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アメリカ急降下爆撃機の系譜。ヘルダイバーの愛称の由来は意外なところから。

lineup.jpg エフトイズVSシリーズから「SB2Cヘルダイバー」が発売されるので、アメリカの急降下爆撃機について調べてしました。
 ヘルダイバーと聞くと、「地獄(ヘル)に向かってダイブするぜ!」というようなイメージが強いのですが、実は全然違うという話も。

◆急降下爆撃とは?


 そもそも「急降下爆撃機とは何たるものか」ということを。航空機が目標物に着弾させるには大きく2つの方法がありました。一つはポピュラーな水平爆撃。

 水平で飛びながら爆弾を投下します。利点は、そのまま真っ直ぐに飛び続ければいいので、機体に負荷がかかりません。ですので大型化もしやすく爆弾も大量に積むことができます。
 欠点は目標に着弾しにくいこと。風に流されたりもしますので誤差も出ます。なので、小さな目標物よりは大都市など広範囲に被害を与える用途向きです。B-17やB-29などの四発爆撃機は何トンもの爆弾を搭載できました。ドイツも日本も散々これにやられました。

 もう一つが急降下爆撃機です。この最大のメリットは命中率が格段に向上すること。軍船や戦車など、小さな目標物に向いています。

急降下爆撃.png
着弾誤差が小さいのが分かります。
 

 デメリットは急降下と、引き起こしにかかる衝撃に耐える機体強度が必要なので、大型化が難しいこと。ですので、搭載できる爆弾も250Kg〜900kgなど少ないものになります。
 ですので的になる艦船への攻撃には急降下爆撃は命中率が高いので有効なのですが、沈没させるにはやや威力不足。そこで、土手っ腹に穴を空ける魚雷攻撃ができる雷撃機とコンビを組みことが多いです。九七式艦攻&九九式艦爆、天山&彗星、TBFアベンジャー&SB2Cヘルダイバーなどですね。

アメリカ艦上機.jpg
上段が雷撃機(TB)の系譜。下段が急降下爆撃機(SB)の系譜

 もうひとつのデメリットは、目標物に向かって真っ直ぐに近づいてくるので、相手側としては狙いやすいとうこともあります。なので被弾率は非常に高いです。両者命がけのデスマッチとなる訳です。

◆ヘルダイバーの名はカイツブリという水鳥の意味


 そんなイメージが強い急降下爆撃機ですが、
SB2Cの愛称は「ヘルダイバー」。「地獄へ向かって果敢にダイブする」そんなイメージがまさにぴったりない感じがしましす。しかし実はこれ、鳥の名前から来ているんですね。それがこれ、「カイツブリ」という水鳥。

1024px-Wiki-kaituburi-1-1 copy.jpg
よく見ると目が点になっていて愛嬌ありますね(^^)


 池や沼や湖などでよく見かけられ、餌を捕るためにアッという間にもぐってしまい、あちらの方でポッカリ浮かびあがるという潜水の名手なのです。泳ぎに最適化しており、長く潜水する水鳥なんですね。
 ヘルダイバー(Helldiver)とは、英語圏でのカイツブリの別名ということでした。

 さらに言うと、この
SB2C"ヘルダイバー"は実は二代目で、初代ヘルダイバーが存在していたのでした。
 それがこちら、SBCヘルダイバー。1935年に初飛行。複葉機ながら金属製の胴体と引き込み脚を有しているのが特徴で、この時期の技術革新の狭間を感じるデザインです。
 たしかにこの丸っこいフォルムと急降下する姿は、空のカイツブリという感じですね。

SBC-4_New_York_Naval_Air_Reserve_1941.jpg
1942年まで使われました。

 しかし、この初代が成功したため、「ヘルダイバー」がアメリカの急降下爆撃機の代名詞のような扱いになります。そんなら二代目は「ヘルダイバーⅡ」でもいいじゃんと思うのですが。
 ちなみにドイツでは急降下爆撃機の代名詞というと、Ju87スツーカが有名。このスツーカという名称もドイツ語で
急降下爆撃機を意味する「Sturzkampfflugzeug」という言葉から来ています。

Ju87G_11.jpg

◆アメリカ海軍機の愛称

 さて、この頃のアメリカ海軍機の愛称は、なかなか勇ましく、

SBD ドーントレス : Dauntless, 恐れを知らない、勇敢な、不撓不屈のなどの意
BTD デストロイヤー
Destroye,破壊する者などの意
SB2A バッカニア:Buccaneer,国家承認の海賊
XTB2D スカイパイレート:
SkyPirate:空の海賊の意味
TBD デヴァステイター
: Devastator, 荒廃させるもの,破壊者の意
TBF
アヴェンジャー:Avenger ,復讐者、報復者の意 などなど。

アメリカ艦上機.jpg
この4機種を覚えておけばOKです。

 TBFアヴァンジャーなどは、TBFのお披露目の日がちょうど真珠湾攻撃の日だったためにその場で名付けられたという噂もあります(実際はもっと前)。
 そう思うとヘルダイバーは、鳥の名前なんてアメリカ機では、ちょっと変わっていますね。この頃には急降下爆撃機の代名詞として通用していたというのもあるのでしょうか。
 まあ、ヘルダイバー=地獄へ向かってダイブだぜ!のイメージは日本だけなのかな?

