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異色だが高性能!双発レシプロの究極のスタイル?Do335

 前記事で、小学生の頃の私に衝撃的なインパクトを与えたプラモデルを紹介しましたが、今回はその飛行機について記事にしてみます。
Do335.jpg
戦争には間に合わなかったドイツの戦闘爆撃機。ドルニエDo335


◆異色なデザインだが至極まっとうなコンセプト。

 飛行機をデザインする時に重要なのは、空気抵抗です。止まっていたり、ゆっくりと進んでいるうちはさほど気にならない風も、速度が段々と上がってくると大きな抵抗を感じるようになります。
 いるのか、いないのか、目立たない人のことを「空気のようだ」なんて比喩していますが、飛行機の世界ではとんでもない話で、空気は物理的な力をもった重要な存在であるのです。
 試しに窓を開けて高速道路で走ってみると分かるのですが、高速道路で感じる風の抵抗と、普通の道路を走っている時に感じる風の抵抗が全然違うように、飛行機が高速度で飛行する時に空気抵抗をいかに減らすかは高速戦闘機の開発には重要なファクターになります。

 エンジンが1つの単発機と、エンジンが2つの双発機では正面のシルエット(
前面投影面積)はこんなにも違います。

Cap 313.jpg
前面投影面積
が大幅に増えているのが分かりますね。


 エンジンが2つあることは、馬力を稼ぐメリットがあるのですが、上図のように正面からの空気抵抗、
前面投影面積が増えるというデメリットがあります。
 こんな二律背反にも似た課題を克服するにはどうするか。ドイツのドルニエ社が考えたアイデアはとてもユニークなものでした。
 それは、正面は単発機でもエンジンは双発というエンジンの配列です。

Cap 315.jpg
これは”タンデム型”とも”串刺し型配列”と言われています。


 戦闘機としては非常に珍しいスタイルで、第二次世界大戦でこのデザインを採用したのはこのDo335だけです。はたから見ると奇抜以外の何者でもありませんが、ドルニエ社としては飛行艇時代からよく取り入れていたエンジンデザインなのです。

ドルニエ.jpg
ドルニエ Do R 前後にプロペラ付いていますね。


 当時のエンジンは非力でしたので、双発だけでなく、3発、4発、多発機が沢山空を飛んでいました。エンジンの馬力が向上するにつれ、多発機は廃れていきますが、このノウハウをもう一度蘇らせようという発想だったのかもしれません。ですので、前面投影面積を押さえて大馬力にした至極まっとうなコンセプトデザインなのです。

 この配置ですと、胴体内に全てのエンジンが搭載されている分、通常の双発形式よりも空力、摩擦抵抗に優れ、加速や速度性能も優れることになります。
 また機首と機尾でエンジンの回転方向が異なるためにトルクを打ち消し合って静的状態を作り出していますのでトルクによる偏向がないのです(通常は右回転によるトルクが発生する)。

Cap 314.jpg

 
 その成果はというと当時の単発戦闘機以上の速度である最高速度763 km/h (6,400m)をマークしました。このDo335は、 通常の双発機と異なり、エンジンが一基停止状態でも推力の偏向が起こらず、後部エンジンのみでも560km/hで軽快に飛行するという高性能ぶり。
 試験飛行の記録によれば、速度はもちろん、加速性、旋回の性能が高く、双発機にしては信じられないほどの運動性を示したとされています。 

Do335エンジン.jpg
前後に配列されたDB603Aエンジン

 あわせて主翼と上下に1枚ずつ配置された垂直尾翼というシルエットから「プファイル(矢)」と命名されましたが、現場の将兵たちからは、オオアリクイと呼ばれていました。

 

オオアリクイ.jpg
似てる!(^^)

 脱出時には、後部のプロペラに確実に巻き込まれますので、プロペラと垂直尾翼を吹き飛ばす構造になっており、圧縮空気式の射出座席でパイロットを脱出させます。

 初飛行は1943年の10月でしたが、連合国による大規模な爆撃のため、生産が思うように進まず、生産数は40機に満たなかったとされています。複座の練習機型、夜間戦闘機型、重装備の駆逐機型、計画では、後部をジェットエンジンにしたDo435、本機を更に2機つなげたDo635などが計画されていました。

 当時の最新鋭ではあるが未成熟であるジェットエンジンに頼らず、既存の技術を組み合わせてレシプロ戦闘機の可能性を最高に引き上げドルニエDo335。異色ではありますが正に究極の双発機であると思います。ドイツの工業技術の底力を見せつけた戦闘機ではなかったではないでしょうか。

<諸元>

乗員:1名    
全長:13.85 m    
全幅:13.80 m    
全高:5 m    
翼面積:38.5 m2    
空虚重量:7,400 kg     最大離陸重量: 9,600 kg    
エンジン:ダイムラー・ベンツDB 603A 液冷倒立V型12気筒 × 2 1750馬力    
航続距離 2,150 km 
速度      最高速度:763 km/h (6,400m)    
実用上昇限度:11,400 m 
武装      30mmMK 103 機関砲 × 1     20mmMG 151 機関砲 × 2     爆弾 1,000 kg


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コメント 5

hana2017

こんばんは。
>現場の将兵たちからは、オオアリクイと呼ばれていました。
まさにですね!
一日中寒さに震えていた昨日。
今朝起きたら、白い雪のあとが、通りで寒かったはずだと!
一転して今日は、快晴の空が広がり…青空に、白い飛行機雲が鮮やかで、爽やかで。よっぱり飛行機って良いなと思いました^^
by hana2017 (2017-02-19 22:17) 

Cedar

必要な性能がデザインを決めるって、ハードウエアの正しい姿ですね。最近の鉄道車両のポンチキなデザインを見るにつけ、つくずくそう思います。
飛行機の魅力はそういうことかと・・・
by Cedar (2017-02-20 14:13) 

たくや

面白い仕組みなんですね~
胴体だけまわりそう(笑)
by たくや (2017-02-20 16:00) 

caveruna

先週木曜日から連日酔っ払いの為(苦笑)
訪問が遅れております。。。。
by caveruna (2017-02-20 17:53) 

ワンモア

★hana2017 さま
 最近、朝がちょっと暖かくなった感じですね(^^)
 梅も咲き始めてちょっとワクワクしています。
 現場のニックネームの方が私は好きです(笑)
★Cedarさま
 おぉ、ありがとうございます。飛行機は他のデザインに較べて、
 デザインの幅が狭いのですがそこが魅力でもあるのかなと思う次第です。

★たくやさま
 面白いですよね。これで、普通の単発機よりも早いのですから驚きです。正に双発機の究極の姿(^^)

★caverunaさま
 最近、飲ん兵衛さんですね(^^)。たまにはよろしいのではないでしょうか(笑)
by ワンモア (2017-02-21 05:43) 

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