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裏のお仕事をご紹介〜その1

 今回は私自身の本当の職業をついにご紹介していこうと思います。
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  実は一言で言うのが難しい職業なんですが、寺院の仏具修復、仏壇の洗浄クリーニング、修復業なるものをしています。俗に言う仏像を彫る仏師とはちょっと違います。
 仏師とは、仏像の造形から行う方々ですが、私どもはそこまでは出来ません。修復専門の職人です。仏像、寺院仏具、仏壇、漆製仏具などの修復が専門です。その代わり、全国の現場を回ります。
 いわば、日本の伝統技術、文化・信仰を支え、護る仕事ともいえるかなと自負しております。どうです?前の記事の仕事内容とは大違いでしょ?(笑)

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◆寺院の仏像・仏具・建物の修繕・修復

 この職業に就いてから百を超えるお寺を回っておりました。定期的に行くお得意様のお寺は数十。今は兼務寺、廃寺も多く、実際に住職がいる寺もどんどん減ってきております。
 東北大震災の際には、毎月のように福島に通い、地元の新聞社が取材にきて新聞にも載ったことがあります。それだけ珍しい職種なんでしょうね。
 本堂などの建物自体の修繕は地元の建具工事屋さんたちが行いますが、こういう職種は県内にはそういませんので、我々が全国を回ったりします。歴史的な価値があるもの、文化財とかも直接触る機会もありますが、手続きとか書類など、とても面倒くさいので最近は避けていますね。公務員からむと本当に面倒。
 自分は関東や東日本が中心。なので北は青森、南は神奈川県あたりまでがテリトリー。よく行くのは北関東と埼玉です。
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 足場などは地元の業者さんが組んでくれますが、我々が本堂に入る時は、みんな興味津々。彼らは地元の檀家の人たちでもある訳で、子供の頃から何十年と拝んできた御本尊にも手を入れるわけですからね。見る方も見られる方も緊張状態。気がつくと後ろに沢山のギャラリーがなんてことも。
 我々が本堂から出てくると作業で使用した金粉が頭や衣類に付いていることも多いので有難られることも(笑)。地元の檀家総代を始め、檀家さんの方々、寺をいつもきれいにしてくださっている植木職人、出入りしている地元の業者さんともよく話をします。一様に言われるのは「こんな仕事ってあるんだねぇ」。

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このような汚れも洗い出して金粉、金箔を貼り直します。
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綺麗になりました。

 金箔を貼ること、漆を塗ること、金メッキの釘を何千と抜いたり、打ったりもします。江戸時代から明治にかけての仏具も多く、瓔珞という仏具は天井から吊り下げられているのですが、糸が劣化してくるとポロポロと落ちてきます。それを一つ一つ繋いでいく気の長い仕事も行います。
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洗浄と修復が終わった部品はこうして並べておきます。

 最近の寺院仏具ですと、大手の仏具屋さんが入れるので同じものもあるのですが、古い寺さんですと、その時の金箔の状態、木材の劣化の進行度合い、柱の状態などどれ一つとして同じものに出くわしたことはありません。
 人の手術と同じで、解体してみないと分からないことも多いです。状況に応じて薬剤の配合、下地の調整など、経験と場数がどうしても必要なことも多いですね。なので年配の職人さんたちには敵いません。私は全然若手に入ります。その分、体力や他の分野の知識を取り入れ、助け合って仕事しています。
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 思わぬトラブルも多いですが、手を休めないで作業しながら頭の中で「今ある材料、時間でどう解決していくか」を考えることが、この仕事の一番の醍醐味かもしれません。 
 解体してみないと絶対に見ることができない箇所にこっそりと昔の職人さんの仏師〇〇なんで文字を見つけると、もう、「素晴らしい仕事ありがとうございます。この度は引き継ぎさせていただきます。よろしくお願いします」なんて思うことも。時間を超えて心が通い合う感じの瞬間がたまらないですね。