Cap 290.jpg

 さて、おエライ方々はこのようなカッコよくて勇ましい名前を付けますが、現場の将兵たちは俗語を付けるのは当たり前(笑)。色々なネームで呼んだりします。

・「Yo!サノバビッチ!お前は2流のセカンドクラスだぜ!」〜SB2Cヘルダイバー

 SBC2Cは、急降下爆撃以外に魚雷も搭載できて雷撃も可能ということで上層部の受けは良かったのですが、現場では使いづらいしトラブルが多いと悪評で、SB2C=
サノバビッチ・セカンドクラス(Son of a Bitch 2nd Class)、「二流のろくでなし」と呼ばれ、忌み嫌われていました。
 ちなみにサノバビッチとは、直訳では「娼婦の息子」ですが、日本で言うところの
「くそやろう」「ちくしょー」という意味です・・・。
 なんかトラブルがあった時、クソっ!SB2C(サノバビッチセカンドクラスという意味で)!」と中指を立てて叫んでいたかもしれませんな。

「お前はノロマだが必殺の野郎だ!」〜SBDドーントレス 

 逆にSBDドーントレスは、速度を除けばパイロットからの評価は高かったため、こちらも型番をもじって、SBD=スロー・バット・デットリー(Slow But Deadly)「遅いが、必殺」と呼ばれていました。

 芸人のDAIGOの略語ネタのようで面白いですね。他にもあるのか調べたくなってきました(^^)

 ちなみにSBDだのTBFなどややこしいですが、
SBは偵察爆撃機 (Scout Bomber) を意味し、TBは雷撃爆撃機 (Torpedo Bomber)を指します。その後にあるDなどCなどの記号はダグラス社、カーチス社などの航空機会社のメーカー記号です。
 SB2Cは、カーチス社の2番めに開発した偵察爆撃機、
F6F はグラマン社の戦闘機で海軍に採用された6番目の機体という意味ですね。
 アメリカでは偵察爆撃機が主に急降下爆撃機の任務も担っていたためにこうなってます。

◆雷撃機と急降下爆撃機はA−1スカイレーダーで統合される

 さて、このような急降下爆撃機は、艦船攻撃で魚雷を積んだ水平爆撃を行う雷撃機とタッグを組むことが多いのですが、狭い空母の甲板上ではなるべく機種を増やしたくないのが理想です。 そこでエンジンの性能が上がって余力が生まれてくるようになると、この両者を統合しようという話が出てきます。

 日本でも同じような話が出ていて九七式艦攻の後継機「天山」と九九式艦爆の後継機「彗星」の配備も不十分なまま、両者を統合したような性能を持つ「流星」がすでに開発中でした。

Curtiss_SB2C_col.jpg

 SB2Cヘルダイバーはその統合機(マルチロール機)の走りでもあり、魚雷も搭載できるようになっていましたが、現場では、先程述べたようにように評判はよくありません。何と言っても「サノバビッチ・セカンドクラス」ですからね(;^ω^)
 そこで生まれたのがA−1スカイレーダーです。初飛行は終戦の年の1945年の3月でした。終戦で間に合いませんでしたが、高性能になった機体はジェット機が主流になった、その後の朝鮮戦争、ベトナム戦争でも活躍します。

300px-A-1H.jpg
A−1スカイレーダー

 急降下爆撃ですが、現代ではほとんど実施されていません。これは、発達した高射砲や地対空ミサイルに対して危険であること、誘導爆弾や巡航ミサイルが普及したことが上げられます。
 急降下爆撃は過去のものとなってしまいました。

<関連記事>


→日米の艦載機の後継機問題
→VSシリーズの2017年第1弾は「流星」と「SB2C-4」ヘルダイバー!

→デアゴスティーニ第10号は愛知「流星」

→運べないものは何もないA-1スカイレーダー

<今日の一枚>

IMG_5443.jpg

 今月2度目の東京出張です。日本橋の兜町を歩きました。経済・ビジネスとしての色が強い街で、東京証券取引所を中心とした日本を代表する金融街ですが人通りは少ない感じでした。

 「兜町」は平将門の兜を埋めて塚にした所を兜山と云ったところから由来しているといいます。兜神社の写真を撮ってきたのですが、誤って消去してしまいました(;_;)また行きます。
 他に兜神社の由来で、源義家が出てきたのはなんか嬉しかったですね。義家好きです。
ダイゴ風に言えば、MYS(みなもと、よしいえ、好きだぜ)ですかね(笑)。

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コメント 6

YUTAじい

おはようございます。
何時もお勉強させて頂きありがとうございます。
by YUTAじい (2017-01-29 06:38) 

hana2017

おはようございます。
アメリカ軍機の襲撃時、パイロットの顔まで見えた…と聞きますが。それって言いかえるなら、相手側からはもっと良く見えていたと言う事ですよね。
人種差別感情の強い当時、日本人なんて虫けらと同じであったのでしょう。
今も大して変わっていないかもしれませんけど。。
by hana2017 (2017-01-29 07:36) 

johncomeback

今日も勉強させていただきました。
ホンとにワンモアさんは造詣が深いなぁ(^-^)
by johncomeback (2017-01-29 09:35) 

caveruna

DAI語が炸裂ですね(笑)
by caveruna (2017-01-29 12:06) 

ぼんぼちぼちぼち

へー、ヘルダイバーってカイツブリのことだったのでやすね。
カイツブリ、おっしゃるとおりポチッとしたお目目が可愛いでやすね。
by ぼんぼちぼちぼち (2017-01-29 12:23) 

ワンモア

★YUTAじいさま
 こんばんは〜一日違いで淺草でしたね(;^ω^)

★hana2017さま
 人種差別は今考えている以上のものがあったと思いますよ。

★johncomebackさま
 また是非、いらしてくださいませ(^^)

★caverunaさま
 DAI語。私の中でブームになりそうです(笑)

★ぼんぼちぼちぼちさま
 なんかアニメに出てくるような鳥の目ですよね(;^ω^)
by ワンモア (2017-01-29 20:52) 

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