地上を攻撃する「襲撃機(シュトゥルモヴィーク)」という名称の代名詞ともなったイリューシンIL-2。ドイツ軍の猛攻から守りぬいたソ連救国の軍用機としてもその名を知られています。生産がままならぬ状況の際にスターリンが「赤軍は空気やパンと同様にIL-2を必要としている」と叱咤したエピソードは有名。
イギリスの救国の飛行機といわれているのがスピットファイアという戦闘機だったのに対し、ソ連では、直接地上部隊が侵攻してきましたから、戦闘機よりも地上を攻撃する襲撃機の増産の方が急務だったのでしょう、3万6千機あまり生産され、軍用機では最多を誇ります。
◆変わり種のIL-20
さて、このIL-2の後継機はIL-10となるのですが、その後は新規設計されたIL-20、IL-40など「シュトゥルモヴィーク」の後継機は開発は続行するものの結局採用はされませんでした。
注目なのは、このIL-20。1948年12月5日に初飛行なのですが、異様なスタイルなのが目を引きます。
この機体の設計コンセプトは、水平飛行を続けながら地上を掃射できるように下向きに調整できる胴体内の機関砲や、下方視界向上への向上でした。
それゆえにエンジンの上にコクピットがある異様な形態となったのですが、この異様ともいえるスタイルから「猫背」とか、ゴルブーン(ロシア語でせむし男の意)などと呼ばれました。
「醜い後継者」と呼ばれたのはあまりにも可哀想な名称ですが、これで性能がよければもう少し良いネーミングが付けられたかもしれません。
初代シュトゥルモヴィークのコンセプト同様、エンジン、乗員区画を6〜9mmの装甲で囲っています。
視界は確かに良いのですが、その外見が予想以上の空気抵抗を生み、エンジンの整備も困難になりました。また、あまりにもコクピットが前なので、胴体着陸の際に曲がったプロペラがコクピットを強打する可能性も出てきます。
アメリカのエアコブラのように胴体中央にエンジンを設置するという発想でも良かったように思うのですが、後部銃座の関係なのかな?
このIL-20は、様々な問題点が続出したことに加え、ジェットエンジンの出現により、1949年に開発計画は破棄されることになります。
同名でIL-20というIL−18ターボ旅客機を改造した電子情報支援機がありますが、これはまったく別の機体。
華々しい活躍をしたシュトゥルモヴィークは、その後の開発はパッとせず、旧式化した戦闘機を代用するようになり、専門の地上攻撃機の開発には力をいれなくなったのです。
次回は、そのシュトゥルモヴィークの系譜について記事にしてみます。
◆模型情報
1機のみの試作で終わってしまったIL-20、独特のスタイルから人気があるかなと思いきや、模型は全然出ていませんでした。海外のレジンキットくらいですね。国内入手は難しそうです。
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醜い後継者だなんてちょっとかわいそうですね。。
こんな呼ばれ方をされたうえに結局、日の目を見ることなく終わってしまったIL-20ですが、せめてこうしてお話にして取り上げてもらえて改めて人に知られることになって良かったなあなんて思いました^^;(すいません変な感想で)
by tsumi (2016-06-06 14:10)
★tsumi さま
こんばんは〜。私はヒコーキたちが出来、不出来に関わらず好きで、多くの人達に興味をもってもらえたらという思いでブログを始めたので、tsumiさまの感想はまさにブログの主旨そのものを突いた感想で、とてもうれしいです^^
by ワンモア (2016-06-06 21:17)
拙ブログへのコメントありがとうございます。
マニアにはウケそうなフォルムに見えますが、
国内では入手困難ですか(*´∇`*)
by johncomeback (2016-06-07 08:59)
★johncomebackさま
愛着があるフォルムだと思いますが、
マイナーすぎて入手困難です(;´Д`)
by ワンモア (2016-06-08 09:56)