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”赤い彗星”の真実〜Me163の話

 前記事でウイングキットコレクションVS6のMe163Bの購入レビューを書きましたが、もうひとつ購入したスピットファイアのレビューの前にMe163の補足を。
Me163b.jpg

◆”赤い彗星”の真実


 この機体、真っ赤ですが、第16実験部隊所属の機体。司令のヴォルフガング・シュペーテ大尉Me163Bの初の実戦時に搭乗した時に塗られたとされています。
Wolfgang_Späte.jpg

 ヴォルフガング・シュペーテ大尉(1911〜1997)は、このMe163Bの第16実験部隊の司令官で、この革新的な機体のあらゆるテストと改良の現場責任者です。
 その後、戦局の悪化で前線に戻されたりしますが、実用化の目処がたった1944年8月に初のロケット機実戦部隊JG400に戻され、中隊長→司令へと昇進しました。

 Me163Bの初の実戦の出撃は1944年の5月14日。
 それまで自力での飛行はまだ5回しか行っていないこの機体は急遽真っ赤な塗装にされていまいます。実験中なら分かりますが、いざ本番という時になんで赤く塗られてしまったのか。
 これ、実験部隊の整備兵たちの士気が勝手に盛り上がっちゃって、「そうだ、第一次世界大戦のエース、リヒトホーフェンにちなんで真っ赤にしよう」となったらしいです(;^ω^) 。

 マンフレート・フォン・リヒトホーフェンは、第一次世界大戦の80機撃墜のエースパイロット。乗機を鮮紅色に塗装していたことから「レッド・バロン」や「赤い悪魔」の異名で呼ばれたエース中のエース。
ガンダムに出てくるシャア・アズナブルの「赤い彗星」もここからリスペクトされているとのこと。
レッドバロン.jpg

バイクのレッドバロンも有名ですよね。

 ひと昔なら、真っ赤にして敵に恐怖感を与え、敵味方共に自分の存在を誇示する中世の騎士的なものは効果があったかもしれません。
 しかし時代遅れのド派手な塗装は、
シュペーテ大尉の機嫌を大いに損ねます。こんなに目立って、燃料が切れて帰還する時に狙われやすいというのもその理由。塗装に使った塗料は18kgもあったそうですから、余計な消費にもなります。

 Me163は、通称コメートと言われ、ドイツ語で彗星の意味でした。正に、「赤い彗星」の異名となったこの機体、シュペーテ大尉の不評を買ってすぐに元の塗装に戻すように指示されたとか。

◆敵よりも味方に危険なロケット機Me163B


 さて、このコメートにまつわる、よくある話は、燃料が危険で事故でその液を浴びたパイロットが溶けるという話なんです。松本零士の「ザ・コクピット」でも取り上げられていました。
 実際に、その燃料と酸化剤は爆発性と腐食性が極めて強く、搭乗員や整備員は非戦闘時も生命の危険にさらされていました。実験将校のヨーゼフ・ベース中尉は、着陸時の衝撃で意識を失っている間に、燃料が漏れたT液で溶解してしまったとも(;°皿°)
エルベの蛍火.jpg
ザ・コクピット第三巻「エルベの蛍火」より

  ロケットエンジンの信頼性も低く空中戦の際にも加速度の影響で、ロケットエンジンが止まり、Me262同様、一旦着陸態勢に入ると敵戦闘機の好餌となります。
 着陸もソリでしたので、爆発や故障による不時着や墜落が続発しました。戦果よりも、事故などでの死傷者の方が多かったと言われています。

 こんなに危険な戦闘機であるにもかかわらず搭乗員たちは音速に近い世界最速の高速性能の魅力に取り憑かれてしまったのか、「悪女の魅力」とみなして本機を愛好したといいますからなんともですね。

当時の貴重な映像はこちらです。
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コメント 9

ロートレー

着陸時に一般の飛行機のようにフレアーをかけると、急激に浮力を失ったみたいですね。
テストパイロットも乗員も命がけですね!
by ロートレー (2017-04-28 19:08) 

Hide

こんばんは〜
バズーカ砲を持っているロボは事務所に置いてありますが
重いのなんの、動かせません。子供に人気がありますが
どんどん壊されて行き・・・只今、左腕はありません><

by Hide (2017-04-28 21:38) 

tsumi

ね…燃料でパイロットが溶けるなんて…ホラーですね…
現実にこういう話が存在していることに驚きです。普通、使わないですよね…?!
本当にこの時代の人というのか、この世界に生きるの人たちというのか…価値観が違い過ぎて毎度驚かされます笑
by tsumi (2017-04-29 00:13) 

johncomeback

拙ブログへのコメントありがとうございます。
プレミアムフライデー、イマイチ盛り上がっていませんね。
官公庁が率先してやったら良いのでは?
by johncomeback (2017-04-29 08:50) 

ワンモア

★ ロートレーさま
 お、お詳しいですね。とても実用機とは思えない危険な飛行機でしたが、地上最速の機体という魅力には抗えないものがあったようですね。

★Hideさま
 シャア専用ザク?(笑)

★tsumiさま
 技術のあらゆる可能性にチャンレジしたいというのは人間の根源的な欲求なのかもしれませんね。この時代のドイツは存亡がかかっていたし、狂気のような情熱を感じてしまいます。

★johncomebackさま
 プレミアムフライデー、まあ、まだ数回ですからね(;^ω^)
 東京では官公庁もすでにおこなっているようですよ。個人的にはまったく関係がないのですが、金曜の午後からイベントや早めのディナー、買い物などで楽しむ人たちが街に溢れるといいなぁと思っています。
 祭りと同じで、自分は参加できなくても笑顔が見れると嬉しいものです。


by ワンモア (2017-04-29 09:26) 

kiyo

こうしてみると、規制が入る前の燃料競争時代のF1で、危険と言われた頃のF1燃料も、可愛いものですね。
ロケット燃料はまさしく命に関わる燃料だったのですね。
by kiyo (2017-04-29 10:25) 

ワンモア

★kiyo さま
 危険と引き換えの高速度には抗えないものがあるのでしょうか。
by ワンモア (2017-04-30 13:28) 

caveruna

確かに、真っ赤な戦闘って、なんか怖い・・・
by caveruna (2017-05-02 16:59) 

ワンモア

★caverunaさま
 昔の中世の騎士の名残なのです。目立つことで「我ここにおり」と存在感を示し、敵の軍勢何するものぞと味方を鼓舞する意味もあるのです。まあ、戦国で言うと傾奇者ですな(^^)
by ワンモア (2017-05-02 21:48) 

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