◆地図とコンパスと星と風を頼りにした昔のパイロットたち
今の時代はGPSとかで地球上のどこに自分がいるかがひと目で分かるような便利な時代になりましたが、第二次世界大戦中の時代は、自分の位置を測定するのに苦労をしました。
飛行中の搭乗員たちは、地図があっても自分が今どこを飛んでいるかを把握するにはかなりの技術を要していたのです。
◆目印まで降下して確認も〜地文航法
パイロットが海岸線や鉄道路線などの地上の目標物を見ながら飛行する方法で、もっとも初歩的な航法です。陸軍機などは、低高度まで下りて駅名まで見たといいますから目が良いですよね。この航法を行うには、専用の航空用地図が必要です。
こちらのサイトでは、無料で世界の航空地図を見ることができますよ(地文航法用ではありません)→https://skyvector.com/
◆すべての航法の基本〜推測航法
地上の上を飛んでいる時は上記のように目印になるものがあるから良いのですが、海の上では大変です。どこを見渡しても海ばかり。日本では通線無線は殆ど役に立ちませんでしたし、敵に傍受されると自分の位置を教えてしまうことにも。
こういう場合は推測航法を使います。
すでに分かっている地点からの方位と距離を計算し,これに風向,風速を考慮して,正しいコースへの機首をどれだけ変えればよいか、どれだけ飛べば目的地に到達するかを推測して飛ぶ方法なのです。
原理ですが、航空機と気流(風)との相対運動の方向(機首方向,風向)と大きさ(機速,風速)を知ることによって位置を求めるのですが、地図とにらめっこしながら、これをしないといけないのでとても大変な作業になります。
推測航法は常に風に流される分の誤差の計算・補正をする必要があるのです。
専用の搭乗員がいれば良いのですが、零戦のパイロットとかですと、全部一人でこなさないといけないのでこれは重労働・・・・。操縦が得意なだけでは務まらない仕事なんですね。もし、計算を間違えたら燃料が尽きて海の藻屑。正に命がけの計算・・・。
よく九七式艦攻などの三人乗りなどの軍用機の尾翼に細い線が描かれているのは、この推測航法のためのものです。これは「偏流測定線」といいます。
偏流を測定するには、海上の浮遊物の動きを測定することで分かります。浮遊物が無い場合は目印になるものを落として、その真上を通過し、その後、どの線の延長線上に浮遊物が現れるかで流され具合を測るのです。
航行操作を担当する人の席で交差するように描かれていますので模型工作の際には参考に。
これ以外に、電波の方向を測定して自機の位置を把握する電波航法、レーダーを放射して周囲の地文を確認し自機の位置を測定するレーダー航法などがあります。
◆敵地から脱出せよ!鉛筆に隠された地図の秘密
第二次大戦の末期、当時のイギリスはアメリカと共同して連日のようにドイツ本土を爆撃していました。この作戦に参加したイギリス空軍のパイロットたちは一本の鉛筆を携行していました。そして彼らはこの一本の鉛筆に自らの生命を託して出撃して行ったのです。
というのも、この鉛筆はただの鉛筆ではなく、その中に磁石と地図が隠された、いわばスパイ鉛筆だったからです。
彼らが不運にも撃墜されたり不時着したような場合には、彼らはまず、一番上にはめ込まれた消しゴムを抜き、その下の小さな磁石と、軸の上部をくり抜いてつくられた空洞の中に小さく折りたたんだ地図を取り出します。地図は三種類あり、ドイツ全図、オランダ・ベルギー方面への地図、そして中立国であるスイスへの脱出経路が詳しく書かれた地図です。
そして、鉛筆の中にどの地図が入っているかは、鉛筆に刻印されたマークによって分かるようになっていたそうです。まさに敵地に放り出されたパイロットにとっては、この地図と磁石こそが生還するための命綱だったわけですね。
このスパイ鉛筆が製作された場所はイギリスのケズィックという小さな町のカンバーランド鉛筆会社というメーカーでした。秘密保持を誓約した一部の従業員を動員して、秘密裡にこの鉛筆を製造しました。
←ドイツ西部からオランダ・ベルギー方面への脱出ルートを示した地図。この地図で幾名ものパイロットが救われたことでしょうか。
鉛筆に地図やコンパスを仕込むなんて、さすが007の国イギリスらしいですね。
参考文献『文房具の研究―万年筆と鉛筆』 (中公文庫ビジュアル版)より
地図を読む者は戦場を支配できるということで、昔の軍師たちや王にとっては地図というものはとても重要なものでした。
また、数々の探検や冒険にも地図は命を預ける大切なものであったと思います。
最近はカーナビやスマホのGPSなどで、地図も読まなくなったような気がします。本日は「地図の日」なのでちょっと思いを馳せながら地図を眺めるのも楽しいものかもしれませんね。
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しかしホントにパイロットの方々はすごいですね!地上を肉眼で見て位置をはかる…風と速度もとに推測して飛ぶ…どちらにしても、私には到底できそうな業ではありません…(そりゃそうか)
それと、鉛筆はびっくりです!実際にこういうものが存在するとは…映画のようなお話ですね…!いや映画よりもすごいかもしれません。。命を救う鉛筆…すごいかっこいいです!
