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異色!エンジンを持たない迎撃戦闘機BV40

 ちょっと変わった飛行機といえば、ブローム・ウント・フォス社のリヒャルト・フォークト博士の非対称機が筆頭でしょう。本ブログでも度々取り上げております。
BlohmVoss.jpg

目の錯覚を起こしそう(;^ω^)

→異色のデザインにとりつかれた技術者。リヒャルト・フォークト

 日本にも10年ほど技術指導にきており、川崎航空機の土井武夫(三式戦「飛燕」の設計者)などの指導にもあたっていた立派な技師なのですが、ある時を境に、非対称機の開発にこだわり続けます。
 このフォークト技師が所属していた当時の会社がブローム・ウント・フォス社で、なんとエンジンを搭載しない迎撃戦闘機というものを開発します(フォークト博士が担当したのかは不明)。いわば戦闘グライダー機。なんでこんな変わったコンセプトの戦闘機を作ったのでしょう?今回はその話を。
bv40_01.JPG

見た目は普通のグライダー。でも練習機ではありません。

できるだけ小さく!編み出した策がエンジンなしの戦闘機!

 アメリカ軍のB-17などによる連合軍の昼間爆撃が本格的になってきた1943年。B-17の密集編隊によるコンバットボックス(※)を攻撃するドイツ戦闘機隊の被害も甚大になってきます。
 この濃密で強力な防御弾幕はBf109やFw190たちがくぐり抜けるには非常に困難なものでした。この対空射撃をくぐり抜けるにはどうすればいいか。
 首脳部や技術者たちからは、数々のアイデアが生み出されることになります。

752px-B-17F_formation_over_Schweinfurt,_Germany,_August_17,_1943.jpg
※コンバットボックスによるB-17の密集編隊
各機がそれぞれの僚機の死角を補いつつ、
防御火力を集中することにより、
敵の迎撃機からの生存率を向上させることを目的とした。


案その1〜弾幕にさらされる時間を少なくする高速度の戦闘機を開発する。
     →Me262ジェット戦闘機やMe163ロケット戦闘機など。

案その2〜弾幕の射程外から攻撃する。
     →初の実用空対空ミサイルR4Mの開発へ。

 これらは、最新技術を開発する必要があるので、技術者たちの面目躍如といったところですが、これとは別のまったく新しい、アイデアが出されました。

 それは、「迎撃機の面積を小さくして当たりにくくすればいいじゃん」というもの・・・。そのためには、
前面の面積を広くしている最大の要因であるエンジンを取り外してグライダーにすればいいということです。これだと新しい技術は必要ありませんし、実用化も早いです。
blohm_voss_bv_40.jpg
 この発案に設計を始めたのが例のブローム・ウント・フォス社。この機体はBV40と命名されます。そして、更に面積を小さくするために操縦者もうつ伏せに配置。車輪は格納すると大きくなるので、落下式にして、更には木製部品を多様するという徹底した資源節約をします。
 但し、日本と違って貴重なパイロット人材を守るため操縦席だけは徹底した装甲化をはかります。この点は日本とは違いますね。武装は30mm機関砲が2門。
なんとこんな構造に。

1821949_orig .JPGちっちゃ!
どれ位小さくなったか戦闘機の中でも小さいBf109と比較してみましょう。
BV40とBf109の比較.JPG
同スケールです(笑)まじか。BV40比較.JPG
正面でこんな感じ。これは確かに当てにくいかも。

滑空グライダー戦闘機の攻撃方法とは?

 さて、エンジンのないグライダー戦闘機、ブローム・ウント・フォスBV40ですが、どうやって戦うのでしょうか?とても気になるところですが、彼らが考案した策はこんな感じでした。
 まず、迎撃にあたって、このBV40はB戦闘機のf109やFw190に曳航され一緒に離陸します。その後、敵爆撃編隊の正面上空で切り離され、敵編隊に向かって急降下しながら一撃を加えそのまま離脱、滑空しながら基地へ戻るという戦法です。

BV40_05.JPG
これに乗って戦う身にもなって欲しいところ・・・。
切羽詰まった当時の状況がうかがい知れます。

 この時の最大降下速度は約900km/hまで耐えられるといいますから、なかなかの強度。
曳航速度でも555km/h出るのでグライダーとはいえ、立派な速度を持っています。
 しかし、攻撃は一度のみ。その後は急降下して戦場から離脱し、滑空して基地へ帰還するという段取りですが、帰還するまでの間はただ滑空しているだけだからそこを狙われたらひとたまりもありません・・・。

 実際、この後に投入されたMe163コメートなども2分間しか燃料がないため、帰投する際には大抵は滑空で帰還するのですが、この状態を狙い撃ちされています。もし実用化されても同じように滑空状態を狙われた可能性は高かったと思います。
 さて、試験機が実験されている最中に、搭載する30mm機関砲の能力不足や、対空弾幕の射程外から攻撃できるR4M空対空ロケット弾の完成などにより、当機開発に対する熱意が薄れてしまったため、少数の 原型機が製作されただけで実戦配備には至りませんでした。試験機も含めて総生産機数は7機に過ぎません。単座滑空戦闘機という、他国でも例のない戦闘機になりました。
bv40_v1.JPG

参考サイトさま https://www.aviarmor.net/aww2/glider/bv40.htm

なんと模型化もされてます。流石、人気のあるドイツ機・・・こんなものまで模型化するとは。


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コメント 8

(。・_・。)2k

後ろにも機銃据えれば
追っかけられても大丈夫だったかも
撃つとほんのちょっぴり加速したりして(笑)

by (。・_・。)2k (2017-06-30 14:31) 

caveruna

一撃だけでいいって言っても、
うつぶせで、帰りに撃墜されて・・・やだわぁ~(苦笑)
by caveruna (2017-06-30 15:21) 

いっぷく

こうした戦闘機を見ると映画『風立ちぬ』を
思い出します。
by いっぷく (2017-06-30 19:30) 

johncomeback

旅先にて押し逃げですm(._.)m
by johncomeback (2017-06-30 19:35) 

ロートレー

滑空戦闘機
防弾性能を強化したのでこんなに頭でっかちになっちゃったんですね^^
by ロートレー (2017-06-30 20:24) 

ワンモア

☆by (。・_・。)2k さま
 こんばんは〜。ロケットを付けた方がいいかも(^^)
☆caverunaさま
 乗せられるパイロット嫌ですよね(;^ω^)
☆いっぷくさま
 風立ちぬは賛否別れるアニメでしたなぁ。
☆johncomebackさま
 楽しんでますか(^^)
☆ロートレーさま
 そうですよね。意外と頭でっかちなのでびっくりでした。いや、むしろ絞ったのかな?

by ワンモア (2017-07-01 00:10) 

bpd1teikichi_satoh

BV-40滑空迎撃戦闘機かなり無理な飛行機ですね。
by bpd1teikichi_satoh (2017-07-02 09:59) 

ワンモア

☆ bpd1teikichi_satohさま
 こんにちは〜。こういうのを実際に作ってしまうのが凄いですよね(;^ω^)
by ワンモア (2017-07-02 10:58) 

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