前回の双発戦闘機の記事の続きです。
大型新人として皆の期待を一心に背負いデビューしたものの、大勝負の舞台で大失敗。期待外れの烙印を押され、失望と非難の眼差しで左遷の憂き目に。このまま退職するまで寂しい人生かと思いきや、新しく出来た職場で大活躍。再び脚光を浴びて主役に返り咲き、後輩たちも参入し苦戦するものの、なんとか定年まで頑張ったサラリーマン。そんなストーリーがぴったりに思える双発戦闘機たちの物語です。
「爆撃機に随行して敵陣深く侵攻し、迎撃に上がってきた敵機と戦い援護する」という任務で完全に失敗した双発戦闘機たちは、戦闘機としての任務を外され、戦闘爆撃機や偵察機、沿岸パトロールなどの任務に回されます。
新しい職場ではそれなりに活躍をしてみせます。しかし、それはもはや「戦闘機」ではありません。それでも戦闘機として生まれたからには何とか成功させてやりたいと思うのは技術者たちやパイロットたちの親心というもの。
そんな状況のなか、戦局が不利になるにしたがって皮肉にも思わぬ活躍の場が出てきました。それは夜の戦闘です。
昔から夜襲というのは、暗闇に紛れて相手の意表をつく奇襲の手段。視界が充分でない戦場ではかなり効果的な戦術です。
当時はレーダーなどの電子装備はそんなに発達していない時代(これを機会に急速に発展するのですが)。微かな明かりを頼りに索敵を続け、暗い飛行場に離着陸を繰り返す。昼間と違って危険が一杯の世界です。
これは、ある意味、攻撃する側にとっては好都合。単発戦闘機は装備が限られていますので、暗闇での迎撃は不向きです。昼間のように編隊を組んで一斉攻撃なんて不可能に近い状態。ならばということで敵爆撃機は夜間攻撃をしかけてきます。
最初はイギリス軍がドイツへの夜間攻撃をちょぼちょぼとやっていました。しかしこれが意外と効果的。なにせ昼間と違って迎撃してくる敵機がほとんどいません。これはいいぞと、いよいよ本格的な攻撃態勢に入ります。
さて、迎え撃つ側としては、どうするか。最初は高を括っていたドイツ首脳部は、そんなもん、地上の高射砲部隊にまかせておけというあしらいでしたが、やすやすと突破されて甚大な被害を被ったから大変です。
これはマズイと思ったのか、昼間の飛行隊のおまけ的な存在であった夜間戦闘中隊は飛行隊に格上げされ、独立した夜間航空団を編成するまでに拡大します(右図:夜間航空団で有名なNJG.1の部隊マーク)。部隊、機材、レーダーなど着実に戦力を強化したことに加え、夜間航空戦法も確立し本格的な戦場としての様相を呈してきたのです。
まずは侵攻してくる爆撃機をどう迎え撃つか。撃ち落とす相手が巨大な爆撃機だとより強大な火力が必要です。また、索敵に必要な長い滞空時間も欲しいところ。そして地上からの誘導を受ける通信士やレーダーなどの索敵装置を扱う兵士も乗せたいです。
速度と格闘性能重視の単発戦闘機ではこの任を任せるには荷が重いのは一目瞭然。
それでも最初は昼間戦闘機のエース、Bf109C/Dが任務につきますが、昼間でも難しい離着陸のBf109が夜間に離発着するのは困難で、夜間戦闘機としての運用には不向きでした。
そこで、一度は戦闘機として失格の烙印を押されたBf110が再び脚光を浴びることになります。何よりも相手は爆撃機になりますから、対戦闘機としての格闘性能は重要ではありません。双発とはいえ、爆撃機よりは機体もコンパクトで戦闘機の名を冠したこともあり速度も早い。元々長距離護衛の任務で設計されていますので、長時間の上空待機と追撃を行う任務にも適しています。さらにエンジンを主翼に配備したことで機首には思い切り重機関銃を集中配備できるという利点も。なにより積載量が大きく、単発戦闘機よりも重武装でレーダーも装備できるとあって対爆撃機には好都合の機体ということがわかったのです。
本来の目的のために要求された性能は昼間に発揮することはできませんでしたが、夜間では一転してあらゆる面で有利に働いたのです。おぉ。
Bf110は再び脚光を浴びて夜間航空団の主力戦闘機として返り咲きます。そしてバトル・オブ・ブリテンでは散々な目にあった駆逐機航空団(ZJG)は夜間航空団(NJG)へと続々と編成されて行きます。
このように1930年なかごろに流行した双発多座戦闘機の夜間戦闘機への転換は、ドイツのBf110に限らず、フランスのポテ630やポテ631、イギリスのブリストル・ボーファイター、日本海軍の「月光」や陸軍の「屠龍」が次々と同様の道をたどることになります。
彼らは、夜の仕事でなくてはならない存在になるのです。昼間よりも夜の仕事で生きがいを見つけた感じといったところでしょうか(笑)。よかったよかった。
Bf110G-4型に至っては最初から本格的な夜間戦闘機専用のタイプとして製造され、搭載限界まで装備を積み込み、あっぷあっぷしながらもドイツ夜間戦闘機の主力となるのでした。
日本でも「屠龍」は夜戦として改修され、B-29相手に大活躍をします。偵察機になった二式陸上偵察機も本来の戦闘機「月光」として活躍します。
また、使えそうな双発機は元は爆撃機であっても次々に夜間戦闘機として改修され、実戦に投入されていきます。
夜間戦闘機として改修された主な双発機(戦闘機、爆撃機、偵察機など)
・Bf110(駆逐機)ドイツ夜間戦闘団の前半の主力
・ユンカースJu88(高速爆撃機)ドイツ夜間戦闘機の後半の主力
・ドルニエDo17Z(高速爆撃機)
・ドルニエDo217(高速爆撃機)Do17の後継機
・Me262B(ジェット戦闘機)モスキートキラーとして開発
・Ar234(ジェット爆撃機)数度の出撃のみ
・二式複座戦闘機「屠龍」(重戦闘機)B-29迎撃に活躍
・「月光」(偵察機)斜銃を搭載して威力を発揮
・「彩雲」(高速偵察機)斜銃を搭載
さて、市場が拡大していくと我も我もと新規参入が続々と入ってくるように、夜間戦闘という市場も続々と新機種たちがデビューするようになってきます。
老体にムチを打って頑張っている彼らの存在を脅かす強敵や競合者たちが・・・。
→まだ続きます(^^ゞ。
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ボーファイターが双発では一番好きな機体です。
次の記事楽しみにしています。
by 楽しく生きよう (2015-01-16 19:42)
★楽しく生きよう さま
ボーファイター、渋いですね^^
ずんぐりむっくりしたスタイル好きです。
by ワンモア (2015-01-18 13:18)