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750馬力の非力なエンジンで最高速度620km/hの奇跡。SAI.207

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 もし共通の1,000馬力のエンジンを搭載して、「航続距離、格闘性能、速度、武装などを総合したバランスの良い最高の戦闘機をつくる」というコンペがあったならば、日本の零戦が最優秀賞を得ると思います(防弾設備が全然ないということで欧州ではかなり賛否分かれるところではありますが・・・)→もしバトル・オブ・ブリテンに零戦が投入されていたら?

 零戦の優秀な所は、類まれな格闘性能と膨大な航続距離にありますが、その理由は徹底した軽量化にありました。
 少しでも軽くしたいというのは、当時の航空機の設計者がいつも考えていること。そう、ダイエット命だったんですね。よく飛行機設計は引き算の技術と言いますが、それに比較して建築物などは足し算の技術なんて聞いたこともあります。本当に必要な安全値のギリギリの所を攻めてくるのが航空機設計の肝なんです。

栄一二型.jpg
現存する零戦の栄12型エンジン

◆零戦に満たぬエンジン馬力で零戦を超えている性能

 その零戦も、最高速度は565km/hをマークするに留まりましたが、零戦の1,000馬力にも満たない750馬力のエンジンで、なんと最高速度620km/hを叩き出す戦闘機がありました。
 しかも、最高高度1万2千メートルまで上昇でき、
急降下速度は、零戦の630kmhに比べ、なんと960km/h!
 しかもこの戦闘機、なんと全木製なんです。名称はアンブロシーニSAI.207
SAI.207.jpg
これでも空冷エンジンなんです。

 木製軍用機で有名なものは、なんといっても”木造機の奇跡”とまで称されたイギリスのデ・ハビランド DH.98 モスキートでしょう。1700馬力のロールス・ロイスマーリンエンジンを搭載したこの双発機は660km/hを超える高性能ぶりを発揮しましたが、その半分位のエンジンパワーしかないこのSAI.207も負けては
Mosquito.jpg
DH.98 モスキート
いませんね。
 SAI.207の初飛行は、1941年春。武装も、20mm機関砲×2門、12.7mm機銃×2丁ですから、当時の戦闘機としては申し分ありません。

 この機体、元々、速度記録を目指したSAI.7というエアレーサー機がベースとなっていますから早いわけです(1939年のエアレースで速度記録を樹立)。

 レース機のSAI.7をベースに、まず540馬力のエンジンを搭載したSAI.107という戦闘機が560km/hの速度をマーク。これに更に高性能の750馬力エンジンを搭載したのSAI.207になり、空軍からなんと2,000機の大量発注を受けます。
 また、軍事的にもアルミなどの戦略物資を用いない木造性ですし、生産の容易性においても優位です。

 アンブロシーニ社の工場では、主力機のマッキ社のMC.202も製造していたのですが、なんと1/4の行程で生産されていたとのこと(佐貫亦男『続・ヒコーキの心』より)

 では、なんで、こんなに高性能なの?ということですが、一言で言うと「小さい」ということがいえます。また、空冷エンジンにも関わらず、そのフォルムは液冷のように正面面積を綺麗にまとめあげて空気抵抗を抑えています。さすが元レーサー機ですね。
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いいフォルムですね。

 このSAI.207、2,000機もの発注を受けたのは良いのですが、エンジンを更に強力にし、全長、全幅を拡大させたSAI.403という試作機も更に高性能ぶりを発揮してしまいます。
 空軍はこれにも気をよくし、SAI.207の生産を切り替えてSAI.403を3,000機発注する方針を打ち出します。当時の主力機はマッキMC.200やMC.202で、共に生産数が1,000機程度でしたので空軍の力の入れ具合が分かりすね。名称もダルド(吹き矢)という、カッコイイ名前を付けられています。
 

 しかし、哀しいかな、肝心のイタリア軍そのものが弱かったし、内紛でゴタゴタ。イタリアは枢軸国の中ではいち早く無条件降伏してしまい、SAI.207の実際の生産数はわずか16機、練習機型も含めて30機にも満たない生産数で終わりました。後継機として期待されていた3,000の吹き矢は生産準備中のまま、一機も戦闘に参加することなく終わってしまいます。イタリアの崩壊は思ったよりも早かったのです。 
 まあ、イタリアの航空士官が「イタリア全土軍用機の生産総数が月産300機程度に対しアメリカが1万機。敵うわけがない」公言していたそうですから・・・。

 
 さて、このSAI.207もSAI.403も基本設計はとても優秀でしたので、戦争をする必要がなくなった平和な時代には、SAI.7は生き残り、量産が続けられています。


ambrosini_s-207 .jpg

(SAI.207 )     
全長: 8.02 m    
全幅: 9.00 m    
全高: 2.88 m    
翼面積: 13.9 m2    
全備重量: 2,415 kg    (自重 1,750kg)
エンジン: イソッタ・フラスキーニ・デルタRC.40 空冷12気筒V型 750 hp    
最大速度: 636 km/h    
実用上限高度: 10,200 m    
航続距離: 950 km    
武装         12.7 mm機銃 × 2         20 mm機関砲 × 2
乗員: 1名




<今日の成田>
再梱包.jpg
 最近、ギターの出荷が多いのですが、梱包がマチマチ。基本はケースに入れたり、ダンボールに入れてくるのですが、中には梱包が心もとないものも・・・
梱包.jpg
梱包し直しました。うーん、なんかに似ている・・・


 あ、これだ。
イベリコ豚.jpg

生ハムの原木ですね(笑)。一本買ってみたいなぁ。となると、赤ワインにチーズにフランスパン・・・うーんお腹が空いてきました。

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来たよ(27)  コメント(5)  [編集]
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コメント 5

kinkin

これで海外へ!?
かなり手を抜いた梱包ですね・・・
海外は国内と違って、かなり荷扱いが雑ですからね^^;
by kinkin (2018-04-22 04:26) 

johncomeback

今から山形県南陽市へ出かけます(^▽^)/
by johncomeback (2018-04-22 06:20) 

caveruna

ギターだったのね!
私もてっきり生ハムかと…(笑)
by caveruna (2018-04-22 11:09) 

ys_oota

おー、イタリアにこんな戦闘機があったのですねぇ。知りませんでした。やはり性能が高い航空機はフォルムも美しいですね。^^
by ys_oota (2018-04-22 23:14) 

ワンモア

☆ys_ootaさま
 航空機の場合は機能美というか、性能とデザインが合致しますよね。イタリア機の魅力はそこにデザイナーの拘りがプラスされているように思います(^^)
by ワンモア (2018-05-03 10:31) 

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