SSブログ

世界で一番最後に初飛行したレシプロ戦闘機。CA-15カンガルー

 第二次世界大戦は先の第一次世界大戦同様に航空機の技術を格段に引き上げてしまいました。強力な2,000馬力級のエンジンを備えた戦闘機たちも、この世の春をしばらく謳歌できると思われましたが、第三帝国上空に現れたジェット戦闘機やロケット戦闘機などの前にはあっという間に旧式機となってしまいます。
 技術革新の波は、戦後の航空機の総ジェット化の確信のみならず、宇宙開発までもが、目前に現れてきたのです。

Me262.jpg


 そんな中、最後のレシプロ戦闘機とはいかなるものだったかご存知でしょうか。今後、おそらく開発されることはないでしょう、
最後のレシプロ戦闘機。気になりますよね。調べてみました。

◆レシプロ戦闘機、最後の機体はオーストラリア空軍のCA-15

 歴史に名を刻むことになった最後の戦闘機の名は、コモンウェルス・エアクラフト社のCA-15でした。初飛行は戦後の1946年3月4日です。
 まずはその姿を。

あれ?どこかでみたような・・・
CA-15カンガル.jpg
CA-15 _02.jpg


 うーん、これはかの有名なP-51Dムスタングさんにそっくりですね(*^^*)
 特に上から見た主翼の形どはモロですね。
並べちゃいましょうか。はい、こんな感じです。

P-51D_vs_CA-15_zpsda6da396.jpg
(左)P−51Dムスタング (右)CA-15カンガルー

 なんか、子供がうる覚えで書いたマスタングのようです。微妙にかっこ悪いというか(笑)
名誉のために記しておきますが、決してムスタングを真似した訳ではないのです。

 そもそもこのCA-15は開発当初は空冷エンジンの
P&W R-2800-10Wを搭載する予定で設計されました。このエンジン、F4Uコルセア、P-47サンダーボルト、グラマンF6Fヘルキャットなどのアメリカの主力戦闘機にも使われている優秀なエンジンです。

名称未設定 2.jpg
(左図)プラット・アンド・ホイットニー R-2800

 1943年に日本からの反撃を想定してオーストラリアで独自でCA-15を開発。
 1944年3月には試作の製作も始まって8月には6割方完成していたのですが、ここでアメリカから
P&W R-2800-10Wエンジンの生産中止という突然の通知が。
 
大慌てで代りのエンジンを探したのですが、これが難航して、結局落ち着いたのは空冷エンジンではなく液冷エンジンのロールスロイス・グリフォンエンジンでした。これも2000馬力級のイギリスの優秀なエンジンなのですが、このお陰でスタイルがP-51Dに似てしまったかも。

 しかし不運はまだ続き、戦局の状況や予算縮小の関係で1945年2月には試作機を1機だけ作るという段階まで縮小されてしまったのです。
 細々と製造を続けている間に戦争も終結してしまって、さらに進捗は遅れ、完成に漕ぎ付けたのは1946年の2月でした。

CA-15.jpg

試作初号機の初飛行は1946年3月4日のことでした。
CA-15_from_Lincoln.jpg
高度約8,000mで721km /hを記録。

 なかなか優秀な性能を発揮したのですが、時代は既にジェット機へ。運用状況は試作機のこれ1機のみで1950年には廃棄処分されてしまいます。
 戦果も、運用実績もなく、歴史に残ったのは「史上最後に初飛行したレシプロ戦闘機」という称号だけでした。なんとも残念なヒコーキなのです。

◆ソ連の最後のレシプロ戦闘機はLa-11


 ソ連最後のレシプロ戦闘機、ラボーチキンLa-11にも触れておきたいと思います。この機体の初飛行は1947年5月ということでCA-15より更に一年も遅いのですが、このLaシリーズ、LaGG-1から続く改良の流れで出てきている戦闘機なのです。