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欄間から外して修復します。
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修復後。現場で施工しました。龍の目を入れたのは私。
普段のプラモデル工作の技術が活かせました^^
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 金箔は10cm四方で200円近いものを何百何千と貼っていきます。その金箔も年代に合わせて何種類かを使い分けていきます。寺院仏具の施工になると少なくても4,5百枚は軽く使います。鼻息でも軽く飛ぶので、真夏でも窓を閉め切って無風状態で作業します。今年は猛暑で灼熱地獄でしたね。本堂の中にいて灼熱地獄とはこれ如何に。
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冬は冬でとても寒いです。
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施工が終わるまで、ひとまず安置している仏像たち

 一番、思い出深いのは、第一原発から1.5kmの家まで位牌を引き取りに行ったことでしょうか。防護服を身にまとい、1時間で引き取って帰ってくるということも。避難区域の浪江町にも通いましたね。墓石が散乱している中に立ち入りることもありました。せめてお地蔵さんの頭だけでもちゃんと戻してあげたいという要望に応えに行ったこともあります。

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 普段、檀家さんも入れることができない場所にも立ち入ります。本堂の裏側がどうなっているのかとか興味ありませんか。
 埼玉県の長い歴史のあるお寺ではこんなことがありました。
 「この箱だけは何もしないで結構です。なんでも200年ほど前にこの一帯で悪さをしていた狐の怨霊を封じ込めたものらしく代々の住職から絶対に開けるなと言われているんです」まるで漫画に出てくるような話が本当にありました。中には何があるのかな・・・(´Д`)
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◆歴史や宗派のことを学ぶのは業務
 さて、今は友人の会社の手伝いにきているので、寺院施工は自分で注文を取ることはなくなりまして、もっぱら仲間の職人さんのお手伝いがほとんどになりました。こういう職種は数が足りないので色々な地域や土日とかも応援に行くのです。いつか皆さんがご存知のお寺でお会いできるかもしれませんね。
 自分が営業していたころは栃木でも400寺は回りましたかね。朱印帳を持ってれば良かったと思います^^
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 当然、各宗派に関しては業務知識として勉強はしており、お経も詠んだりもできます。各種経典なども知らないとご住職ともお話ができません。法談は私にとってはとてもためになるものであったりします。たまにブログでも「ものの見方考え方」カテゴリでお説教みたいなことを書いたりするのはそのせいかもしれません。
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 施工前には、そのお寺の歴史を事前に勉強もします。特に埼玉は寺院が多く、源氏、平家、徳川ゆかりの寺などはワクワクします。もうひとつブログが立ち上がるくらいの量はあるかもですね。本当は色々なご住職たちもみてきているので書きたいこともあるのですが・・・ねぇ?(笑)
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 寺院の仕事の場合は朝早く、そして何日も続くことが多く、朝は4時出発もざらです。地方の場合は泊まり込みになります。私は無いのですが田舎の山寺になると宿泊施設もないので僧坊で何泊もすることも。
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行くだけで息が切れる・・・

 さて、実は寺院の施工だけでなく、この技術を活かして一般家庭のお仏壇の修復や洗浄も行いますが長くなるので次回へ。 あ、これ、ヒコーキ工房のブログですよ(笑)忘れないでくださいね。

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来たよ(29)  コメント(14)  [編集]
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コメント 14

ロートレー

ワンモアさんの本業は常ずねとても興味がありました。
航空関係の学校を卒業されて関連のお仕事を経験されたということだったので、特殊な需要のエンジニアさんだろうかなんて想像していましたが、見事にはずれでした。
でも、細部まで手を抜けない職人業は、ワンモアさんにぴったりですね
在職中は事務屋だった私は、ワークマンシップを発揮される仕事や職人さんは
私の憧れでもあります。
これからもいろいろご教示お願いいたします。^^
by ロートレー (2019-01-14 20:23) 

middrinn

この手のお仕事は松原正業しか知らなかったので興味深いです(〃'∇'〃)
昔の仏師さんの御名前を見付け、心が通じるなんて素敵ですね(〃'∇'〃)
それにしても、プラモ製作が役に立っているとは面白すぎますよ(^_^;)
by middrinn (2019-01-14 20:26) 

kinkin

根気勝負の素晴らしいお仕事ですね。
自分も根気勝負のところもあるけど、一気呵成でやる部分もありますからね^^;
by kinkin (2019-01-14 20:28) 

tochi

お~大変そうなお仕事ですね
でも世の中にやられる方がいないと困るお仕事
by tochi (2019-01-14 21:21) 

