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偵察機あれこれ〜その3 無人機の登場

 偵察機についてあれこれ語っておりますが、今回で最終回です。
 
 第二次世界大戦が終わると、直接戦うことが無くなった代りに、今度は冷戦と呼ばれる時代がやってきました。冷戦の主役は「情報」となり、相手の情報をいかに掴んでいるかが、国際的優位に立てるようになってきたのです。
 ですので、航空機の開発でも、脚光を浴びていたのは偵察機で、米ソでは、多額の予算と最新技術、人材が投入されていました。

 2000年代の時点では、偵察機の種類としては、空中写真や映像撮影による偵察を行う旧来の写真偵察機の他に他に、電波傍受を行う電子偵察機(電子戦機の一種)、戦略偵察機戦術偵察機が存在するようになります。

◆偵察機の栄光とその凋落

U-2-pilot-suit-up copy.jpg U-2、そしてSR-71において最高度に発達した偵察機は、高々度飛行の摩擦熱により、宇宙船のような耐熱処理も施されるようになりました。パイロットは宇宙飛行士のような高度与圧服を着用します(右写真はU-2パイロットの与圧服)。
 偵察機の任務である「高速で敵地奥深く侵入し、任務を果たし、撃墜されないで帰還する」という任務はこの、SR-71によって完成されたともいえます。
 
SR-71の高速性能は他機の追随を許さないものではありましたが、その反面、高度1万メートル以下では通常の戦闘機に及ばず、バンクも45度が限界で、背面飛行もできません。出撃も24時間前から準備しなければならず、運用面でかなり面倒な飛行機ではあったのです。
 それでも果敢に領空侵犯を行い、ミサイルで撃墜されるリスクを背負いながらも、退役するまでの30年間、一度も撃墜されることはありませんでした。

 
しかし、このSR-71を脅かす存在がまもなく生まれてきます。

ConstellationGPS.gif

 それは偵察衛星です。攻撃を受けにくい宇宙空間から戦略目標の動きや位置を情報として入手できるこの衛星は、光学機器が飛躍的に向上してくると、今までの偵察機の任務を担うことができるようになります。
 また、合成開口レーダー(SAR)偵察衛星の登場で、夜間や雲に関係なく地上の画像データを入手できるようにまで進化してきました。民間のグーグルアースなども怖い位の解像度ですよね。
 問題は高コストですが、それに見合うだけの成果を得ているとのこと。
 撃墜されるリスクを犯して敵領内に侵入する必要もなくなるので、もう、こうなると偵察は無人衛星でいいじゃないと思いがちですが、アメリカは戦略偵察機を手放すことはしませんでした。

 それは、衛星の周回軌道が予め定められているものだからです。たとえ、宇宙空間への攻撃ができなくても、その偵察衛星が来る時間は分かりますので、その間、隠すことも可能なのです。
 ですので、非常時に思いがけない場所をいきなり調べに行ける、SR-71やU-2の存在はまだまだ必要だとアメリカは判断していたのです。

-1.jpg

 
 しかし、U-2やSR-71の運用を脅かす存在が再び現れます。それは有人偵察機たちに対して完全にとどめを刺しにきたのです。それは何か。なんと、人が乗っていない「無人偵察機」でした。

◆偵察機の今後。無人機にその座を渡すことになるのか。

 実は有人偵察機が活躍していた1970年頃から無線機の小型化や電子誘導装置の発達を受け、無人の航空機の開発が始まっていました。20世紀末になると、いよいよ、コンピューターの発達により無人航空機(UAV=
Unmanned aerial vehicle ドローンと呼ばれることもある)の実用化が始まります。
 無人機は、乗員スペースを必要としないために機体の大幅な小型化が可能になります。またパイロットの疲労を考慮しなくてもよいため、より長時間の偵察が可能であると同時に、被撃墜などによる戦死・戦傷も防ぐことができるのです。
 危険度の高い任務、撃墜されて捕虜になると困るような任務では非常に有効な存在となってきました。
 最初に実用化された無人機はRQ-1プレデターです。1995年から運用開始され、生産機数は360機。コクピットのない異様な姿は話題になりました。

MQ−1.jpg
RQ-1 プレデター(左)と、MQ-9リーパー(右)


 RQ-1はすぐに攻撃機としての運用に転じ、MQ-9リーパー(2007年運用開始)、MQ-1Cグレイイーグル(2009年初飛行)、アヴェンジャー(2009年初飛行)などの戦闘攻撃機型へと進化していきます。 
 高性能偵察機の
RQ-4グローバルホークは日本でも購入が決まって有名になりましたね。機体1機自体は25億円ぐらいなのですが、司令部機能や地上設備などの初期費用で1,000億円の予算が話題になっています。

1024px-Global_Hawk_1 copy.jpg
RQ-4 2004年から運用が開始されています。

 また、斥候や地上部隊の偵察任務を担う、小型軽量の電動小型の偵察機も生まれてきています。人が負傷するリスクがないため、今後もこのような無人航空機は増えていく見込みなのですが、逆にリスクがない分、戦争がエスカレートしていく危険性も考えられると思います。
Cap 670.jpg
RQ-11レイヴン
 2kg程度の小型軽量機。手投げで発進し、ノートPCから近距離偵察の管制を行います。お値段約400万円。もう、ラジコンですね。

◆再び無人機による多種化の時代が来るか?

 さて、こうして、無人飛行機が登場したのも「偵察」が最初でした。今では、ミサイル攻撃も出来るMQ-9リーパーなどの無人攻撃機も実用化されています。そして戦闘用無人機も実用化直前です。
 歴史は繰り返すというのか、それはまるで第1世界大戦に飛行機が一斉に多種に枝分かれした時を彷彿とさせます。生命進化の爆発のように今現在、航空機は大きな転換点を迎えているのかもしれません。
 偵察機→攻撃機→爆撃機→戦闘機・・・そしていずれは私たちを運ぶ旅客機まで?

Cap 671.jpg
X-47B アメリカが開発中の無人戦闘攻撃機
2013年、空母の着艦に成功しました。

MQ-9_Reaper_taxis copy.jpg
翼下にヘルファイア4発とペイブウェイ II 2発を搭載したMQ-9

 旅客機の
航空事故の約半分は操縦ミスなどのヒューマンエラーによるものなので、無人機の方が安全という声もありますが、でもちょっと不安にもなりますね・・・。
 無人機同士が飛び交い偵察し合い、戦う、誰もいない空。うーん、自分はまだまだ抵抗があります。

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ma2ma2

そう言えば先日西之島の撮影で無人撮影機が飛んで立体地図作成に成功しましたね(^^)
by ma2ma2 (2016-01-12 21:02) 

駅員3

車も自動運転の時代に片足を突っ込んできましたが、そのうち地上戦まで自動化・・・ロボット対決になったりして(^^)
だったら戦争やめてテレビゲームで決戦(^^)/

by 駅員3 (2016-01-13 07:36) 

ワンモア

★ma2ma2さま
 こんばんは〜。そのニュース見逃してました^^;
 なんの機種だったのだろう?

★駅員3さま
 こんばんは~、自動車も飛行機も運転することが楽しみであるとか、空を飛ぶこと自体が楽しいとか、人間心の趣味の余地を残しておいて欲しいです^^;
by ワンモア (2016-01-14 20:42) 

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