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イギリスのEU脱退。これからどうなる?


◆僅差でイギリスがEU離脱へ

 色々な方のブログやニュースでも取り上げられていますが、イギリスの国民投票が離脱という結果で決まりましたね。離脱票が51.9%、残留票は48.1%という僅差の結果でした。投票率は72.1%という、非常に高い数字であり、イギリス国民の関心の高さが伺えます。
 「経済を統合して強いヨーロッパを」というスローガンのもと、
「国境を超えて交流や交易が増えれば人は戦争をしなくなる」という理想も込めて始まったEUでしたが、結果はドイツの一人勝ちの状態で、イギリスの不満もかなりあったといいます。

 
いわば、戦争もしていないのに、ヨーロッパに大ドイツ帝国が出来るのを黙って見ているのか、何で敗戦国のドイツの言いなりにならなきゃいけないのかと思っている人がイギリスには相当多いとの見方も。

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地域区分別の投票結果


◆経済格差と移民政策の問題が離脱派を増やした

 離脱すると、欧州の中枢マーケットのロンドンの地位の低下、金融関連産業の100万近い失業者の発生と、イギリスも大打撃を受けるのは自明の理なのですが、それでも離脱を選択肢に入れるというのは、イギリス国民にとっては、今回のEU離脱の問題は、かなり切実だったのかもしれません。

 経済格差への不満もさることながら、その焦点は移民政策にあるといえます。
 手厚い社会保障のあるイギリスは、難民にとっては人気国。とりあえずイギリスに行けばなんとかなるということで、どんどん移民が増えてきました。
「EU加盟国には難民受け入れは拒否できない」という法律があります。
 移民、難民が食い止められないということは、自分たちの村や町に移民が押し寄せてきて、移民が10%、20%と増えてきて、じゃあ、次の10年では30%、40%になるのかというと、現在のEUの理屈だと制限できないことになるので、「それなら離脱する」というのが離脱派の主張でもあるのです。

 これ、自分たちの村の半数が他国の人間になって町の伝統や文化が失われるのではないかという恐怖もあるのかもしれませんね。何百年もかけて徐々に受け入れるのではなく、一世代であっという間に知らない他国の人に町を乗っ取られるのではないかという不安。もし日本ならどうだろうと思うと、確かに不安が高まります。


 元々英国では世界を股にかける大英帝国ということもあり、移民を受け入れる素地はあり、それなりに上手くやってきたのですが、EU加盟後、特に東ヨーロッパの諸国が加盟してきてから急速に移民が増えてきました。
 それでもロンドンなどの都市部では、仕事としては増えていて、ビルも建ち、移民労働者がいないと英国経済が回らないことも事実ではあるのですが、国内全体に富の再分配を行おうとした矢先の世界金融危機で緊縮財政となり、地方への富の再分配が思うようにいかなかったことも離脱側への後押しともなりました。

 「主権を取り戻す」という離脱派のスローガンは、EUの規制でがんじがらめにされ、自由にならない国民の不満の声を象徴しているといえます。
 移民が増え、国民の暮らしを守るための税の負担が増大するという不満が高まっていたことも見逃せません。
 こういう移民問題がベースにあるのは確かなのに、日本ではあまり報道していないような気がしますね。意図的?


◆歴史の転換点を今、見ている。

 私たちは今、歴史の転換点を見ているのかもしれません。「国境」があるから利害関係が発生し、戦争を生み出す、これからはグローバルを目指すのだという、人道主義や理想が「人間の感情」というものを読み間違えてしまったように感じます。
 
世界史の大きな流れは、こんな些細な出来事から始まる場合が多いです。
 第一次世界大戦が勃発したのは、一発の銃弾でした。しかも、すぐに終わる紛争だろうと、誰もがこんな世界大戦になるとは予想していなかったといいます。

