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無洗米と、とぎ汁との関係

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とぎ汁が出ない無洗米

 前回の記事で、無洗米の疑問を上げた所、知り合いの奥さんらからメールとLINEでご意見を頂きました。
 知り合いの主婦の方は無洗米にしているのは、米のとぎ汁が水質を汚すからと聞いたからだそうで。「研ぐのが面倒という理由もありますが、それだけではないですよ〜( ˘•ω•˘ )」とのこと。どうもスミマセンでした^^;
 うちの嫁さんは無洗米は忙しい時に失敗しないからとのこと。
 お米の味って研ぎ方で変わるので、忙しいと、つい失敗することもあるそうなのです
新米や精米したての鮮度のよい米はやさしく、鮮度の落ちた古米はしっかり研ぐなど)。
 お年寄りの方々は無洗米は研がないと不安とか、手抜きじゃないのかとかの抵抗があるようですね。無洗米の品種も白米に比べると少ないので味の面で不満のある方もいるようです。

 サイトなどで興味が湧いたのは、
全国無洗米協会「とぎ汁は海や河川の水質汚染の最たるもの」という意見。えっ!ホントなの?江戸時代の河川とか、昔から直接川に流していたじゃん。もっと環境に悪い洗剤とか生活汚水とかあるんじゃないの?というのが率直な疑問だったので調べてみることにしました。

 そもそも、何故とぎ汁が水質汚染につながるかというと、とぎ汁に含まれるヌカ成分のチッソ、リンが河川や海などの水の富栄養化をもたらし、赤潮、アオコ等の発生原因にもなってしまうからとのこと。これらの成分は下水処理ではほとんど処理できないそうです(全国無洗米協会の弁)。とぎ汁の有機物は毒があるというより、栄養があるので、光合成が活発化してプランクトンの異常発生してしまい、その死滅化がヘドロや水質悪化を生み出してしまうのですね。

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長崎で発生した赤潮


全国無洗米協会
の意見

 
「海や川の汚染原因の70%は家庭排水で、その半分は台所排水。台所排水の大部分がとぎ汁で、四十万トンものヌカが川や海の底にヘドロとなって堆積している。しかも、とぎ汁に含まれる大量のリンや窒素は下水処理してもほとんど除去できず、アオコや赤潮の原因になっている環境破壊の帝王」とまで。


 東洋精米機製作所の社長で、全国無洗米協会の名誉会長を兼ねる雑賀慶二氏は講演で、紀淡海峡の汚濁を目の当たりにして無洗米の開発を決意したと語り、「目標を達成するにはすべての米を無洗米に替えてしまう必要がある」とまで話しているそうです。

 これに真っ向から反対しているのが、
農民連さんの意見で、「それは誇大表現で、とぎ汁よりももっと水質に害を与える悪いものがあるのに、とぎ汁が環境破壊の帝王のように言うのは(自分たちの利益のために)無洗米を普及させたい思惑があるかじゃないのか」という意見。

農民連さんでは以下の各担当や部署のデータや意見も載せています。

東京都環境局広域監視課
 「窒素やリンは完全には除去できていないが、『ほとんど除去できない』ということはない。また全体で見て、米のとぎ汁が河川の汚染の最大原因ということはない」


「日本の伝統食を考える会」
 「専門家に依頼した調査によると、家庭排水に占める米のとぎ汁の比率はごくわずかで、けっしてワースト1といえるものではありません。」

  これによるとBOD(生物化学的酸素要求量)の負荷が一番かかるのは、明らかに屎尿13.0g(30%)で、米のとぎ汁は1.2g(全体の2.79%)と少ないです。うーん、そうだと思います。
 それよりも、ラーメンやおでんの煮汁、洗剤、洗濯、シャンプーなどの方がBDO負荷量が多いですね。下のサイトではその表も見ることができます。

 4人家族の場合の一日の排出容量
http://www.nouminren.ne.jp/dat/200204/2002042206.htm


 その他の自治体でも、米のとぎ汁を台所に流さないでくださいとは書かれていませんね。 それは、汚れの一因ではあるけど、水再生センターで充分処理が可能とのこと(横浜市環境創造局)。ただ、下水道の整備されていないところでは、川や海に生活排水が流れることになるので、とぎ汁をそのまま流すと水質汚濁の直接の原因になるとあります。

 もし、以下のものをそのまま流してしまうと魚が住める状態になるには浴槽(300㍑)何杯分の水が必要なのかを示した図があります。

 ちなみにこれは、そのまま川や海に流した場合で、下水道や浄化槽などで生活排水を綺麗にすることができますが家庭でもなるべく心がけてくださいとの呼びかけですね。

 天ぷら油、すごいですね。確かに直接流してはいけないとはよく聞く話ですが、でも、とぎ汁自体はそんなに悪くないですね。全国無洗米協会が言うように、そんなにとぎ汁が悪いなら生活排水で直接流さないように各自治体が注意勧告していたはずですが、それは聞いたことがありません。

