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飛行機が飛べる訳。揚力の話〜その1

 さて、新年から難しい勉強ネタです(笑)。
 今回は飛行機の大事な力、揚力についてのお話です。専門的な記事になりそうなので、なるべく分かりやすく説明をしていきたいと思います。最近は近況報告ばかりでしたので、久しぶりに色々と調べてみました。

何故飛べるのかということを説明するのは難しい?

 空港などで大きな旅客機を見ていると、単純な疑問として、「あれだけの巨大なものがどうして空に浮くことができるんだろう?」なんて思いませんでしょうか。「ホントよく飛ぶよなぁ」と 航空工学の専門技術者が冗談交じりに言っているくらいですから・・・ヾ(-- )ォィ
cuakuriku .jpg
みんな不思議に思わないんだろうか・・・(*^^*)

 技術者の彼は続けて「あれだな。クマバチと同じでみんなが飛べると信じているから飛んでいるんだ(※1)。その証拠に飛行機事故が発生すると、『あれ?もしかして飛べないんじゃん?』と信じる力が揺らぎ、事故が連続で続くんだよ。飛行機事故が一度発生すると連続でよく起きるのは飛べるという信じる力が揺らぐからなんだよ」と。
 まあ、クマバチが飛べる理由は、空気にも粘りというレイノルズ数を発見してから解明できていますので、技術者特有のブラックユーモアなんでしょうが、「専門家のあんたが言うか〜」と突っ込みたくもなり面白く感じました。

(※1)その大きさの割に羽が小さいクマバチの飛行は長年の謎でした。→クマバチは飛べない?
 

 冗談はさておき、実は飛行機が何故飛ぶのかという疑問を説明するのには意外と難しいってご存知でしたでしょうか? 
 それは航空工学の大家の方が書いた解説書でも、そのかなりが間違っていたり解説不足という驚くべき事実もあるのです。それは航空工学の最先端のアメリカでさえもです。
 
アメリカのアンダーソン氏は英語の解説書を調べて、その7割が間違っているという報告も出しています(飛行機はなぜ飛ぶかのかまだ分からない)。また、間違いではないにせよ、揚力がなぜ生まれるのかがの説明が不十分であるというのが殆どらしいのです。ちょっと驚きですよね。
ホーチミン.jpg

揚力の間違った解釈

 よくある間違いは、翼の上下を流れる気流が翼の後ろで同時に出会うためにベルヌーイの定理(※2)によって気圧差が生じて上に吸い上げられるような形になり「揚力」が発生するというもの。説明は簡単でわかりやすいのですが、これ間違いなんですね。私も学生時代に勘違いしていた節がありますから意外と多い誤った解釈だと思います。

(※2)ベルヌーイの定理:簡単に言うと流体の速度が増加すると圧力が下がるということ。 
揚力の間違った説明.jpg
 これを等時間通過説といいます。先端で分かれた気流が後端で同時に出会うため、上面が膨らんだ翼の上を通過するためにはそれだけ早く進まないといけません。ベルヌーイの定理では、流体の速度が加速すると圧力が下がりますので、上の圧力が低く、吸い上げられるよう上向きに力が働くということです。これはベルヌーイの定理が間違っているという訳ではなく、「同時に到着する」という解釈が間違っているということなんです。その証拠の画像がこちら。上面の方が先に後縁に到着していることが分かります。

Cap.jpg

 揚力は上の気流と下の気流が後縁で一致する形であることで発生するのですが、これが「同時に到着しなくてはならない」という誤った解釈になってしまっているようなのですね。
 この他にも「飛び石説」「作用・反作用説」なども誤った解説
であるとも。

飛び石説
翼が流れに対して迎角をとると、空気は翼下面に当たり、流れが下方に方向変更されて、その反作用で揚力が発生する

 さて、なぜ揚力が発生するのかを解説すると長くなり、難しくなってきますので結論を先にいいます。
Vortex-street-animation.gif
カルマン渦列のシュミレーション
 揚力は翼の上下の速度差カルマン渦による圧力差によって生じます。「圧力差というものが生じて飛行機は空を飛ぶことができる」と捉えていただければOKです。
 さらに専門的に言えば、圧力差による揚力はベルヌーイの定理で証明でき、なぜ圧力差が生まれるかはクッタ=ジューコフスキーの定理で説明できるという訳なんです。ということで、一般的に言われている揚力の解説のベルヌーイの定理だけでは不充分という訳ですね。はい!もう難しくなってきました(*^^*)
 
 そして揚力の公式は、通常の飛行状態
(非粘性・非圧縮・定常の流れの場合)の場合、

 揚力=空気の密度×空気の速度×循環流の強さ

 で表されます。一つづつ解説していきましょう。まずそもそも通常の飛行状態とは何かということですが、音速以下で飛んでいる状態のことです。この位の速度ですと、
空気の粘りや摩擦はごく僅かですのでなんで、無視してもまぁ構わないということです。音速以下の状態ですと、非粘性、非圧縮ということでOKということですね。

 
 さて、
「空気の密度」ですが、これは空気の濃さを指します。空気とは
酸素と窒素の混合物ですが、重さがあります。
 積み上げられた本を例にいうと、下の方が自重が重なって圧力が高くかかっていて取りづらく、上の本の方が圧力が低いので取りやすいですね。
 上空は気圧が低いので、空気が拡散して薄くなってます。

 これと同じで、上空では空気が薄いので揚力も落ちてきます。なので高々度の飛行機は迎え角を大きくして揚力を稼ぐ必要が有るわけですね。


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高い山に登ると高山病にかかりやすいとかありますよね。
空気が薄いと酸素が不足し高山病にかかりやすいです。
重力の影響で空気も沈殿していると考えると分かり易いですね。


