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アパッチとかインベーダーと呼ばれたマスタング。A-36

 ガンダム世代のちょっと前の昔の少年たちの知っている戦闘機と言えば、ゼロ戦、ハヤブサ、メッサーシュミット(機番は知らない)、グラマン(機番は知らない^^)、スピットファイアー(ファイアではなく炎のファイアーで覚える)という感じですよね。それにマンガの『紫電改のタカ』の紫電改。そして、一番強いと言われて賛否両論のあるムスタング(当時はマスタングとは言わない)といったところでしょうか。零戦や隼ではなくゼロとかハヤブサと漢字ではないところがミソでした(^^)。
 その誰もが知っているP-51マスタングですが、実はA-36という機番が与えられて、公式愛称もアパッチとかインベーダーと呼ばれていたのです。今回はそんな話です。
昔の箱絵.jpg
懐かしい昔のプラモデルの箱絵。ムスタングですよね。


戦闘機の予算がなくなったので、攻撃機として誕生したA-36

 他社と競合しないで製作ができる観測機や練習機などを製作していたアメリカの小さな航空機製造メーカー・ノースアメリカン社は、戦争が始まるとイギリスのために戦闘機のライセンス生産を依頼されます。当時のアメリカではカーチスP-40という、同時代の他国の戦闘機と較べてもお世辞にも優秀とはいえない機体しかありませんでした。ただ、生産性の良さと実用的というのがウリだったのです。
P-40.jpg
平凡だが堅実。カーチスP-40ウォーホーク
アリソンV-1710エンジンは約1,300馬力


 いまさら他社製の平凡なP-40を生産すんなんてと、ノースアメリカン社のエドガー技師は、かねてから着想があった新型戦闘機のアイデアを提出します。「P-40と同じエンジンで、もっと良い飛行機を、より短い製作期間で初飛行させてみせる」とイギリス側に約束するのです。
 こうして生まれたのが、後のP-51Aマスタングでした。イギリスのために計画立案からわずか9ヶ月未満で完成したこの機体、当初のエンジンがP-40と同じエンジンで、高高度には向かないことから戦闘機というよりも地上攻撃や写真偵察に投入されます。これがマスタングMk.1。600機あまりがイギリスに納入され、1942年の3月に実戦投入、当初の予想に反して大活躍します。


 イギリスがこの機体の高性能ぶりに大喜びしているのをみて、ノースアメリカン社でも「これ、自分たちの国でもいけるんじゃね」と思いたち、マスタングの売り込みをかけます。
 結果的にはP-51の正式番号を与えられ採用されるのですが、50機近くが納入された所で、新戦闘機導入の予算を使い果たしてしまいます。
 当時の軍用機調達担当者は、このマスタングに惚れ込んでいました。そこで「戦闘機の予算がなくなったら、攻撃機の開発予算がまだ余っているぞ」とノースアメリカン社に打診、こうして、爆弾と急降下爆撃ができるように改造されたのが、A-36Aでした。
P-51_A-36A.jpg
横から見るとほとんど変わりません。

 外見はP-51Aとほとんど同じです。急降下爆撃ができるようにダイブブレーキを付けている点が大きな違いでしょうか。愛称は「アパッチ」と名付けられ、1943年の3月から戦闘爆撃隊として実戦配備に就くのでした。
Cap 8.jpg
A-36A。主翼の上下にダイブブレーキが付いているのが特徴です。

 このA-36Aアパッチも
やはり基本設計が優れているのしょう、マスタングMk.1同様、大活躍します。特にトロッコやアルジェリアに展開していた第27戦闘爆撃隊と第86戦闘爆撃隊の活躍は有名で、約300機のA-36A型機が地中海に配備されました。
 高度ゼロメートルという、超低空飛行の任務を特別に受けたパイロットたちは、レーダーの目をくぐり抜け、時には急降下爆撃を繰り返し、ドイツ陸軍からは「スクリーミング・ヘルダイバー」という名で恐れられることになります。

