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超音速旅行の実現〜コンコルドがみた夢〜その1

 今日から数回に渡り、超音速旅客機、コンコルドについて記事にしたいと思います。

Concorde_on_Bristol.jpg
今でも根強い人気、コンコルド


◆音速突破の旅客機の夢

 飛行機なるものが登場して数十年。二度の世界大戦を通じて航空機は大きく進歩しましたが、特に力を入れていたのは限りない速度への追求でした。
 どれだけ早く飛ぶかということは、軍用機、特に戦闘機においては、重要な性能のバロメーターにもなっていたからです。
 強力な推進力の開発、空気抵抗の削減。これらの総合技術の組み合わせの結果が速度へと結びついていくのです。
 しかし、技術者たちの目の前には大きな壁が立ちはだかりました。それが通称「音の壁」、音速突破です。
飛行速度が音速に近づくにつれて生じる様々な問題を称して「音の壁」といいます。公式記録として初めて音の壁を突破したのは、1947年10月14日。チャック・イェーガーが操縦するベルX-1でした。

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ベルX-1


 以来、続々と音の壁は突破され、戦闘機の世界においては音速を超えるのが当たり前になりつつありました。そうすると、次に待望されるのは、民間機での音速飛行です。
 
 1950年代後半は、大型旅客機の相次ぐ就航に次いで「次はより早くだ!」ということで、各国が超音速の旅客機の開発競争に突入しました。
 イギリス、フランス、ソ連、アメリカなどが研究に、開発に勤しんでいましたが、1962年にイギリスとフランスが独自に行っていた開発を共同で行うことを決定。一気に実用化への目処をつけます。この間にも、世界各国の旅行会社から100機を超える注文が相次ぎ、時代はもはやマッハの旅行時代へかと思わせました。この当時の未来は明るかったのですね(;^ω^)

Concord_kohaku.jpg
日本航空にも3機導入が予定されていました(^ω^)


◆とっても怪しいライバルの出現。Tu-144

 1962年西側諸国にとんでもないニュースが飛び込んできます。東西冷戦のさなか、ソ連も超音速旅客機
を開発するとの発表でした。 
 原型が初飛行したのは1968年12月。これはライバルのコンコルドよりも2ヶ月早い飛行でした。その姿はコンコルドそっくり
!その外観などから「スパイによるコンコルドのコピー」とも呼ばれており、冷戦時代に繰り広げられた熾烈な情報戦が垣間見えるものとなっています・・・。
 ちなみにこのTu-144、性能でもコンコルドを凌駕しているのですが、致命的な墜落事故を2回起こして16機のみで運行停止となりました。旅客便としての運行はわずかに102便で終了と儚い運命に終わります。

1024px-Tu-144_Concorde.jpg
そっくりすぎる両者

◆問題が出てきて暗雲たなびく。

 コンコルドの初飛行はTu-144から遅れることわずか2ヶ月。開発は順調に進んでいたのですが、
1972年あたりから、いよいよ具体的な運行を検討するためのテストを行う段階において、問題が発生してきました。

◎ソニックブームの悪影響

 ソニックブームとは、音速を突破した時に発生する空気の衝撃波です。当初は、高高度を飛行すれば衝撃波は減衰し、地表でソニックブームは発生しないと楽観視されていたのですが、実際は地上でも強力なソニックブームが観測され、減衰度は従来の予想よりもはるかに小さいことが判明してしまいます。
 この結果が、アメリカ航空当局から本土の超音速飛行の全面禁止の通達をくらうことになります。広大なアメリカの運用を目論んでいたコンコルドでしたが、この禁止措置がその後の運命を大きく変えることになります。

1024px-Sonic_boom.svg.jpg


 技術的には充分可能な超音速旅客機や超音速輸送機なんですが、この問題が今でも実用化を妨げる要因となっているのです。 コンコルドは洋上の高々度でのみ超音速飛行が許されていましたが、海洋を航海中の客船上でもソニックブームが観測されています。

 こちらがその動画。まるで爆発したかのような衝撃音が凄いですね。

 
55秒あたりから。音量注意


◎オイルショックによる燃料費の高騰、高い旅費、限定された空港
 さらには、オイルショックの燃料費高騰などの問題が出てきて、多くの航空会社が注文をキャンセルする事態になります。
 通常よりも長い滑走路が必要とされることも問題視されました。また乗員は100名と少なく、運賃が他機種のファーストクラスの1.5倍とかなりの高額であったことも商業的にも難しかったようです。この時代は、大衆化でしたので、高級志向は時代が早かったかもしれません。 

