アニメ「よみがえる空」より
災害、遭難、 突然我が身に降りかかる災難。私たちは、いつどこで何に巻き込まれるか分かりません。生命の危機に陥った時に駆けつけてくれる人たちは本当にありがたい存在です。 日本には警察、消防、海上保安庁など様々な組織が存在しています。しかしあなたの置かれている状況が非常に危険であり、せっかく駆けつけたにもかかわらず、何とも出来ない状況である時。その 絶望感たるや・・・。
駆けつけたヘリが悪天候で救助できない場合も・・・。
(アニメ「よみがえる空」より)
しかし、これらの救難組織があなたを救出することが困難であったとしても、まだ最後の切り札が日本には存在します。 それが、航空救難団。そう、彼らは人命救助の最後の砦とも言われている救難隊の精鋭中の精鋭であるのです。本ブログでは、今回から彼らとその相棒の翼の話を記事にしたいと思います。
現在のUH-60JとU-125A。救難チームはいつもペアで活動しています。
「人命救助の最後の砦」と言われる所以
航空救難団は、埼玉県の航空自衛隊の入間基地に司令部を持ち、全国10箇所に救難隊を配置しています。彼らの主目的はベイルアウト(緊急脱出)した搭乗員たちを救出すること。 特に戦闘機は敵機に撃墜される可能性が高いです。日本の戦闘機乗りは一人を育てるのに数億円かかり、国内約300機の戦闘機を操縦する貴重な人材(戦闘機パイロットの人数は機密情報)です。いつ、どこで撃ち落とされるか分からない状況で、ベイルアウトした場合、どんな状況下であれ速やかに現場に駆けつけ、発見し、救出すること。これが本来の使命なので、彼らはマルチフェイズで活動できるポテンシャルを備えているわけです。
アニメ「よみがえる空」より リアルなCG!
ですので、民間人救助の場合、消防、警察、海上保安庁などの組織では装備的にも技術的にも救助が困難な状況の場合、彼らに救援要請が入ります。 「 他に助けられる存在はいない。自分たちが最後の砦である。 自分たちが駆けつけなければ、遭難者は確実に命を落とすことになる」、「最後の砦」の持つ言葉の意味はとても深く、そして重いものです。 遭難に遭った人たちを彼らはサバイバー(生き残り・生存者の意)と呼んでいるのですが、彼らが見つけ、救助しなければサバイバーの命は確実に無くなるという重圧の中で彼らは動いています。
洋上では遭難者は極小の点にしか見えません
人命救助のスペシャリスト達
彼らのモットーは「That others may live (他を生かすために) 」そのために、自分たちをどう鍛え上げていくかが日々の訓練になります。 彼らの乗機は救難ヘリコプターUH-60Jと捜索機U-125A。チームを組んで24時間365日待機しており、出動命令が下ると戦闘機のスクランブル(対領空侵犯措置)同様、速やかに離陸し、救難にあたります。
◯操縦士 〜戦闘機乗りに劣らない高度な操縦技術 ヘリの操縦は実はかなり難しいと言われており、戦闘機乗りから転属になったパイロットでさえヘリ特有の操縦技術に苦労すると言われています。救難の際は、普段は下りることのない危険区域までいくことも要請されます。平時の操縦とはまったく異なるシケの海での強風、吹雪の高山での視界ゼロの救難。 山間部のヘリの命を奪う高圧線。針の穴に糸を通すような飛行技術 がそこには要求されます。また現場で救難員を下ろし、無事に回収するまで安定した操縦(ホバリング)を続けなければなりません。 ◯ラジオクルー〜 発見しなければ始まらない重要なポジション
航空自衛隊チャンネル (JASDF Official Channel)より
ラジオクルーとは 機上無線員 のことを指します。U-125Aに搭載したレーダーによる探索通信のプロフェッショナルがサバイバーの一刻も早い発見を行います。 救難隊は現場付近に駆けつけたとしても、 まず遭難者を発見しないことには救助が始まりません。いかに早くサバイバーを発見できるか。風や雨で見えない時、一瞬の見逃しがその後の救助を大きく左右することになります。
アニメ「よみがえる空」より 充実した探索機器を装備したU-125A
◯救難員(メデック)〜自衛隊員の中で最も過酷な訓練を積んでいるプロたち 救急救命士でもある 救難員(メデック) は数ある自衛隊の部署の中でも最も厳しいとされています。それは、陸上自衛隊の空挺レジャー資格の取得も通過点に過ぎないという点からも伺えます。それだけの身体能力の高さと技術が彼らは求められています。 救難員はヘリからホイスト(降下用ロープ)で現場に吊り降ろされます。ヘリが強風で煽られる時は最も危険を伴う作業です。そしてヘリが降下できない場合でも、彼らはパラシュートで救助に向かいます。空挺レンジャー過程も彼らにとっては救助で必要な過程なのです。そして海上遭難にそなえて潜水技術も習得過程に・・・・。 まさにどんな現場でも駆けつける屈強の肉体と精神力を持った 救急救命士たちなのですね。
