ワンモア (2016-09-29 23:01) 

caveruna

クロネコが海を渡る(笑)、是非ヤマトさんにやってほしい!
by caveruna (2016-09-30 14:33) 

ワンモア

★caverunaさま
こんにちは。瀬戸内海を疾走する
クロネコヤマトマークの地面効果翼機。見てみたいです(笑)
by ワンモア (2016-10-01 15:12) 

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