名戦闘機P-51マスタングB/Cの登場

 このマスタングMk.1やA-36Aアパッチの活躍が目につき始めると、イギリスの技術者たちは、この機体の可能性に気づき始めます。問題は高高度性能が悪いアリソンエンジン。「この機体に我らがスピットファイアのマーリンエンジンを搭載すればどうなるか・・・」ロールスロイスの技術者たちは、マスタングMK.Iにマーリン68エンジンを搭載してテストしてみます。
本ブログでも何度も記事にしているように飛行機の性能はエンジンに大きな影響を受けます。幸運にもこのマーリンエンジンは、優れた高高度性能を持ちながら、アリソンエンジンとほぼ同サイズ、重量も同じなので改修は簡単でした。
 はたして、
その結果は・・・。誰もが驚嘆すべきものでした。試験飛行したその機体は、最新のイギリス製の戦闘機を含め、いかなる機体より早く、航続距離が長かったのです。
 こうして、早速1943年からパッカード製のマーリンエンジンを搭載したマスタングの生産が始まります。プロペラも3枚からより大型のハルミトン・スタンダード製の4枚へと変更されました。マスタングMK.Iは、P-51B/Cへと進化し、イギリス向けにはマスタングMK.Ⅲと呼称されるようになります。
 連合国はこうしてB-17を護衛できる本格的な長距離侵攻ができる戦闘機を手に入れることができたのです。
 D型になりと、コクピットの視界向上型のバブルキャノピーになり、私たちにお馴染みのスタイルになります。

P-51D.jpg
やっぱりマスタングといえばこれですよね。

それでもマスタングはマスタング

 さて、こうして低空飛行の場面でも急降下爆撃でも高高度での戦闘でも活躍したマスタングシリーズですが、元々最初に活躍していたA-36Aアパッチの戦闘爆撃隊の彼らにしては、マスタングの活躍として誤って伝えられることが多かったようで面白いはずがありません。彼ら戦闘爆撃隊のアパッチパイロットたちにとってはこれは耐えられないことだったようで、この機体の任務に相応しい名前をつけようではないかという話が持ち上がります。
 やがてヨーロッパを奪還するべく任務に就くであろう当時のA-36Aに付けられた新しい名前はインベーダー(侵略者、侵入者の意)でした。
A-36A.jpg
A-36Aを使用した訓練部隊の様子

 しかし、彼らの努力も虚しく、マスタングの高性能ぶりは世に広がるにつれ、アパッチやインベーダーの名前は、更にマスタングの名前に隠されるようになってしまいます。
 やはり、最初の名前がマスタングでしたので、マスタングはやはりマスタングといった感じなのでしょうか。

アパッチの終焉と後継者の活躍へ

 さて、1943年に活躍のピークを迎えたA-36Aアパッチも、1944年には、後継機のP-47サンダーボルトへと機種変更になります。すでに仲間のP-51Aも高高度性能にパワーアップしたP-51B/Cに切り替わっていました。短い活躍期間ではありましたが、アパッチ(マスタング)が本来持つ機動性とその頑丈さ、信頼性は、P-47に乗り替わったとしても忘れられるものではなかったという証言も残されています。
 A-36は約500機が生産され、北アフリカ、地中海、イタリア、インド、ビルマなどの各戦線で使用されました。
 
A-36USA.JPG
愛称も同じなら良かったのに。

プラモデル情報

 マスタングの活躍の中では短い戦歴でマイナーな部類に入るA-36Aアパッチの模型もしっかりと出ています。ブレンガンからは72スケールで10月に2機種が発売予定ですね。米軍マーキングと英軍マーキングです。一風変わったマスタングを作ることができますので、モデラーさんには注目のキットかと思います。定価は2,592円10月31日に発売予定です。

A-36英国.JPG
ダイブブレーキが面白いですね
ブレンガンA-36A.JPG


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◆私事の話

 
書籍.jpg

 長かった仕事がようやく一段落しました。気がついたら9月も後半!><;
 最後は久しぶりの徹夜をしました。いやぁ、若い頃と較べて無茶ができませんな。記事の更新をと思いつつの2日連続の寝落ち(笑)。寝落ちをよくしていた、ブロガーのアニさんを思い出してしまいました(^^)。
 さて、一段落した、私の机の目の前には、元上司の友人さんから頂いたダンボール箱3箱分の書籍があります。うーん暫くは読書三昧かも(笑)。
 

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来たよ(28)  コメント(4)  [編集]
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コメント 4

johncomeback

「紫電改のタカ」懐かしいなぁ「少年マガジン」に連載されていましたね。

元上司さんの蔵書、読みたいのがいろいろあります。


by johncomeback (2017-09-21 20:18) 

ys_oota

名機P-51はアメリカとイギリスの合作だったんですね。当時のアメリカ軍機としては飛びぬけたデザインだったのはそういう経緯があったのですねぇ。
by ys_oota (2017-09-21 23:38) 

caveruna

お疲れ様です!
私の一段落はいずこへ・・・
まだしばらく落ち着きません(笑)
by caveruna (2017-09-22 13:08) 

ワンモア

☆ johncomebackさま
 蔵書、車に積んだままでまだ開封していません(笑)
☆ys_ootaさま
 バルブキャノピーにしたら一気にモダンになりましたよね(^^)
 アクリル風防の加工技術も進んだからなんでしょうね。
☆caverunaさま
 一足お先です!美味しいものを食べて頑張ってください>< 
by ワンモア (2017-09-22 19:54) 

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