by tsumi (2017-04-19 13:49)
毎度のことですが「勉強になるなあ~!」と感心しまくり。
by Cedar (2017-04-19 16:50)
こんばんは。
56歳の年齢で・・・今と違って当時は隠居する年齢で、国内の全てを足で周って測量し続けた・・・伊能忠敬。その苦労は計り知れないものであったと思います。
誰もが普通に地図が読める、ササッと地図を書いてしまうって日本では普通と思いがちながら、世界でも希みたいですね。
by hana2017 (2017-04-19 22:21)
スパイ鉛筆・・・なんと素敵なものですね。
子供の頃西武園ゆうえんちの土産物売り場に鉛筆の頭に方位磁石が付いたものがあって、どうしても欲しかったことを今思い出しました。
by 駅員3 (2017-04-20 07:00)
勉強になりました。ベテランパイロットになる為には、相当な訓練と期間が必要なんだなぁ。
海の藻くずとなってしまったパイロットも相当数いたのだろうな。。。
優秀なパイロットを消耗品のように扱った歴史が思い出されました。
by JR浜松 (2017-04-20 07:10)
カーナビが無かった頃に妻と車で出かけると、
妻が地図を見てナビゲーターだったんですが、
女性は地図を読めないんですよね。よく喧嘩に
なりました。カーナビができて車中での喧嘩が
激減しました(*´∇`*)
by johncomeback (2017-04-20 08:41)
最近帰宅する時刻に家の上空を飛んでいる旅客機、
えらい低く見えるんですよ。気のせいかもしれないけど。
フライトレーダーで見ると、高度はいたっていつもと同じなんだけど、
なんでかなあと思って(笑)
by caveruna (2017-04-20 14:21)
へー、地図の日というのがあるのでやすね。
伊能忠敬の銅像、どこかで観たような・・・・(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-04-20 20:30)
★ tsumiさま
私も、この鉛筆欲しい〜と思い探しましたが販売しておらずでした(^^)流石、ジェームズ・ボンドの国ですよね。
★ Cedarさま
ありがとうございます。マニアックな話ばかりで恐縮です。
★ hana2017さま
なんかそうみたいですね。地図がかけるって特別みたいな。
★ 駅員3さま
方位磁石って子供心に妙にそそるものがありました。やたら方位を見て冒険ごっこをしていたなぁ(^^)
★ JR浜松さま
零戦は単機で洋上の上を何時間も飛行できてしまう飛行機なので、戦闘終了後にはぐれたり帰還できなかった人も多いと聞いています(´・ω・`)。無事に帰還すること自体が立派な技術なんですよね。
★ johncomebackさま
うちの嫁もそうですが、いきなり「そこ左!」とか叫ぶんですよね。あと地図帳がなぜか激しく回転するんです。真っ直ぐ走っているにも関わらず(笑)
★ caverunaさま
あー、多分、上昇気流が発生して気圧が低いからだと思います。
飛行機の高度は地上からの絶対高度ではなくて、気圧計で高度を指して飛んでいるので。ただ、そういう日は全部の飛行機の高度が下がっているのでぶつかる心配はないのでご安心を(^^)
★ ぼんぼちぼちぼちさま
どうもです。私も同じことを思っておりやした。TVですかね。
by ワンモア (2017-04-20 22:30)
気圧計だったのか!!!
にゃーるほど♪
これまた勉強になりました^^
by caveruna (2017-04-21 13:55)