 最終的には開発元のイギリス・フランス向けの量産16+原型4=20機程度になり、1976年から運用が開始されたのですが、商業的には失敗に終わってしまいます。なにせ、開発当初は「250機で採算ラインに乗る」とも言われていましたので、1/10以下ではなんとも・・・ですね。

1024px-Concorde_Ramp.jpg
エアインテーク

 それでも、何と言っても他社に比べて約1/2の時間で飛行する世界で唯一の超音速旅客機、コンコルドは、人気がありました。
 なにせ、現代でも7時間はかかるニューヨーク〜ロンドンのフライトですが、コンコルドではその半分の3.5時間しかかかりません。その気になれば日帰りの旅行ができるのです。
 これは世界で唯一の最大のメリットです。しかも運行する高度は通常の倍の約1万8千メートル。通常の旅行機で見る空とは違い、深い紫色の空はとても神秘的だったそうです。

2001concordewingduxfordJM.jpg
ターボジェットエンジンのノズル。軍用機のようですね。

 ということで、商業的には大失敗ともいえるコンコルドでしたが、その希少価値からフラグシップ機(そのメーカーの総力をあげて製造した製品)として活躍します。
 1990年には21世紀に入っても継続できるように最新のアビオニクスの導入など様々な近代化改修を行うことも検討されていました。
1024px-Concorde_G-BBDG_Cabin.jpg
狭い客室ですが、サービスはファーストクラス以上だったそうです。

 コンコルドは就航以来、25年間一度も事故をおこすことなく、世界でも安全な旅客機としても知られるようになってきました。
 しかし、コンコルドの終焉は突然訪れます。(続く)
1024px-Concorde.planview.arp.jpg

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コメント 10

johncomeback

コンコルドは懐かしいなぁ~、一度は乗ってみたかったです。
by johncomeback (2016-12-18 19:29) 

ワンモア

★johncomebackさま?
 あれ、画像代えました?
by ワンモア (2016-12-18 20:47) 

hana2016

コンコルドは一時盛んに耳にしていたものの・・。
事故が起きたんでしたっけ?これは続きが気になります。早く書いてください^^
by hana2016 (2016-12-18 21:38) 

caveruna

コンコルド、やっぱ別格!
好きです!!

そうそう、、話変わるんですが、
週末のタモリ倶楽部見ました?
なんかマイナーなプラモメーカー
特集でしたよ!
by caveruna (2016-12-18 21:41) 

なんだかなぁ〜!! 横 濱男

今でも、コンコルドは格好いいですね。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2016-12-18 21:56) 

tsumi

コンコルドは詳しくない私も知ってますよ~^^
独特な形状をしていますよね!素敵です。
普通の飛行機をワシとかタカとするならば、コンコルドはツルとかハクチョウとか首のながーい種類のイメージがあります。
by tsumi (2016-12-19 00:48) 

yamatonosuke

子供のころに初めて見たときの衝撃を今でも覚えてます。
大人になったら乗りたいと思ってたんですがね…
by yamatonosuke (2016-12-19 00:50) 

ワンモア

★hana2016 さま
 こんばんは~。続き書いてます(笑)飛んでいないのは寂しいですよね。

★caveruna さま
 タモリ倶楽部でマイナーなプラモメーカーですか?うわぁ~気になる(笑)

★なんだかなぁ〜!! 横 濱男 さま
 超音速にはこのデザインが良いみたいですね(^^)

★tsumi さま
 私もこのデザイン好きです。機首がスラリと長いのは訳があるので、それもまた記事にしますね(^^)

★yamatonosuke さま
 残念ですよね〜。でも超音速旅客機、実は・・・(^^)

by ワンモア (2016-12-19 02:22) 

bpd1teikichi_satoh

コンコルドと言えば、超音速飛行の為にソニックブームの凄さと燃費の悪さが目立ちますが、離着陸の際視界を良好にする為に機首を下に動かし、超音速飛行の際は空気抵抗を減らす為に機首を真っ直ぐさせる機構はとてもユニークでした。
by bpd1teikichi_satoh (2016-12-19 15:46) 

ワンモア

★bpd1teikichi_satoh さま
 そうですよね。あの機首下げがコンコルドの特徴のように思います(^^)
by ワンモア (2016-12-23 00:24) 

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