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お米は每日研がないけど、合成洗剤の食器洗いは每日します。


以下の両方の意見を読み比べてみると興味深いです。

とぎ汁の環境への影響(全国無洗米協会)

え!「とぎ汁が環境破壊の帝王」? 無洗米の誇大宣伝
検証(農民連)

 農民連の記事ではさらに、「胡散臭さを感じるのは、この無洗米製造装置を販売する企業の徹底した秘密主義と特許をめぐる争いにある」とも指摘しています。
 「圧倒的シュアをもつ、東洋精米機製作所では、製造工程をいっさい公開していません。同社は、無洗米装置を売るのではなく貸し出す契約にして、鍵付きの隔離部屋に設置し、米卸など導入業者にはいっさい手を触れさせずに自社の社員がメンテナンスを行い、メンテナンス料を徴収しています。
 こうして徹底的に製造方法を隠す一方で同社は、同業他社を「特許権が侵害された」として裁判に訴えています。

 しかし、もし本当に水質浄化が目的ならば、技術をオープンにして開発を推し進めるべきではないでしょうか。それをしないのは結局、儲け主義を覆い隠す方便に過ぎないことを物語っています」とのお厳しいお言葉。


 製法自体は説明していてもその実態はブラックボックス化されているんですね。

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 この記事を読んで対比してしまうのは、インスタントラーメンを開発した日清食品の安藤百福氏でしょうか。食文化の貢献のために自らの製法特許権を公開して他のメーカーでも製造できるようにしたのです。その結果、インスタントラーメンは全世界に普及することになりました。東洋精米機製作所はどうするのでしょうか。
 また、この製法は、海外への機械の輸出・貸し出しはしないそうですが、その点も気になります。もし、水質悪化が最大の開発理由ならば、日本よりも下水処理が悪い東南アジアや海外にこそ、無洗米製法を輸出するべきではないかと思うのですが・・・。


 元々は無洗米はまずいということで最初はあまり普及しませんでした(水の量とか研ぎ方にコツがいるため)。しかしエコブームになって、生協が扱うようになって、環境にやさしい無洗米ということをPRし始めてからブームになって普及していったという経緯があります。
 その反面、通常の白米のとぎ汁は水質悪化の最大の悪玉というPRと表裏一体なのです。なの無洗米と水質汚染問題とは切り離せないとは思うのですが、全国無洗米協会の言い分を、そのまま鵜呑みにするのは、正直ちょっと眉唾的な感じもします。

 東洋精米機製作所は、その後、栄養と味を両立させようと「金芽米」なども開発しています。企業努力はかなりなものだと思うのです。

 また、無洗米を製造するにあたって得たヌカを、有機質肥料や飼料にして循環型農業にも有効活用しているところは素晴らしいと思うのです。

 私は無洗米を否定する気にはなりませんし、環境に優しいのも事実であると思います。 また每日の主婦の方々など忙しい時などは便利なものです。企業の姿勢も色々と批判はありますが、その努力は大したものだと思うのです。
 でも、無洗米以外のお米が環境問題などを理由に全て駆逐されることには反対ですし、そのことで、とある独占企業が生まれるのはもっと反対です。
 環境破壊という罪悪感を植え付けられて、日本の古来から続いている
食と食文化を一部の企業に握られてしまうのは、考えてみると恐ろしいことだと思います。
 とぎ汁こそが、水質悪化の最大元凶であるならば、お米が主食の日本では、一企業に任せず、国家プロジェクトで真っ先に取り組むべき問題ではないでしょうか。
 有機物を取り除く下水処理もそれにかかるCO2の削減なども、まだまだ技術開発の余地も残されている段階で、今まで日本人が食べてきた白米を駆逐してしまおうとするのは早計に思うのです。

 むしろ、食べ残しの汁などをそのまま台所に流すほうが悪いことが数値でも出ていますし、合成洗剤などに注意した方が汚染対策として優先順位が高いのではないでしょうか。

 お米を研ぐ作業って、大変だけどその分、家族への愛情がこもると思うのです。これを無くすことが正しいこととは思えないのです。

 個人的に思うには、通常の下水処理がされている街に住んでいる方は、米のとぎ汁が即、環境汚染に繋がるとは必要以上に意識しなくてもいいと思います。
 それよりも、食べ物の残り汁を直接流すとか、洗剤、シャンプーなどを必要以上に流さない方が重要に思います。