 まあ、EU離脱が戦争につながるとは思えませんが、世界経済の大転換を決めたことは事実です。これからの混迷の時代の序章にはなると思います。

 ひるがえって「あの時のイギリスの国民投票が全ての始まりだったのか」と後世言われることがないように願うものです。

◆イギリスが変わる?イギリス分裂の危機

 更にイギリスという名前が変わる可能性も。
 今回のEU離脱という結果を受けてイギリスが分裂するのではないかという問題が出てきました。イギリスは4つの国の連合国家です。

イギリス.jpg
 

 

イギリス国旗 copy.jpg
連合王国UK
(United Kingdom and Northern Ireland)の国旗
(左上)イングランド、(右上)スコットランド 青色 (左下)ウェールズ 、(右下)北アイルランドの組み合わせが今のイギリス国旗。脱退したら国旗も名称も変わる可能性も。

 

 今回の投票結果を見ても、国毎に投票結果に差があるのが分かります(地域区分別の投票結果参照)。
 スコットランドでは残留派が62%と多く、
スタージョン首相はEU残留を呼び掛ける一方、国民投票で離脱派が勝利すれば「再度、独立の是非を問う住民投票を実施する」と強調してきたからです。
 
北アイルランドでも残留支持が56%と離脱より多く、北アイルランドはアイルランドと統一する方向への住民投票を今こそ実施すべきだと、声もあがっているのです。
 下手をするとイギリス連合が崩壊する可能性も・・・。


◆政治はやはり大切

  さて、イギリス現地の報道では「投票をもう一度やり直せ」という声が相当の数上がってきているとのこと。その数はなんと200万以上の署名だそうで。
 その理由の中で驚いたのは「離脱に投票したが、まさか離脱になるとは思わなかった」という人が実はかなりいるらしいのです。えぇぇ~。
「もう一回国民投票してくれたら「残留」に入れる」という人たちがTVに出てきて投票のやり直しを求めているということです。うーん。
 これ心理的には、残留派が勝ちそうな結果になりそうだったので、「それでは現状とまったく変わらないということになり、面白くないので、思い知らせてやれ」という感情の人が多かったらしく、今回の結果を生み出してしまったとも言われています
(「辛坊治郎ズームそこまで言うか」6/25放送、在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長、木村正人氏のレポートより)。

 この図式って、「自民党が圧勝するのは、面白くないから反対野党に入れる」というのと同じかもですね。

 よく、自民党圧勝の可能性などのニュースをみて「それでは自民が増長するから面白くないので、他の党に入れてやる」という感情と同じかもしれません。
日本も他人事ではないのですね。
 少なくとも、まさか「離脱するとは思わなかった」という離脱に投票した人のようにはならないで欲しいと思います。

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コメント 4

johncomeback

僕が小遣いで所有している株が暴落するのは
自己責任で仕方ありませんが、年金が心配です(-_-;)
by johncomeback (2016-06-27 07:55) 

carotte

そもそもキャメロンさんが国民投票で決めよう!と口走ってしまったのが間違いの元だったような気がします。EU加盟には複雑な決め事があって、離脱したらどうなるかなんて、一般国民が理解するのはかなり難しいと思います。
by carotte (2016-06-27 12:54) 

ちょいのり

ボクはどうしても今回の投票の後の、多くの民勢の再投票懇願が解せないんですよ・・・
『なぜもっと真面目に考えなかったか?』と。

当然再投票はありえないと思ってます。
だってそれじゃ投票の意味が無い^^;
皆に都合がよくなるまで再投票なんてしたら投票っていったいなんなのよ?です^^;

by ちょいのり (2016-06-29 01:55) 

ワンモア

★johncomebackさま
 株は生活に影響の出ない範囲で行うのが正解ですね^^;

★carotteさま
 そうですよね。キャメロンさん、国民投票実施を公約していたので、追い込まれたのでしょうか。
 イギリスがどうなるか心配です。

★ちょいのりさま
 「EU残留だと結局今までと変わらない」という不満が、離脱票に投じる結果につながったのではと思うのです。
 EU脱退YES、NOの2者択一ではなく、自分は分からないという票も作ったら?と思いました^^;

by ワンモア (2016-06-29 14:58) 

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