洋上でも雪山でも谷底でも彼らは救助に向かいます。
救難員 の選抜試験は非常に狭き門なのですが、それに合格したとしても、単なるスタートにすぎません。そこから更に己の限界を引き出す訓練が彼らには待っています。それは、「自分が諦めてしまったら、そこでサバイバーの命は失われる」という現実があるからです。「決して諦めない心」と強い精神力が彼らの仕事の柱になるのです。
完璧なチームワークで救助に向かうプロフェッショナルたち
「必ず見つけ出すから諦めずに待っていてくれ」という思いが彼ら全員に備わっているため、プロとしてのチームプレーも完璧を目指します。地上員との連携、僚機との連携、そして救出のためのフォロー。どれもが無駄なく、ただ一つの目的「必ず助ける」という目的に向かって動いていきます。 彼らが今までに救助した人数は約2,600名。災害派遣時には要救助者の救助、急患空輸、被災者の空輸および物資の空輸も行いました。また東日本大震災では消火活動のために200回以上の空中消火も行なってます。 日本にはこのような人々がいることをありがたいなぁと思うと同時に深い敬意を払いたいと思います。
次回は、そんな彼らの相棒となるヒコーキたちをご紹介。人と機械が一体となって作り出すドラマを紹介していきたいと思います。続くです^^
VIDEO 彼らをテーマにした、アニメのオープニングソングです。地味だけど良作^^
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航空救難団、かっこいいですね~。「よみがえる空」ますます見たくなってきました。
by ys_oota (2018-10-27 02:04)
海での捜索・救助は無料で山は有料と聞いた事がありますが、
航空救難団が山で救助活動したら有料なんでしょうか?
by johncomeback (2018-10-27 06:30)
この記事、全編是へぇ~!ナルホド!でしたよ( ̄◇ ̄;)
航空救難団は最強中最強自衛隊員になるのかな(@_@;)
by middrinn (2018-10-27 11:21)
目的は「必ず助ける」事なんですね!素晴らしい仕事です!
楓にスピッツを追加しました!時が流れると忘れますね・・・
by Hide (2018-10-27 13:51)
この素晴らしいプロフェッショナルも、
アクシデントでヘリが墜落すると、殆んど助かりません。
墜落しても助かるような手立てが、無いのかなぁ~!
なんて思ったりします。
by 横 濱男 (2018-10-28 19:13)
☆ys_oota さま
再放送とかやると良いですよね^^
☆johncomebackさま
山岳救助に向かったヘリが墜落して全員死亡という痛ましい事件が埼玉であって、それから埼玉は有料になったと聞きましたが、基本は無料で、一部地方自治体だけだと思いました。
不用意な装備で登山に行かないような対策として立てられたみたいですね。
賛否両論ありますよね。
☆middrinnさま
航空救難団。どうなんでしょうか。何をもって最強と定義するかですが^^
敵地に墜落したサバイバーも救助することも想定されるのでそれなりの訓練をしているそうです。
☆Hideさま
楓にSPITZありがとうございます^^。 忘れはしないよ 時が流れても^^
☆横 濱男さま
その「墜落」という最悪の事態を起こさないように整備も操縦士も訓練を重ねているので・・・。
by ワンモア (2018-10-29 08:41)
ここまでくると、訓練が厳しいだろうなぁとかいう次元ではない気がします。持って生まれた才能かなぁ~
by caveruna (2018-10-29 17:39)
航空自衛隊にそういう部隊があるとは知りませんでした。
防衛、災害復旧だけでなく、最後の砦なのですね。
by kohtyan (2018-10-31 18:03)
☆caverunaさま
自分のことよりも職務に殉じる人たちって確かに存在すると思います。
素晴らしい人たちですよね。
☆kohtyanさま
装備の充実、教育訓練など最後の砦にふさわしい部隊であると思います。
by ワンモア (2018-10-31 21:37)