 ただ、下水道が整備されていないところでは、そのまま川や海に生活排水が流れ出ますので、とぎ汁をそのまま流すと水質汚濁の直接の原因になるということは知っておいた方が良いです。ですので、野外で炊事をする時は無洗米の方が良いかと思います。また食べ残しの汁などは必ず持ち帰るようにするとかですね。

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◆とぎ汁と付き合う方法

昔はこうしてエコサイクルをしていたのかもしれません。
アク抜きから、洗濯、洗剤、肥料など

→「米のとぎ汁」を最大限に使う14の活用法(NAVER)

 これは、とぎ汁が生活の中で多くの利点があるため、「捨てるのがもったいない」という発想のように思うのです。
 そういえば、我が家が無洗米にして残念に思ったのは、大根の下茹でにとぎ汁が使えなくなったことでした。
ふろふき大根が好きな自分としては、わざわざ普通の白米を買ってきてとぎ汁を作ったほどでした。 
 なので、せっかく美味しいお米を食べるのに、研いだとぎ汁が環境汚染につながるというネガティブな発想より、せっかく色々使えるのだから、台所に流してしまうのはもったいないという発想の方が良いと思うのです。
 その方が、ご飯もより一層、美味しく食べることができるのではないでしょうか。

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コイン精米機に残したヌカもどうなっていくのか、気になります・・・^^;


 またそれとは別に、自分たち暮らす自治体が、自分たちの生活排水をどのように処理しているのかを調べるのは大切なことですし、少しでも環境汚染をくい止めることに貢献する努力は一人一人が自主的に行っていくべきことだと思うのです。

 ということで「無洗米」について色々と調べて勉強になりました^^ 
 結論としては、我が家ではとぎ汁も有効活用したいので、無洗米と普通のお米と両方付き合うことにします。

興味のある方はこんなサイトもどうぞ。
→天地米店の語る「無洗米考  -要約-」


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tiyo

詳しく調べていただきありがとうございます。いろいろな立場の人が極端な意見を言うのでどれが正しいかなど我々にはわかりません。似たような議論は漁協が長年取り組んでいるわかしお石鹸にもみられます。私の意見はワンモアさんの結論と同じです。私が言いたかったのは、悪意は全くないのに知らず知らずのうちに環境に負荷がかかる生活をしていることです。私は頼みの綱の終末処理場が余裕をもって稼働できるよう家庭からの廃水にちょっとの気遣いをしたいと考えています。米のとぎ汁は流す前にもう一仕事してもらえればもうりっぱにエコですよね。模型工作でリスペクトするワンモアさんとこんな話になるとは。今後ともよろしくお願いします。
by tiyo (2015-12-13 10:28) 

ワンモア

★tiyo さま
 こんにちは〜。今回はTiyoさまのコメントも気になって色々と水質汚染の原因について調べたくなりました。問題提議をしてくださり感謝しております。
 おかげさまで、私も意識が高まりました。家庭からの廃水がどのように流れていくのかを知ることはとても大切に思います。ブログのタイトルとは別の内容になりましたが(笑)良い機会を与えてくださり、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします^^

by ワンモア (2015-12-13 11:09) 

アニ

御飯が大好きで、お米を研ぐのも大好きなので無洗米を使うことはありません。
ちなみに我が家の精米機は無洗米も作れます。
by アニ (2015-12-13 11:36) 

なんだかなぁ〜!! 横 濱男

勉強になりました。
正しい情報を意図的に流さず、
ライバルに目の敵のように言われると困りますね。
紳士的に願いたいものです。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2015-12-13 13:14) 

ワンモア

★アニさま
 こんばんは~、お米を研ぐのが好きって方、多いですよね。家庭精米機、いつか記事にして下さい^^
 
★なんだかなぁ〜!! 横 濱男さま
 マスコミの流す健康ブームや自然食の宣伝には、すぐに飛びつかないようにしています^^;
 なるべく自分で調べてみたいですね(^o^)
by ワンモア (2015-12-13 13:20) 

隊長

隊長も、とぎ汁よりも食用油の方が、水質に害を与えていると思いますよ。無洗米を普及させようとするなら、そんなネガティブキャンペーンではなく、無洗米の良い点をもっとアピールすべきでしょうね。
by 隊長 (2015-12-13 16:33) 

ワンモア

★隊長さま
こんばんは~。私も隊長さんと同じで、
ネガティブキャンペーンってすきじゃないのです。
無洗米は無洗米の良さがあるのですから、
相手を攻撃するよりも良さをPRして欲しいですね。
by ワンモア (2015-12-14 21:55) 

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