La-11.jpg
La-11。ソ連機の系列は本当にややこしいです。


 ソ連はこういう元の機体を改良して新しい機体番号を付けるので、非常にややこしいのです。
 今でもロシアではその慣習が残っていて、世界でもっとも美しいといわれている戦闘機のSu-27フランカーも、Su-35(Su-27SM系)、Su-30(Su-27PU
の改称)、Su-35(Su-27Mの改称)、Su-37(Su-27M2の改称)と訳が分からん状態になっています。中国の殲11なんかもSu-27SK(Su-27Sの輸出向けのダウングレード版)ですしね。

 La-11も名称からすると史上最後に初飛行したレシプロ戦闘機ともいえなくもないですが、新規開発した飛行機とはいえませんので、CA-15が最後のレシプロ戦闘機ということで定着しています。

ラボーチン系戦闘機の開発の流れ


LaGG-1(1939年初飛行)液冷エンジン
LaGG-3(
LaGG-1の高出力エンジン改良型)
La-5(1941初飛行)LaGG-3を空冷エンジンに換装した改良型
La-7(1944初飛行)La-5FNの改良型
La-9(1946初飛行) 全金属製にしたラボーチキンシリーズの完成型。
La-11(1947初飛行) La-9の長距離戦闘機型

 これ、他国ならLa-5Dなど末尾のアルファベット番号で区別しそうですがソ連は新しい機体のようにするのでややこしいのです。外見もそんなに代りませんし・・・。

 いずれにせよ、東西両陣営ともすでにF-86セイバー(1947初飛行)とかMig-15(1947初飛行)などのジェット戦闘機が猛烈な勢いで実用化されていましたから、レシプロ戦闘機はあっという間に時代の流れのなかに消えていくことになります。

F-86.jpg

<模型情報>
オーストラリア空軍のCA-15カンガルーの模型ですが、試作1機だけということで人気もなくレジンキットのみのようです。なかなか流通はしていないようですが、Amazonや楽天にはなくてもホビーサーチさんには取扱実績がありました。流石のホビーサーチ。
多少高くてもここにしか扱っていない製品も多いのです。

→【ホビーサーチ】コモンウェルス CA-15 カンガルー (1/48レジン)


→【ホビーサーチ】ラボチキンLa-11戦闘機 (1/48)

 
<今日の一枚>

Cap 214.jpg

「だしてんねん」「えっ?なにを?」
 大阪弁で話しかけられたと思った(笑)

こんな記事もどうぞ

来たよ(38)  コメント(4)  トラックバック(0)  [編集]

nice! 38

コメント 4

caveruna

すごい専門的な話題から、
いきなり最後に、
だしてんねん!(笑)
カクッと力が抜けました(苦笑)
私、意味がわからず、
ひたすら、こういう関西弁?
大阪弁?あったっけかなぁ…
と、しばらく考えました^^;
by caveruna (2016-11-30 08:25) 

johncomeback

「だしてんねん」のシマヤは大阪の会社かと思ったら、
山口県の会社なんですね。ウケ狙いなのかなぁ?
by johncomeback (2016-11-30 12:27) 

hana2016

あまりにも専門的で難しくて、オタッキーな・・・大変に失礼!
チョッと付いていけない内容ながら・・・だしだけに、オチが効いていますね^^
前日記のお肉記事、私も大変参考になりました♪
by hana2016 (2016-11-30 14:36) 

ワンモア

★caveruna さま
 オチをきかせました出汁だけに(笑)
 いや、私も関西弁で読んでしまったのですが、要は「てんねんのだし」ということなんですよね(;^ω^)

★johncomebackさま
 「てんねんのだし」ということを記入しただけで、勝手に関西弁に翻訳してしまったのがいけないのでしょうか。でも一度、関西弁でみてしまうと、もうそれにしか見えない(笑)

★hana2016さま
 専門的すぎてスミマセン><  調べたことの忘備録も兼ねていますので、何卒ご了承ください。 
by ワンモア (2016-12-01 23:42) 

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました
Copyright © 1/144ヒコーキ工房 All Rights Reserved.

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。