 「空気の速度」も重要です。これは翼を流れる空気の速度です。飛行機が早ければ空気の速度も早くなりますし、風が強ければ結果的に翼を流れる空気も早くなりますね。追い風を受ける場合は、飛行機は飛びづらいし、向かい風を受けながら飛べば早く離陸できる訳です。

 さて、ポイントは循環流の強さ。この説明が不十分な記述が多いので、飛行機が何故飛ぶかを充分に説明できていないことになってしまいます。

 この「循環流」という現象。これは翼の周りを回る流れの渦のようなものです。実際には翼の回りをグルグルと回っている訳ではなくあくまでも数学的な表現なのですが分かりづらいといえば分かりづらいものなのです。
 

循環.jpg

a=b+C:翼の回りの流れを分解するとこうなります。
 この循環する気流が、翼端渦とか、動き出し渦とか、そくばく渦など、様々な渦を発生させることになります。
翼端渦.JPG
翼端から発生する翼端渦。けっこう厄介な存在なのです。

 また、翼は必ず翼端が存在しますが、そこには必ず翼端渦が発生します。揚力が発生するところに翼端渦ありで、揚力と翼回りの循環、その循環と翼端渦、これらは不即不離の関係にあるんです。わー、もう難しくなってきたかな。
 

Cap 44.jpg

 分かっているのは、揚力理論は完全に確立できていてコンピューターなどでも解析もできます。ただ説明するのが一般の人にはちょっと難解という訳なんですね(;^ω^)
 ですので「翼」とは、揚力を発生させる装置なんですが、もう少し詳しく言うならば、
翼とは翼断面や迎角をうまく作ることで、翼の周りの気流の循環を発生させ、結果的に揚力をつくる装置である
ということです。
 
勉強しなくても経験上、どうすれば高く舞い上がれるかを本能的に知っている昆虫や鳥たちはすごいですよね(^^)


<参考にさせていただいたサイト記事です>




<今日の成田>
国際貨物.jpg
ハノイ行きの国際貨物になります。

 いよいよ明日から会社の仕事初めなのですが、私は一足早く仕事初めです。いや二足早くかな。明日の準備も完璧に整え、社員のみんなを待つのみです(`・ω・´)
 夕方、社長のご家族が差し入れをもってきてくださいました。
晩酌セット.jpg
 千葉といえばピーナッツですがこれは珍しいお味噌を絡めたものです。同じく九十九里浜産の片口鰯のみりん干し、酒のつまみに最高ですな。
 一人で晩酌するのもなかなかおつなものです。
みそピーナッツ.jpg

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来たよ(40)  コメント(11)  [編集]

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コメント 11

ネオ・アッキー

明けましておめでとうございます。
昨年中は、大変お世話になりました。 本年もよろしくお願い致します。
by ネオ・アッキー (2018-01-03 22:08) 

横 濱男

読んでいて、寝そうになりました。。(^^)
by 横 濱男 (2018-01-04 12:53) 

ak1-buc

遅くなりましたが、
本年もよろしくお願い致します (^_^)
by ak1-buc (2018-01-05 01:37) 

kohtyan

お勤めご苦労様です。
社長様のお心遣い、うれしいですね。
by kohtyan (2018-01-05 11:40) 

Hide

2018年も明け5日 明けましておめでとうございます!
今年も色々教えて下さいね。飛行機はなぜ飛べるのか?
今、追われていますのでまた、UFOはなぜ飛べるのか?
お待ちしております・・・ムムム・・・ムリ〜

by Hide (2018-01-05 12:12) 

johncomeback

2度読み返しましたが、理解できたのは6割位かな。

千葉県出身の研究室の助手が落花生を土産に
持ってきましたがが、食べ比べで2品種でした。
「半立」と「中手豊」という品種でした。
by johncomeback (2018-01-05 14:27) 

caveruna

「晩酌」という字は見なかったことにします(苦笑)
いーなー
by caveruna (2018-01-05 20:22) 

hideta-o

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。年末、年始と飛行機に乗ってきました。片道13時間、くたびれました・・・。
by hideta-o (2018-01-06 13:31) 

ワンモア

☆ネオ・アッキーさま
 明けましておめでとうございます!本年もどうぞよろしくお願いします(*^^*)
☆横 濱男さま
 難しすぎてすみません\(^o^)/
☆ak1-bucさま
 こちらこそ本年もどうぞよろしくお願いします(^^)
☆kohtyanさま
 毎晩呑んでます(笑)
☆Hideさま
 今年もよろしくお願いします(^^)
  UFOが何故飛べるのか?その原理は実はかなり調べています(笑)
☆johncomebackさま
 途中で、はしょってしまいました(;^ω^)
 千葉は落花生が美味しい所です。私はゆでピーが一番好きかな。
☆caverunaさま
 いやぁ、一人の夜を楽しんでいます(笑)
☆hideta-oさま
 明けましておめでとうございます!長旅お疲れ様です!本年もどうぞよろしくお願いします。

by ワンモア (2018-01-06 17:55) 

ys_oota

飛行のメカニズムをきちんと理解するには流体力学をマスターしなければならないのかも知れませんが、私には難しすぎます…(><)
でもこのGIF画像は分かりやすいですね!なぜ虫や鳥が羽ばたくのか、なんか分かった気になってしまいます。^^

by ys_oota (2018-01-07 00:14) 

ワンモア

☆ys_ootaさま
 新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします(^^) 流体力学は難解かもしれませんが自然の原理なので、そう考えると興味が出てきます。
by ワンモア (2018-01-07 09:33) 

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