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革新技術にあふれた飛行機、九七式1号艦攻撃機


九七ブログ用.jpg
最後の月は、中島飛行機が勢揃い

 2月になりましたね。今週は「立春」で寒さの頂点。これを過ぎれば後は暖かくなるだけですが、今年はどうでしょうか。

◆中島九七式1号艦上攻撃機(B5N1)
 今年で最後になってしまう、「SUBARU名機カレンダー」( ˘•ω•˘ )
 今回は、「九七式1号艦上攻撃機」をご紹介。
 日本の国産単発機で初めての引き込み脚を採用し、海軍機でも初の全金属製低翼単葉機という、画期的な機体なのです。
 この頃の中島飛行機は陸軍と海軍両方の飛行機の受注生産を行っていました。太田工場は陸軍機、小泉工場では海軍機、そして東京工場では発動機を生産しており、その規模は三菱よりも大きく、正に国内最大の航空機メーカーだったのです。

 この九七式艦攻は中島だけでなく、日本の航空技術の先駆けともなった機体で、セミモノコックの金属製の胴体、押出形材を桁フランジに使用した構造、 アクリルガラスの密閉式風防、油圧で作動する引き込み脚など革新技術を積極的に取り入れています。
 なにせ、一年前に採用になっていた九六式艦攻の姿がこれですから。

九六式艦攻.jpg


わずか一年でこのスタイルですから、すごい進歩ですよね。

Cap 746.jpg


 密閉式の風防は、パイロットが嫌がって、なかなか採用させてくれなかったそうですが、機体の最高速度も高度も向上してくると、そんなことも言っていられなくなります。
 そういう意味では、海軍の搭乗員たちにとってこの飛行機は、意識変革を促す意味でも転換点になった機体ではないでしょうか。

 九七式1号艦上攻撃機と同時期に陸軍の主力戦闘機、九七式戦闘機(キ27)もこの時期に開発されていますね。

九七式.jpg
九七式戦闘機。この次に登場するのが有名な「隼」です。


◆九七式1号と2号はまったく別の機体!

 さて、1937年(昭和12年)に採用された、この九七式艦攻ですが、採用にあたって、中島案と三菱案と競争試作させていたのですが、甲乙つけがたい性能で両案とも採用になったという極めて珍しい結果になっています。
 中島案が九七式1号艦攻攻撃機として、三菱案が九七式2号艦上攻撃機として採用になりました。
 なので、両者は同じ名の「九七式艦上攻撃機」でも、まったく別の機体なのです。
 ちなみに三菱案はこれ。

九七2号.jpg


 まったく違いますね。固定脚のせいでしょうか、どことなく、洗練されていない感じがします。共に速力は380km/h位で、兵装も武装も同じでしたが、安定性の点で2号機を好む搭乗員もいたそうです。

 両者は、ほぼ同じ性能でしたが、中島製の方が、当初の搭載予定だった「栄」エンジンを搭載した3号を開発してきましたので、その性能差は開き、生産の中心は中島製の九七式艦攻に移るようになりました。
 結局、中島1号/3号の方が合計1,400機ほど生産され、戦争の主力機として活躍することになるのですが、三菱2号機の方は150機ほどの生産で終了、専ら訓練や哨戒などの任務に用いられました。
 後に海軍式の型番の命名方式になり、
中島製九七式1号艦攻→九七式艦攻11型
中島製九七式3号艦攻→九七式艦攻12型(エンジンが変わったため)となります。

三菱の九七式2号は、九七式艦攻61型と改称されました。 

本命の「栄11型」エンジンを搭載した3号機は1939年に制式化され、実戦部隊に揃うとほぼ同時に太平洋戦争が始まります。
 最大高速で浅瀬の魚雷投下が可能な最新技術と搭乗員の練度、真珠湾攻撃での活躍は、前回の記事でも紹介した通りです。
 後継機は「天山」になるのですが、開発が遅れ、九七式艦攻は戦争の第一線を引くことなく最後まで戦い続けた飛行機となるのでした。


◆九七式1号艦攻は中国大陸でデビュー 
 さて、カレンダーに登場する中島九七式1号艦攻ですが、初飛行は1937年1月8日。本命の「栄11型」エンジンではないとはいえ、革新的な機体は中国大陸の前線でも大いにもてはやされ活躍します。

九七式艦攻.jpg

 

 広がる青い海の上にして優雅に飛行する九七式艦攻。海と空が一体となった蒼い世界が広がります。主役の飛行機をあえて中央に配置しないところに小池氏の非凡な才能が光ります。風景と一体化した飛行機。絵全体が幻想的でありつつも、飛行機のリアリティもしっかりと描きこまれていてモデラーたちの期待も裏切らない。うーん、こんな絵を描けるなんて・・・。

 アクリルガラスの風防に日があたっている描写も細かいですね。密閉式とはいえ、搭乗員たちは、全員が風防を開放しているのがわかります。最新鋭の密閉式にはまだ慣れていないのでしょうか、彼らにはまだ、直接聞こえる風とエンジン音のハーモニーが心地よいのかもしれません。3名の座席の高低なども正確に描かれています。

九七式01.jpg
影の描写も最高ですね。
九七式23.jpg

 この時ばかりは搭乗員たちも今が戦争であることを忘れてしまうのではないでしょうか。世界はいつだって美しくしいのですが、人間が感動の目で見ることができなくなるんですね。いつもそこに存在する自然の美しさを忘れないようにしたいものです。

<関連記事>
→川棚海軍工廠と航空用九一式魚雷
→日本の酸素魚雷と航空兵器
→雷撃の神様と言われた男、村田重治と九七式艦攻



<SUBARU名機カレンダー>
2015年
12月 三式艦上戦闘機、九〇式艦上戦闘機
2016年
1月 アメリカ フォード5ATトライモーター旅客機

2月   九七式1号艦上攻撃機
3月 イギリス スーパーマリン スピットファイヤーMk.VIII戦闘機
4月   艦上攻撃機「天山」
5月 アメリカ カーチスNC-4飛行艇
6月    九七式戦闘機
7月 ドイツ アラドAr196A水上偵察機
8月  一式戦「隼」 
9月 フランス カムス53旅客飛行艇
10月  二式戦「鍾馗」 
11月 艦上偵察機「彩雲」
12月   四式戦「疾風」

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コメント 2

caveruna

素敵なカレンダーですね!
終わっても捨てられませんね^^
by caveruna (2016-02-02 11:16) 

ワンモア

こんばんは〜。
はい、切り取って保存してあります。
額に入れて家中に飾りたいなぁ^^;
私は、この一枚で、小一時間、鑑賞とお酒が飲めます(笑)
by ワンモア (2016-02-03 19:15) 

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