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アメリカの珍妙機、YFM-1エアラクーダ

 前回は奇抜ながらも実戦に投入されたボールトンポール・デファイアントという機体を紹介しました。駄作機の評価を付けられた割に名前だけは異常にカッコイイ、ボールトンポール・デファイアント(挑戦的なの意)。
 その駄作機つながりで、アメリカのYFM-1エアラクーダという試作機もご紹介。

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YFM-1エアラクーダ

重爆撃機を護衛する目的の双発戦闘機

 戦闘機のエンジンがまだ1,000馬力前後だった時代。長距離飛行ができて重武装。しかも速度も早いという戦闘機を作るには一つのエンジンでは心ともないものがありました。
 そこで、各国はエンジンを2つにして馬力と速度を稼ごうとします。余力が出来れば、その分燃料も積めて航続距離も大幅アップ。または武装を強化して重戦闘機も作れます。当時ブームになった双発戦闘機万能論です。
 しかし、「一
を追うものは二兎も得ず」の例え通り、万能戦闘機を作ろうとして、凡庸なる駄作機、失敗機を各国では量産してしまいます。
 ドイツではBf110、日本では 二式複戦「屠龍」、フランスのポテ631、イギリスのブリストルボーファイターなどが有名ですね。ま、彼らは昼間の戦闘機としては駄作機の烙印を押されてしまいますが、夜間戦闘機や爆撃機専門の攻撃などで活路を開くことになりますので、要は使い道、運用の仕方なのですが。

Untitled.jpg
(左上)十三試双発陸上戦闘機)/(右上)ポテ631
(中)Bf110/(左下)P-38/(右下)屠龍


 そんな各国が夢を見て開発のしのぎを削る中、工業大国アメリカもやらかしてしまいます  コンセプトは「重爆撃機を護衛できる長距離飛行のできる戦闘機」。当時開発中だったボーイングB-17を護衛する目的で仕様書を各メーカーに打診します。
 開発しちゃったのは、当時できたてホヤホヤのベル社。後に有人飛行の音速突破で有名なX-1を開発した会社です。自社初の戦闘機開発ということで革新的なアイデアを盛り込みます。

 双発のエンジンは後ろ向きにして推進式に配置。前の方になんと、銃手が乗り込んで37mm機関砲を装備します。更には胴体の中に小型爆弾を装備。これは地上攻撃用ではなく、敵機の上空から投下するという代物。更に胴体側面にも銃座が。乗員はなんと5名。えーっと開発しているのは戦闘機ですよね(*^^*)
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 結果ですが、予想通り、戦闘機のくせに宙返りもスピンロールも出来ません。頼みの速度も護衛するB-17よりも遅いという結果に。結局13機も製造するのですが、あえなくスクラップ処分の憂き目に遭うことに・・・。
 
YFM-1_02.jpg
普通ならエンジンの来る所に銃座と人員を用意
旋回機銃でもなさそうなのに人が乗る必要があるのか疑問。

 個人的には面白いアイデアだなと思うのですが、エンジンがもっと高出力で対地上攻撃機専用機なら十分使えたかもしれませんね。

名称未設定 1.jpg
プラモデルは人気のようです。

牽引式と推進式のメリット・デメリット

 さて、プロペラのエンジンの場合、実は牽引式か、推進式かに分かれます。とはいえ、現代は殆どが牽引式なんですけど。
推進式と牽引式.jpg
左が牽引式 右が推進式
 
 推進式は第一次世界大戦頃の複葉機などにはよく見られるスタイルでした。エンジンが後ろにあるため、何より視界が良いので偵察任務には最適です。また当時はプロペラ同調装置が開発されていませんでしたので、機銃がプロペラに遮られなくて済むという利点もありました。
 また、機首に余裕ができますので重武装もしやすくなります。日本の「震電」はB-29対策のためにこのスタイルをとってます。
Royal_Aircraft_Factory_FE2 .jpg
 WWⅠのRAF F.E.2という複座式推進型戦闘機。前席が偵察員兼銃手席になってます。後ろから敵機が来たら、このように座席を立ってプロペラを避けて操作します。命綱なしですから危険です。

 デメリットは、エンジンが後部に来ますので冷却に問題が生じること。牽引式の場合は、プロペラ後流に冷却の空気取り入れ口がありますので効率よく吸入できますが、推進式の場合は、それがないためより大きな空気取り入れ口が必要になります。空冷エンジンの場合はもっと大変です。推進式にした場合で常に悩まされる問題です。
エアラクーダの場合もこの冷却不足問題が最後までつきまといました。
 また、脱出の際にプロペラに巻き込まれるということも懸念されます。これは射出座席があれば良いのですが、当時は開発されていませんでしたので、爆薬でプロペラを吹き飛ばすということで対策を立てました。
 
YFM-1_03.jpg
もうサイズは爆撃機ですね

YFM-1エアラクーダ スペック
初飛行1937年9月
全長: 14.34 m    
全幅: 21.34 m    
全高: 5.94 m    
翼面積:63.7 m2    
全備重量: 8,607 kg    
乗員 5名
エンジン:アリソン V-1710-23 液冷12気筒 1,150 hp ×2    
最大速度: 431 km/h    
実用上限高度:9,296 m    
航続距離: 1,513 km    
武装         爆弾140 kg ×2         37mm機関砲 ×2         7.62mm機銃 ×4    

名称未設定 2.jpg

<今日の一枚>
 千葉県佐倉市にあるユーカリが丘団地を訪ねました。不動産の山万が開発しているニュータウンでなんと自社で電車まで自社開発しています。都市計画の立案、整備・運営まで民間会社主導で行われています。詳細は後日!
 
ユーカリが丘.jpg
全4キロくらいの路線で全線200円です。
ユーカリが丘線.jpg
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来たよ(24)  コメント(6)  [編集]
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コメント 6

ys_oota

エンジニアにありがちですね。思いついた時は最高のアイディアのように思うのですが、実際試してみたら肝心の前提が抜け落ちていたという。^^;
by ys_oota (2017-08-27 01:18) 

JR浜松

失敗は成功の元となったのでしょうか。(駄作機の事です;)
ユーカリの自社製列車、なんかバブル時代のような構想ですね。
by JR浜松 (2017-08-27 05:34) 

johncomeback

5人乗りの戦闘機なんてあったのですね。
爆撃機にしたらどうだったんだでしょう?
by johncomeback (2017-08-27 13:45) 

ワンモア

☆ys_ootaさま
 こんにちは〜。ドイツもそうですが勝つことよりも、目の前の技術の可能性を広げることに夢中になるのは科学者や技術者の性なのでしょうか・・・(;^ω^)

☆JR浜松さま
 ユーカリが丘は土地開発や生活のインフラなどをすべて民間会社主導で行っているので各地の自治体が見学に来るそうなんです。今も発展していてリアル・都市開発ゲームのようです(^^)

☆johncomebackさま
 ホントですよね(;^ω^) その後、この機体が注目されることはなかったようですが、ベル社では固定翼機ではあまり成果を出していないようです。
by ワンモア (2017-08-27 15:27) 

caveruna

なんか観光用にしたら面白そうな飛行機ですね(笑)
by caveruna (2017-08-28 14:33) 

ワンモア

☆caverunasaさま
 この頃ってコンピュータが発達していない時代なので、シミュレーションもできなくて試行錯誤の繰り返しだったんですよね。ある意味、面白い時代でもあったと思います(^^)
by ワンモア (2017-08-28 20:07) 

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