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裏のお仕事をご紹介〜その2

 元々、空を飛ぶことに憧れて航空関係の学校や仕事に就いた私でしたが、今の仕事である寺院や仏壇の修復なんて仕事を聞くと、全員が「えっ?何で?」と不思議がります。私もそう思います(笑)なんでこうなったのかという話はそのうち・・・。
 で、「今は成田空港のそばで国際貿易の仕事もしているよ」というと、今度はみんな納得してくれます。飛行機つながりですからね。人生は面白いものです。
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さて、昔の同僚で今は小伝馬町で国際貿易の会社を経営している社長から、成田に営業所を出すので、最初は事務所に寝泊まりしながらも仕事を手伝って欲しいと。給料はちゃんと出すし、倉庫も使っていいし、ガソリン代も出しますよという条件で。
 以前からもっと広い作業場が欲しいと思っていた私にとっては、まさに渡りに船で引き受けたのですが、意外にこれが大変で、自分の本来の仕事がどんどんと追いやられ、裏と表が逆転しまいました(笑)。今では国際貿易の営業所長代行が本職のようになっております。まぁ成田だし、ヒコーキ見れるので。
 今回は、寺院の施工技術を活かして一般家庭のお仏壇も手がけているという話を。
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夜や休日はこんな世界が待ってます

◆一般家庭のお仏壇の洗浄や修復

 寺院だけでなく、一般家庭のお仏壇の修復も行っています。ある意味、その家の一番大切な部分に触れさせていただく訳ですから、信頼していただくためにも、技術だけでなく、立ち振舞にも細心の注意と、ご先祖様への畏敬の念も忘れません。 
 お話をする時は、営業マンとか職人さんというよりも、ご住職に近い感じで話をすることが多いです。特に最近の方は祀り方も知らない方が多く、かといっていって今更ご住職に聞くのも恥ずかしいということから、そういう相談も承っております。なので信仰のお話や接心(宗教的な側面の人生相談)のようなことになることも多いのです。まぁ偉そうに言えませんので、私が聞いた話ではという切り出しで、知り合いのご住職の法話をさせていただくことも多いです。
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 仏壇を扱う訳ですから、その木材にも精通していないと仕事ができません。黒檀、紫檀、柘植などのよく使われる木材はもちろん、金具のメッキ処理や彩色などに使う色々な塗料や塗装技術も学んでいます。
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こんな古い仏壇も・・・
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ここまで綺麗に仕上げます
ちなみに上の欄間という部分の彩色はプラモデル工作の技術にも活かせます^^

 基本は素材ごとに分ける分解作業から始まります。仏壇には大きく2種類あって、金箔と漆の金仏壇と、木材がメインの唐木仏壇とあります。
 唐木仏壇も金仏壇も金具を全て外し、素材ごとの洗浄と修復を行います。バラして、洗浄してまた組み立てるという面白い仕事ではありますね。こちらも工程表のような段取りが頭の中にあり、同時並行で各種作業を進めて行く感じになります。
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できるだけ分解していきます。

 この世界は、専門分野の職人さんがいて、金箔だけのプロ、漆塗りだけのプロ、木工のプロなどの方々がおり、教わりにいくことも多いのです。
 我々は現場で施工することも多いので、総合的になんでもできるるようにはしておりますが、特化した専門の職人さんには到底かなわないと感じております。この世界も人脈なんですよね。自分がこれは自分の腕では出来ないなと感じたら、素直に自分の能力の限界を認め、もっと技術の高い職人の力を借りるというのもプロの自覚であると思います。
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綺麗だと思っていてもお線香のヤニでこんなに汚れています。

 仏壇を綺麗にしたいという場合は、ほとんどは四十九日法要前までにとかが多いです。御遺体の横で仏壇を施工したり、仮位牌やご遺骨などがある、後飾り祭壇の横で作業することも。
 あと、家の立て直しが最近は多いですね。家がキレイになったのでお仏壇もという方も最近は増えてきました。ここ数年、個人の景気がよくなったんじゃない?とは感じます。

