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腹ばいになって操縦!?座席姿勢でなくても飛行機は操縦できる?

 現在の飛行機の殆どが座席に座って操縦していますね。これを当たり前と思わずに、斬新なアイデアで設計した飛行機たちがいます。そのメリットとデメリットをご紹介。

コクピット.jpg
そういえば、乗り物といえば、飛行機に限らず、船舶から電車、
自動車、宇宙船までほとんどが座って操縦しますね。


 1903年ライト兄弟による初飛行の際には、腹ばいになって飛行していましたが、すぐに座席型になって、腹ばい型の形式は、ハンググライダーなどのスカイスポーツの世界だけになってしまいます。腹ばいは長時間だとくたびれてきますし、考えてみれば座る姿勢が一番楽ということもあります。

Départ_de_deltaplane.JPG
人間が腹ばいでぶら下がるかたちのハンググライダー。これ基本。


 しかし、第二次世界大戦下で戦闘機などの軍用機の研究が進んでくると、空気抵抗をいかに減らして速度を上げるかが重要な研究課題になってきて、パイロットの姿勢も研究されるようになってくるのです。
 というのも、視界を確保するためにどうしても風防が必要な航空機では、この風防自体が空気抵抗になるのです。一番良いのは風防がないミサイル型なのでしょうが、人間が操縦する以上、なかなかそうはいきません。

Cap 165 のコピー.jpg

 ドイツのアラドAr.234は機首にパイロットが乗り込む理想的なデザインでした。

Arado_234B_5a.jpg
世界発の実用ジェット爆撃機Ar.234
Ar234-33f.jpg
でも、乗り込むのがとても大変。脱出も大変そう。

 こういう研究が一番進んでいた国は、やはりドイツです(^^)。ジェット機やロケットなど他国を大いに引き離した技術大国であるドイツは、急降下爆撃機にも腹ばい型を採用してしまうのです。

◆ドイツの急降下ジェット爆撃機Hs132

 とある研究によると操縦士がうつぶせ状態の場合だと12Gまで耐えられるとの研究成果があったそうで。胴体内に操縦士がうつぶせになる方式の機体設計を採用し、原型機が製作されることになりました。
 要するに急降下爆撃などに人体にかかるGの負担、空気抵抗の減少などのメリットが見込めるということですね。こうして出来たのがヘンシェルHs132急降下ジェット爆撃機です。

hs132-4.jpg
こういうカタチで腹ばいになります。
Hs132_02.jpg
これ、よくみると分かりますけどアゴを乗せる台がついているのです。

 これの最大のデメリットはパイロットの首が疲れるということでした(笑)。まあ、そこは当時はまだ滞空時間が短いジェットエンジンなので、さほど苦にもならないだろうということみたいです。
 敗戦ぎりぎりの1945年春に原型機が完成しましたが、テスト目前で終戦、完成目前の3機と共にソ連に鹵獲され本国へと送られました。

◆まさにイタリアの奇抜デザイン、SM.93

 これに先立つ腹ばい操縦の飛行機がまだあるのですが、1943年に開発されたイタリアのサヴォイア・マルケッティ SM.93という機体。
SM.79.jpg
 
 これも急降下爆撃機ということで、急降下からの引き起こしにかかるGの負担を減らす目的で腹ばいになります。だけど、この機体のイタリアンなところは、後ろの銃手がそのまま普通の座席であること。うーん、なんか中途半端だし、この風防、かえって空気抵抗が増しているような・・・(;^ω^)


◆腹ばい操縦席は戦後のアメリカにも

 さて、腹ばいになって操縦するというアイデアはアメリカでもあり、ノースロップのXP-79という試験機が正にそれでした。
これは全翼機というコンセプトでデザインされた一連の飛行機たちで、ドイツではホルテン兄弟のデザインしたHo229が有名です。

sh 404.jpg
Ho.229 架空戦記シリーズ

 全てが巨大な翼一枚で出来ているという全翼機は、設計者たちを熱中させるものがあるようで、アメリカでもジャック・ノースロップたちが同様の研究開発を行っています。
1280px-Northrop_XP-79.jpg
XP-79 全翼型の小型高速迎撃機
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実はこんなに小さいのです。

 全部が翼であるというデザインには、操縦席が座席スタイルよりも腹ばいスタイルの方が合っていたのでしょうが、やはり首への負担がかかるということで、実験機のMX324から早くも顎当てがつけられています。


◆最新の戦闘機の座席はやや仰向けスタイルも


 さて、腹ばい型の航空機は、このように試験的にはいくつか出てきましたが実用化されたものはほぼ皆無です(HS132は実用化されたかもしれませんが)。
 現在では、高機動のGを体全体に分散させるよう、座席の角度を、30度リクライニングしたF-16スタイルなどがあります。腹ばいではなく、仰向けの方が身体への負担がまだ良いということですね。
 スカイスポーツや短時間の飛行なら腹ばいスタイルは鳥のような感じでいいなぁと思いますが、長時間飛行する場合は、やはり首が疲れてきます(;^ω^)

 飛行機が最大限にその性能を発揮するために、人間の居住性は二の次になった話でもありました。色々とチャレンジしたのが航空機開発なのですね。

<関連記事>
イタリア機の魅力について語りたい〜その2
 

 

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コメント 5

johncomeback

拙ブログへのコメントありがとうございます。
牛久大仏、初めて拝観しましたがホントにデカいですね。
2番目にデカいのが仙台にある「中山観音」だそうです。
by johncomeback (2016-11-07 13:04) 

ロートレー

鳥人間コンテストの滑空機はいずれも腹ばいスタイルですね
一番鳥になったような気持ちになれそうです。
旋回しながら下界を眺める気分は最高だろうな~と想像してしまいます(笑)
by ロートレー (2016-11-07 17:55) 

ワンモア

拙ブログへのコメントありがとうございます。
★johncomebackさま
 牛久大仏、なんかもう、笑っちゃうくらいデカイですよね(;^ω^)
 中山観音も大きいのですね。見てみないなぁ。

★ロートレーさま
 ハンググライダーがそんな感じでした。でも私は初心者なので、飛んだ瞬間にどうやって着陸するかばかり考えていました(笑)

by ワンモア (2016-11-07 18:13) 

bpd1teikichi_satoh

腹這いに成って操縦する戦闘機、どうしても操縦が辛そうですね!
by bpd1teikichi_satoh (2016-11-14 12:00) 

ワンモア

★bpd1teikichi_satohさま
 スカイスポーツみたいに短時間なら良いのですが・・・。
 
by ワンモア (2016-11-14 22:45) 

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