JR浜松

素晴らしいですね!
腕と根気のいる作業なんでしょうね。
モデラー以上の本職だったのですね。
by JR浜松 (2019-01-15 15:52) 

横 濱男

渋い素敵な職業かと思います。
中々出来る物ではありませんが、とても良い仕事かと。。。
こういうのって興味ありますが、年齢的に遅いかな。。
by 横 濱男 (2019-01-15 19:45) 

johncomeback

なるほど、ヤフオクでゲットした仏像のクオリティが高いのに納得しました。
by johncomeback (2019-01-15 20:03) 

ぼんぼちぼちぼち

へーー、そういうお仕事をなさっているのでやすね。
すごく技術が必要とされるお仕事でやすね。尊敬でやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2019-01-15 21:47) 

ワンモア

☆ロートレーさま
 昔の仲間からは「なんで?」と疑問を沢山もらうんです(笑)ロートレーさんが事務職とはこちらが大変驚きです(´⊙ω⊙`)。職人さん中の職人さんではないですか。
☆middrinnさま
 プラモデル制作も奥が深いんですよ〜^^ 最近はその技術を活かして、紛失した部品の複製なども行っています。
☆kinkinさま
 最近は力仕事も加わり、指先への負担がかかってきて大事にしております。手が命の仕事です。
☆tochiさま
 ありがとうございます。栃木の寺院は半分まわりましたよ。足尾は全部訪問済みです^^廃寺も多いですね。
☆JR浜松さま
 根気が確かに必要です。たまに仏壇のプラモデルがあったらいいのにと思います(笑)
☆横 濱男さま
 そういう職人さんを養成する会社もあって定年してから入ってくる人たちも実は居るんですよ。あと若い人も。向き不向きもあるので1年ほどで辞める人も多いですね。
☆johncomebackさま
 へへへ。習作のひとつなんです^^ 大事にしてくださって嬉しいです。
☆ぼんぼちぼちぼちさま
 まったく畑違いの職業だったんですが、意外にも自分には向いていると思いやした^^

by ワンモア (2019-01-16 06:58) 

たくや

触ると手が震える様なお仕事ですね~
これでプラモデルもお上手なのはさらに納得です
by たくや (2019-01-16 13:16) 

ワンモア

☆たくやさま
ありがとうございます。プラモデル工作は指先の訓練にもなります^^
by ワンモア (2019-01-16 17:47) 

足立sunny

びっくりしすぎて声もでませんが、こういう精細なお仕事が向いておられるのでしょうね。プラ工作が綿密で精緻なのも手が抜けないからなんですね。
by 足立sunny (2019-01-17 08:41) 

caveruna

ホントにこんなお仕事あるんですね!
っていう、ビックリです!
でも、今までブログ読ませていただいて、いろんなことがつながる(笑)
昔、お寺のお掃除の仕事が入って、
天井からの装飾など、
高くて届かないよ〜どうしようと、
壊さないようにとか、
慣れずに大変だったことを思い出しました(笑)
確か誰かがなんか壊しちゃった気がする…
by caveruna (2019-01-18 17:46) 

ワンモア

☆足立sunnyさま
 うちの両親は二人共縫製や洋服の仕立てをしていたので手先が私以上に器用で、家族や親戚の中では自分が一番不器用だと思っていたんです(笑)
☆caverunaさま
 驚いていただきましたか(笑)。埼玉の寺院の写真とか色々ありましたものね。出張で県外に行っててもなぜか寺院の写真が多いとか(笑)

by ワンモア (2019-01-19 11:13) 

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