 あと意外に多いのは火災現場なんです。火災に遭遇するということは、貴重な経験なんて思う方もいらっしゃるようですが、私にしてみれば、全然そんなことはなく、交通事故に次いで最も身近で起こりうる不幸の一つだと感じています。
 年に数回はそういう火災現場に立ち会い、仏壇を引き取ったりもしております。意外なんですが、家は全焼しても仏壇の一角は無事だったというケースは度々あるんです。こういう現場や火災にあった方のお話を聞くと、縁の不思議、運命の不思議を感じることも。
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 お墓の洗浄も手がけることもあります。一日中、墓苑の中での作業はなかなかなものがありますね^^ドキッとしたり、肝を冷やした話もいずれご紹介したいと思います。

◆この仕事をして良かったと感じること

 お仏壇の仕事をしていると、
お話を聞く機会もすごく多く、おばあちゃんとかおじいちゃんからは施工している横でずっと話しかけられることもあります^^
 
お位牌の一つ一つにその家のその人の人生を感じたり、その家の歴史を知ることになるので
考えされられることがすごく多いですね。人を理解することは、その人の人生を考察することなんだなと思います。
 出来上がって綺麗になったお仏壇を見て、手を合わせて泣いているおばあちゃんを見たら・・・。この仕事をやってて良かったなと本当に感じる瞬間です。この仕事だけは自分がリタイアしてもやっていきたいなと思います。
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◆正反対の職種だけど共通していることは?

 そんな感じで、平日は、パソコン叩きながら貨物を処理して、力仕事もフォークも動かし、トラックに詰め込み、夜は自炊して、事務所に泊まり、休日は自分の仕事で仏壇や仏具の修復を行い、ある時は他の職人さんのヘルプで県外に出かけ、本堂の中で一日仕事をし、翌朝はまた、空港の仕事に戻る・・・。その合間にブログも更新と・・・。
 とまぁ、こんな感じで動いております。たまに自分でも「なんだこれ?」と思う時も(笑)
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 私を他の方に紹介してくれる人も「ワンモアさんの職業を説明するのが難しい」と良く言われます。そりゃそうですよね。私もそうです。
 だけど寺院の仕事も他の仲間の応援が中心になってきたし、
友人の会社の貿易の仕事もそうなんですが、両者に共通しているのは、結局の所「困っている所へのお手伝いをしている」ということかなと。そして自分のお客さんには、喜んでいただけることが仕事のやりがいに通じているということでしょうか。
 そう考えていくと、どうも自分の天職は人に喜んでもらうことというのが生きがいのように思います。お金を動かしたり、顔の見えない仕事はどうもやる気が出ないのは、そういうことだったのかなぁと。
 なのでいずれは接待業とか、サービス業なんていう仕事にもチャレンジしてみたいなと思ってます。
 「仕事は一つに絞らないと、中途半端でどっちづかずになるよ」と忠告を受けることもあるのですが、「依頼されたニーズに誠心誠意に対応して完璧に応える」という、その一点で考えれば、貿易の仕事も寺院の仕事も仏壇の仕事も結局は同じなんですよね。仕事の本質で捉えると、表も裏も、二股も三股も関係ないと断言できると思います。
 なので、身体壊すよとか、仕事をほどほどにした方が良いよとかなんか、仕事のテンションを下げるようなことを平気で言う、仕事嫌い家庭大好きな知人からよく言わるのですが、そこは価値観の相違ですから。仕事自体にストレスがかからず、喜んでもらえる仕事なので楽しくやってます。
 それに働きすぎて自分が倒れたら仕事を依頼した人が悲しみますからね。喜んでもらえなくなります。自己管理も他人が喜んでもらうためだと思えばできるんです。逃げる時は逃げるし、休む時は休みます^^
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 このように、寺院仏閣や先祖崇拝の精神世界の延長のような世界と、それとは正反対のアクティブでアグレッシブな国際貿易の世界を行ったり来たりしている訳で、それはもう、なんとも不思議な感覚になる時がありますが、どちらも本当の自分でもあるわけです。この生活は今年も続きそうです。
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本社がある東京・小伝馬町


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来たよ(36)  コメント(13)  [編集]
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コメント 13

middrinn

今回も色々とインスパイアされる点が多いんですが、
お線香でこんなに汚れるんだというのに驚き(゚o゚;)
喜んでもらえるとモチベーションになりますね(^^)
航空関係から精神世界へ、立花隆『宇宙からの帰還』
の壮大なテーマに通じるものがあったりして(^_^;)
by middrinn (2019-01-17 08:51) 

ワンモア

☆middrinn さま
 20年、30年とお祀りしているとそれはもう凄いことになりますよ。逆にいえば、私からみればちゃんとお勤めをしているかが分かってしまいます(笑)
by ワンモア (2019-01-17 12:48) 

johncomeback

職業は「人に喜んでもらう事」って素敵だなぁ。
僕はず~っと相手の顔が見えない仕事をしています。
「研究」なんてそもそも相手がいませんからね(*´∇`*)
by johncomeback (2019-01-17 14:46) 

tochi

仏壇も一生ものですからね
一度買ったら買い替える事はないので、奇麗にしてもらえると助かりますね
by tochi (2019-01-17 16:59) 

ワンモア

☆johncomeback さま
 そうなんです。自分がバーンアウトしたのもそれがあるかもしれません。研究の成果が人の喜びに直結するには長い時間を要しますね。
☆tochiさま
 そうなんです。30年近くになったら一度クリーニングすると良いかもと思います^^こういう仕事ってみんな知らないんですよね^^
by ワンモア (2019-01-17 18:13) 

横 濱男

人に喜んで貰えると嬉しいものです。
お金では買えないもので、励みにもなります。
心が豊かになりますね。
by 横 濱男 (2019-01-17 18:56) 

Cedar

我が家も4年前に妻が先立って以来、仏壇には手を合わせたり、線香灯す日が続いています。仏壇の清掃修理、素晴らしい御仕事ですね。
by Cedar (2019-01-18 02:11) 

ロートレー

ワンモアさんのツールバックの紹介記事を見たときは、特殊な精密機器のメンテナンスがお仕事かもと思っていましたが、皆に頼られる多彩な能力をアグレッシブに発揮することに生きがいを感じられていることがよく分かりました。^^
by ロートレー (2019-01-18 07:13) 

caveruna

そうそう!お墓の掃除もあったなぁ〜思い出しちゃったじゃないですか(笑)
某大会社の社長の巨大なお墓なんどけど、
とにかく日程調整が大変でした。
それにしても本業なんだか副業なんだか(笑)
by caveruna (2019-01-18 17:53) 

ワンモア

☆横 濱男 さま
 はい、すぐに反応が分かる仕事、時間がかかる仕事。色々ありますがお金じゃないよなぁと思うこと多いです。
☆Cedarさま
 ありがとうございます。もしお困りのことがありましたらご連絡ください^^
☆ロートレーさま
 みんなからは優しいと言われて自分では違和感を感じていたんですが、そうか、そういう方向にアグレッシブ(攻撃的)なんですね。なんか納得しました。
 攻撃的優しさっていいかも(笑)
☆caverunaさま
 caverunaさんも色々なことをされているんですねぇ。本業と副業の違いは働いている時間なのか収入なのか、はたまた本人の意思なのか。今は自分でもよくわかりません(笑)
by ワンモア (2019-01-19 11:24) 

ys_oota

すごい!いろいろな才能があるのですね。これだけ幅の広い仕事をこなしていけるバイタリティが羨ましいです。^^
by ys_oota (2019-01-20 00:53) 

kohtyan

正反対の仕事ですが、使命感をもって取り組まれておられ、
敬服します 。仏壇や墓石の仕事、とりわけ高齢者に喜ばれる
ことでしょう。
by kohtyan (2019-01-21 09:07) 

ワンモア

☆ys_ootaさま
 二股かけると頭が混乱しないかなと思ったんですが、そうでもないようで(笑)。
☆kohtyanさま
 そうなんです。高齢者の昔話を聞くのが大好きで、いつかブログに保存しておきたいなぁと思ってメモしてます^^
by ワンモア (2019-01-21 23:29) 

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